石斛(せきこく、Dendrobium officinale)は、中国の伝統医学で古くから薬用・食用の両方に用いられてきたラン科の植物で、近年その健康に関わる働きが注目されているといいます。今回紹介する研究は、この石斛を原料に、乳酸菌を使って発酵させた飲料を新しく開発し、その栄養成分や風味がどのように変化するかを調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームはまず、発酵に適した乳酸菌を探すスクリーニングを行い、その結果、Bacillus coagulans BH-024という菌株が最も高い増殖適応性を示し、最も多い菌数(5.54×10⁸ CFU/mL)に達したと報告されています。
続いて、単一要因実験と直交実験という手法を用いて発酵条件を最適化したところ、賦形剤として加える白何首烏(Radix cynanchi auriculati)と石斛の比率を2:3とし、42℃で48時間発酵させる条件が最適であることが示されたとのことです。
この最適条件で発酵させると、総酸量が3.94 g/Lまで大きく増加する一方で、多糖類の含有量は3.81 g/100 mLに維持されたと報告されています。また、抗酸化に関わる成分についても変化が見られ、総フェノール量は37.84%、総フラボノイド量は31.43%増加し、DPPHラジカル消去能は15.44%、ABTSラジカル消去能は20.39%それぞれ高まったとされています。
風味の面では、乳酸の含有量が1345.17 mg/Lまで増加したほか、うま味や甘みに関わるアミノ酸(トレオニン、アルギニン、アラニン、グルタミン酸)が増え、花や果実を思わせる香気成分も増加したことが確認されたといいます。実際に官能評価を行ったところ、発酵させていないジュースと比べて、香り・味・総合的な受容性のいずれにおいても発酵飲料の評価が優れていたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の乳酸菌株と発酵条件のもとで石斛ジュースの成分や風味がどのように変化したかを示したものであり、健康への効果を人において検証したものではありません。また、一つの研究で得られた結果であるため、これをもって結論が確定したわけではない点には注意が必要です。今回示された抗酸化活性の指標(DPPHやABTSのラジカル消去能など)は、あくまで実験室内での化学的な指標であり、体内での働きを直接示すものではない点も留意しておきたいところです。
まとめ
この研究では、石斛ジュースをBacillus coagulans BH-024株で発酵させることにより、総酸量やポリフェノール・フラボノイド量、抗酸化活性に関わる指標が高まり、うま味成分や香気成分も増えて、官能評価でも未発酵のジュースより高く評価されたことが報告されました。研究チームは、この発酵手法が石斛を使った新しい機能性発酵飲料の開発につながる可能性があるとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:Dendrobium officinale由来乳酸発酵飲料の発酵および特性解析(食品品質学誌(Journal of Food Quality)・2026年01月)