著者の所属・活動拠点の国は、ベトナムです。

掲載誌:Notulae Scientia Biologicae

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

サチャインチ(学名 Plukenetia volubilis L.)は、種子から油がとれる植物です。この研究は、ベトナム中部高原で生産されたサチャインチの種子を対象に、機械で圧搾して油をとる際の温度が、油の品質にどのような違いをもたらすかを調べたものです。

論文の抄録では、搾油温度による油の性質の違いに加え、得られた油の脂肪酸の組成や、試験管内での抗酸化作用・抗菌作用も評価したと報告されています。

何を調べたか

研究チームは、種子を120℃、160℃、180℃の3つの温度で機械圧搾し、得られた油の色や抽出量(どれだけ油がとれたか)といった物理的な性質、さらに酸価・けん化価・過酸化物価などの理化学的な指標を比較しました。酸価は油の劣化に伴って増える遊離脂肪酸の量の目安、過酸化物価は油の酸化の進み具合の目安、けん化価は油を構成する脂肪酸の大きさなどを反映する指標です。

このうち、抽出量が最も多く、酸価が最も低かった160℃の油を選び、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC–MS、混ざった成分を分けて種類を調べる分析法)で脂肪酸の組成を調べました。また、DPPHという試薬を使ったラジカル消去試験で抗酸化作用を、細菌を塗った培地に試料をしみこませた円盤を置き、周囲に細菌が育たない範囲(阻止円)ができるかを見るディスク拡散法で抗菌作用を評価しました。

主な結果

著者らによると、搾油温度は油の色、抽出量、酸価、けん化価、過酸化物価など、いくつもの品質指標に影響していました。

ただし、160℃の油は過酸化物価が最も低かったわけではありません。著者らは、160℃を選んだのは酸化に対する安定性だけで優れていたからではなく、測定した指標全体のバランスを踏まえた結果だと説明しています。

脂肪酸の分析では、160℃の油にα-リノレン酸とリノール酸が高い割合で含まれていることが示されました。一方、DPPH試験での抗酸化作用は弱く、ディスク拡散法でできた阻止円も小さいものでした。調べた細菌の中では、セレウス菌(Bacillus cereus)で阻止円が最も大きかったと報告されています。

研究が示すこと

この研究は、同じサチャインチの種子でも、圧搾時の温度によって油の品質を示す指標が変わることを示しています。また、得られた油はα-リノレン酸やリノール酸を多く含む一方、試験管内での抗酸化作用や抗菌作用は弱い、または小さいものにとどまったことも報告されました。

著者ら自身も、けん化価が通常より低い値を示した点については分析の検証が必要だとしており、機能性食品や保存料としての利用を考える前に、分析の妥当性、保存中の安定性、安全性、実際の食品の中での働きを確かめる必要があると述べています。

原著論文の著者・所属:Huynh Nguyen Que Anh(Industrial University of Ho Chi Minh City, Institute of Biotechnology and Food Technology, Ho Chi Minh City)、Le Pham Tan Quoc(Industrial University of Ho Chi Minh City, Faculty of Health Sciences, Ho Chi Minh City)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Huynh Nguyen Que Anh, Le Pham Tan Quoc. Evaluation of physicochemical properties, chemical composition, and antioxidant and antibacterial activities of Sacha inchi oil. Notulae Scientia Biologicae 2026-09-26. DOI: 10.55779/nsb18312971. 原著ライセンス:CC BY.