この研究は、台湾の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助けて骨の成長を支える栄養素として知られています。さらに、免疫、神経、筋肉や骨格、心臓や血管など、骨以外の多くの器官にも関わると考えられています。著者らによると、世界の新生児・子ども・思春期の若者の30〜50%で、ビタミンDの血中濃度が不十分または欠乏の状態にあると推定されています。

早産で生まれた赤ちゃんは、母親の胎盤から受け取るビタミンDが少ないことや、生後早期の栄養が不足しやすいことなどから、ビタミンDが不足しやすいとされています。一方で、急速な成長を終えて就学を迎える前の幼児期にビタミンDの状態を調べた研究は多くありません。

そこで研究チームは、5〜6歳の子どもを対象に、血液中のビタミンD濃度と、成長、体組成と骨密度、肺や心臓の働き、腎臓や代謝に関する検査値、早産児では認知機能との間に関連があるかを調べました。対象には、出生体重1500g未満で37週未満に生まれた「極低出生体重」の早産児と、正期産で生まれた子どもが含まれます。

何を調べたか

この研究は、同じ病院で以前に行われた2つの前向きコホート研究のデータを改めて分析したものです。最初のコホートでは肺と心臓の働き、2つ目のコホートでは腎臓の働きと体組成が調べられていました。ビタミンDは他の検査と同じ受診日に測られたため、ある一時点での状態どうしの関係を見る「横断研究」として分析されています。

分析対象は合計213人で、極低出生体重の早産児144人と正期産児69人でした。ビタミンDの状態は、体内の蓄えを最もよく反映するとされる血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の濃度で評価し、20 ng/mL未満を欠乏、20〜30 ng/mLを不十分、30 ng/mL超を充足と分類しました。

比較した健康指標は、身長・体重、血圧、X線を使った骨密度と体組成の測定、肺活量などの呼吸機能検査、心臓の超音波検査、腎機能、血糖やインスリン抵抗性などの血液検査、保護者への質問票による喘息や下気道感染症での入院歴などです。認知機能は早産児のうち137人について知能検査で調べられました。また2つ目のコホートでは、ビタミンDサプリメントの使用、週あたりの日光を浴びる時間、運動時間も保護者に尋ねています。

主な結果

対象児全体の25(OH)D濃度の平均は23.4 ng/mLでした。不十分の子どもが50.7%、欠乏が31.5%で、充足していたのは17.8%にとどまりました。欠乏の割合は正期産児で40.6%、早産児で27.1%でしたが、この差は統計的に有意ではありませんでした。性別や体格の区分、採血した季節による濃度の差もみられませんでした。

一方で、ビタミンDの状態や濃度と、成長、体組成、骨密度、肺の働き、心臓の構造や働き、血圧、腎機能、代謝の検査値、早産児の認知機能との間には、統計的に有意な関連は見つかりませんでした。骨塩量では調整前に群間の差がみられたものの、年齢や性別などを考慮して調整すると有意ではなくなりました。喘息や下気道感染症による入院とも関連は認められませんでした。

これに対し、日光を浴びる時間が長い子どもや、運動時間が長い子どもほど、ビタミンD濃度が高い傾向がありました。サプリメントを使っていた子どもは、使っていなかった子どもより濃度が平均5.67 ng/mL高いという結果でした。これらの関連は、多数の検定を行うことによる偶然の見かけの結果を抑える補正を行った後も有意なままでした。ただし、関連の強さは中程度にとどまり、サプリメント使用者は12人と少なかったため推定には幅があります。

この研究が示すこと

著者らは、就学前の子どもでビタミンDの不十分・欠乏が多くみられた一方、今回調べた範囲では、ビタミンD濃度と全身の幅広い健康指標との間に明確な関連は検出されなかったと報告しています。ただしこれは、ビタミンDが体にとって重要でないことを示すものではないと強調しています。対象が比較的健康な子どもたちであったこと、一度の測定に基づく横断研究であること、項目によっては人数が少なかったことなどが理由として挙げられています。

また、日光や運動、サプリメントとの関連は一時点での関係を示したもので、原因と結果を示すものではありません。著者らは、皮膚がんのリスクを踏まえ、この結果を日光浴を増やすべきだという推奨と受け取るべきではないとしています。

研究チームはこの分析を探索的なものと位置づけ、結論を確定するものではなく、今後検証すべき仮説を示す結果として解釈すべきだとしています。幼児期のビタミンDの状態が生活習慣と結びついていることを示しつつ、健康への影響については慎重に見極める必要があることを伝える研究といえます。

著者:Yi‐Shan Tsai(Division of Neonatology, Department of Pediatrics, MacKay Children’s Hospital, Taipei 104217, Taiwan)、Yen-Chen Lin(Department of Medicine, MacKay Medical College, New Taipei City 251020, Taiwan)、Kai-Ti Tseng(Department of Medicine, MacKay Medical College, New Taipei City 251020, Taiwan)、Jui‐Hsing Chang(Department of Medicine, MacKay Medical College, New Taipei City 251020, Taiwan)、Wai-Tim Jim(Department of Medicine, MacKay Medical College, New Taipei City 251020, Taiwan)、Chun-Chih Peng(Department of Medicine, MacKay Medical College, New Taipei City 251020, Taiwan)、Hung‐Yang Chang(Department of Medicine, MacKay Medical College, New Taipei City 251020, Taiwan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yi‐Shan Tsai, Yen-Chen Lin, Kai-Ti Tseng, et al. Vitamin D Status and Multisystem Health Outcomes at 5–6 Years in Very-Low-Birth-Weight Preterm and Term-Born Children: A Cross-Sectional Secondary Analysis of Two Prospective Cohorts. Nutrients 2026-09-13. DOI: 10.3390/nu18182994. 原著ライセンス:CC BY.