この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:すでにできたAGEsを減らす方法を探す

終末糖化産物(AGEs)は、食品を加熱したときに糖とたんぱく質が反応してできる安定な化合物です。焼き菓子やローストした食品に多く含まれ、とくに加熱加工した乳製品や肉製品で多いとされています。論文は背景として、AGEsを多く含む食事を長く続けることが、2型糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患のリスク上昇と関連すると報告されてきたことを挙げています。

著者らによると、これまでの対策の多くは、AGEsができること自体を抑える方法でした。AGEsはいったんできると分解されにくく、加工後の食品にすでに含まれるAGEsを減らす方法で、安全かつ大規模に使えるものは不足していました。そこで研究チームは、発酵食品に広く使われる乳酸菌に注目しました。研究の目的は、食品中にすでにできた蛍光性AGEsを減らせる菌株を見つけ、その性質を調べることです。

何を調べたか:1213株からの選抜と実際の食品での試験

研究チームは、中国各地で集めた自然発酵食品370試料から、乳酸菌と推定される1213株を分離しました。試料の発酵食品は、豆、野菜、肉、乳、茶など8分類にわたります。次に、AGEsを主な窒素源とする培地で各株を培養しました。窒素源とは、菌が育つために取り込む窒素を含む栄養のことです。培養後には、蛍光性AGEsの測定に用いられる波長で蛍光の強さを測り、どれだけ下がるかを比べました。ただし著者らは、この方法には二つの限界があると明記しています。一つは、蛍光で捉えられるのはAGEs全体の一部にすぎないことです。もう一つは、蛍光の信号がAGEs以外の蛍光物質の影響を受けうることです。そのため得られた値は「蛍光性AGEsの減少」として報告されており、AGEs全体が化学的に分解されたことを検証した指標ではないとしています。

選ばれた菌株については、試験管内でいくつかの性質を調べました。胃液や胆汁を模した液の中での生存率、腸への付着しやすさの目安となる性質、血液を壊す性質の有無です。あわせて、全ゲノム解読により菌の種類を確認し、遺伝子の働きを推定しました。さらに、高温の噴霧乾燥でつくった粉乳と、180℃で焼いた豚肉の粉末を水で戻し、この菌で48時間発酵させました。そのうえで、蛍光性AGEsやほかのたんぱく質酸化の指標が、発酵させない場合と比べてどう変わるかを測定しました。

主な結果:HNGD-YC1株が粉乳と焼いた豚肉粉末で蛍光性AGEsを減らした

最初の選抜で、蛍光性AGEsの減少率が50%を超えた株は3株だけでした。その中で最も高かったのがHNGD-YC1株で、選抜用培地での減少率は61.39%でした。ほかの窒素源も含む栄養の多い培地でも確認したところ、この株の減少率は52.00%で、3株の中で最も高い値でした。この株は、形態観察、遺伝子による系統解析、ゲノム全体の比較により、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)と同定されました。

試験管内の試験では、HNGD-YC1株が3候補株の中で最も高い酸耐性と胆汁酸耐性を示しました。血液を壊す性質は見られませんでした。ゲノム解析では、既知の薬剤耐性遺伝子や病原性に関わる遺伝子との類似性はいずれも低い結果でした。著者らはこれをもとに、ゲノム面での安全性は良好だと報告しています。

ゲノムからは、メカニズムに関わる可能性がある候補遺伝子も見つかりました。たんぱく質分解酵素、糖鎖を切る酵素、糖とたんぱく質の間の結合を切る可能性がある酵素の遺伝子です。著者らは、これらの酵素が協調して働く仕組みを想定しています。ただし、これらはあくまで候補であり、実際に関与しているかは実験で確かめる必要があるとしています。

食品での試験では、HNGD-YC1株で発酵させると、発酵させない場合に比べて蛍光性AGEsが減少しました。減少率は、噴霧乾燥粉乳で68.70%、焼いた豚肉粉末で56.39%でした。加熱で増えていたカルボニルなど、ほかのたんぱく質酸化の指標も複数低下しました。さらに、たんぱく質の立体構造に関する指標の一部が回復したと報告されています。

研究の意味

この研究の特徴は、AGEsの生成を防ぐのではなく、加熱加工ですでにできた蛍光性AGEsを乳酸菌による発酵で減らせる可能性を示した点です。その効果は、粉乳と焼いた豚肉という実際の食品で確かめられました。著者らは、HNGD-YC1株を、AGEsの少ない発酵食品を開発するための有望な候補と位置づけています。

一方で、測定したのは蛍光で捉えられる一部のAGEsで、その信号はほかの蛍光物質の影響を受ける可能性もあります。AGEs全体が分解されたことまでは確かめられていません。減少を引き起こす仕組みも、候補遺伝子から推定した段階にとどまっています。

著者:Yueting Ge(Dabie Mountain Laboratory, Xinyang 464000, China)、Kaile Chen(College of Food Science and Engineering, Henan University of Technology, 100 Lotus Street, Hi-Tech Development District, Zhengzhou 450001, China)、Zhenguo Tian(College of Food Science and Engineering, Henan University of Technology, 100 Lotus Street, Hi-Tech Development District, Zhengzhou 450001, China)、Chengjia Gu(Dabie Mountain Laboratory, Xinyang 464000, China)、Boyang Kou(Dabie Mountain Laboratory, Xinyang 464000, China)、Guowei Le(State Key Laboratory of Food Science and Technology, School of Food Science and Technology, Jiangnan University, Wuxi 214122, China)、Yuhui Yang(College of Food Science and Engineering, Henan University of Technology, 100 Lotus Street, Hi-Tech Development District, Zhengzhou 450001, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yueting Ge, Kaile Chen, Zhenguo Tian, et al. Screening and Evaluation of Lactiplantibacillus plantarum HNGD-YC1 for Mitigation of Advanced Glycation End Products in Food Matrices. Foods 2026-09-24. DOI: 10.3390/foods15193403. 原著ライセンス:CC BY.