著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Bionatura journal :

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

エビ養殖の現場では、育てたエビがどれだけ順調に育っているかを日々知ることが経営の要になります。インド・グジャラート州の商業養殖場で行われたこの研究は、雨季(モンスーン期)に土池で育てられたブラックタイガーエビ(Penaeus monodon)を対象に、体の長さと重さの関係、そして「肥満度(コンディションファクター)」と呼ばれる健康状態の指標を調べたものです。研究にはインドのVeer Narmad South Gujarat University水生生物学科の研究者らが取り組みました。

調査の舞台は、グジャラート州ナヴサリ県にあるマルティ・アクアファームです。1ヘクタールの土池2つ(池1・池2)に、それぞれ特定病原体フリーの稚エビを1ヘクタールあたり12万5000尾の密度で放流し、2023年7月13日から11月13日までの124日間、モンスーン期を通じて育てました。収穫時には各池から網で500尾ずつ、合計1000尾を採取し、体長は吻端から尾部先端までをステンレス製の物差し(精度±0.1cm)で、体重は精密はかり(精度±0.01g)でそれぞれ測定しています。

体長と体重の関係からわかったこと

測定データから、体長と体重を数式で結びつける「体長体重関係式」を求めたところ、池1・池2ともに体長は14.0~21.5cm、体重は23.0~68.0gの範囲に分布し、平均体長はそれぞれ17.8cm、17.5cm、平均体重は41.3g、40.0gでした。体長と体重の対応関係を統計的にみると、相関係数(r²)は池1で0.717、池2で0.726となり、両者には強い正の関連が確認されました。

注目すべきは、体重が体長の何乗に比例して増えるかを示す「成長指数(b値)」です。理想的には3であれば、体が大きくなるにつれて体長・体重が同じ比率で増える「等成長」とされますが、今回の池1・池2ではそれぞれ2.397、2.386となり、統計的にも3より有意に小さいことが確認されました。これは、エビが体長の伸びに対して体重の増加が追いつかない「負のアロメトリー成長(体が細長くなる傾向)」を示しており、養殖池での管理条件や個体間の競合が影響している可能性があると論文では述べられています。

肥満度(コンディションファクター)から見た健康状態

体の充実度を示す肥満度(K値)は、池1で平均0.725(範囲0.505~1.172)、池2で平均0.734(範囲0.578~1.123)でした。論文はこの平均値(およそ0.73)を「満足できる養殖条件を示す許容範囲」と位置づけていますが、同時に、他の同種研究と比べても1を下回る低めの値であることから、餌をめぐる個体間の競合や池の管理方法、生態的な条件が肥満度を左右した可能性を指摘しています。論文では、こうした知見が放流密度の調整や給餌方法の見直しなど、実際の養殖現場の改善に役立つ可能性があるとしています。

この研究を読むうえでの注意点

この研究は、インドの特定の養殖場・特定の季節(モンスーン期)における2つの池を対象にした調査であり、得られた体長体重関係や肥満度の値がそのまま他の地域や季節、養殖方式にも当てはまるとは限りません。論文自身も、体長体重比は生息環境や季節、雌雄差によって変動しうる点に触れています。エビの成長パターンや健康指標を評価するための一つの手がかりとして読むのが適切で、この結果だけで養殖管理の効果や安全性について断定的な結論を導くものではありません。

まとめ

この研究では、モンスーン期の土池で育てられたブラックタイガーエビについて、体長が伸びる割合に対して体重の増加がやや緩やかな「負のアロメトリー成長」を示すこと、また肥満度は許容範囲とされる水準にあったことが報告されました。体長と体重という基本的な測定データから養殖環境下でのエビの成長特性を読み解こうとする試みであり、今後の放流密度や給餌管理の検討に向けた基礎データの一つとして位置づけられます。

著者:Nandita Soni Deshpande(Department of Aquatic Biology, Veer Narmad South Gujarat University, Surat, Gujarat, India)、Bhavya D. Tandel(Department of Aquatic Biology, Veer Narmad South Gujarat University, Surat, Gujarat, India)、N. C. Ujjania(Department of Aquatic Biology, Veer Narmad South Gujarat University, Surat, Gujarat, India)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Nandita Soni Deshpande, Bhavya D. Tandel, N. C. Ujjania. Length weight relationship (LWR) and condition factor of black tiger shrimp (Penaeus mono-don Fabricius, 1798) reared in earthen pond during the monsoon season. ビオナトゥーラ・ジャーナル (2026). DOI: 10.70099/bj/2026.03.03.11.