この研究は、インドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

白米は主要な栄養素を多く含む一方で、色素が少ないために抗酸化性の面では見劣りするとされています。世界の人口が増え続ける中で、主食そのものを通じて栄養価の高い食品を届けることが求められており、色のついた米、なかでも赤米が注目されています。今回紹介する研究は、赤米20品種を対象に、生化学的な特性と調理の際の品質を詳しく調べたものです。

研究でわかったこと

研究チームは赤米20品種について、アントシアニン色素(アントシアニジンおよびロイコアントシアニジン)の含有量を調べたところ、1グラムあたり5252.71〜5731.52マイクログラムの範囲であったと報告されています。また、鉄の含有量は100グラムあたり15.11〜17.79ミリグラムの範囲であったとされています。

抗酸化能の指標であるIC50(値が小さいほど抗酸化力が強いことを示す指標)は24.70〜28.16マイクログラム/ミリリットルの範囲に分布しており、この抗酸化能はアントシアニン含有量だけでなく、総フェノール含有量(相関係数0.728という強い正の相関が認められたとされています)およびフラボノイド含有量とも関連していたと報告されています。

さらに、赤米デンプンの体外(試験管内)消化試験からは、消化がゆっくり進む性質があり、これはレジスタントスターチ(消化されにくいデンプン)の存在を示すものとされ、100ミリグラムあたり15.6ミリグラムのマルトースが放出されたと報告されています。

加えて、SSR(簡易反復配列)と呼ばれる分子マーカーを用いた解析により、穀粒のタンパク質、亜鉛、鉄といった栄養に関わる重要な形質について、品種間に良好な多様性が見られたとされています。研究チームは、これらの品種が今後の育種や品種改良プログラムにおける有用な系統になりうるとしています。

そのほか、NVSR系統については、他の赤米品種と異なり吸水量が少なく調理時間も短いという特徴が報告されています。また、SSRマーカーの一つであるRM206は、NVSR系統において鉄含有量と穀粒の幅という二つの形質の両方に関連しており、マーカー選抜(MAS)に活用できる可能性があるとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、赤米20品種を対象とした生化学的・分子マーカー的な特性評価であり、栄養成分の含有量や品種間の違いを明らかにすることを目的としたものです。要旨の中では、赤米が「より栄養価の高い食品として白米に代わりうる」可能性が述べられていますが、これは品種の生化学的特性や機能性成分の含有量に基づく評価であり、特定の健康効果を実証したものではない点に留意が必要です。今回の記事はこの一つの研究に基づくものであり、結論が確定したものではありません。

まとめ

この研究では、赤米20品種のアントシアニン色素や鉄の含有量、抗酸化能、総フェノールおよびフラボノイド含有量との関連、レジスタントスターチによる消化のゆるやかさ、そして栄養関連形質の遺伝的多様性が調べられました。これらの結果は、赤米が育種や品種改良の資源として、また栄養価の高い主食の選択肢として検討する価値があることを示唆するものとされています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):機能性食品としての赤米の生化学的特性評価とその可能性(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)

著者:Jankibahen K. Patel(Department of Soil Science and Agricultural chemistry, College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, N. M., Gujarat, India)、Nilima Karmakar(Department of Soil Science and Agricultural chemistry, College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, N. M., Gujarat, India)、Samarth R. Patel(Department of Soil Science and Agricultural chemistry, College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, N. M., Gujarat, India)、Manoj C. Suthar(Department of Genetics and Plant Breeding, N. M. College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, Gujarat, India)、Pathik B. Patel(Main Rice Research Station, Navsari Agricultural University, Navsari, Gujarat, India)、Nitin Varshney(Department of Agricultural Statistic, N. M. College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, Gujarat, India)、A. V. Narwade(Department of Plant Physiology, N. M. College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, Gujarat, India)、Diwakar Singh(Department of Agriculture Biochemistry, Acharya Narendra Deva University of Agriculture and Technology, Kumarganj, Ayodhya, Uttar Pradesh, India)、Kamlesh G. Patel(Department of Soil Science and Agricultural chemistry, College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, N. M., Gujarat, India)、Nitin Gudadhe(Department of Agronomy, N. M. College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, Gujarat, India)、Ritesh Patel(Department of Genetics and Plant Breeding, N. M. College of Agriculture, Navsari Agricultural University, Navsari, Gujarat, India)、Gayacharan(Division of Germplasm Evaluation, ICAR-NBPGR, New Delhi, 110 012, India)、Poulomi Mukherjee(Department of Atomic Energy, Homi Bhabha National Institute, 400094, Anushaktingar, Mumbai, India)