著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:HAYATI Journal of Biosciences
ライセンス: CC BY-NC 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
刺身や炒め物で親しまれる貝の仲間「ゴンゴン貝(Laevistrombus turturella)」は、優れた風味と高い栄養価から市場価値の高い水産物として知られています。しかし需要の増加は主に天然採取に依存しており、資源の過剰利用が懸念されています。こうした状況を受けて、持続可能な養殖の実現が課題となっていますが、養殖を成功させるには、この貝が実際に何を食べて育っているのかを知り、適した天然飼料を用意する必要があります。ところが、その食性の詳細はこれまで十分に解明されていませんでした。
従来、貝が何を食べているかを調べる方法としては、消化管の中身を顕微鏡で目視観察する手法が一般的でした。しかし目視観察には、微小な生物や形が崩れた餌を見分けにくいという限界があります。そこで今回の研究では、DNAメタバーコーディングという手法が使われました。これは、消化管内に残された微量のDNAを解析し、そこに含まれる生物の種類をまとめて特定する技術で、目視観察よりも高い精度でプランクトンなどの生物を検出できるとされています。
研究でわかったこと
この研究では、DNAメタバーコーディングを用いてゴンゴン貝の消化管内容物を解析し、この貝が実際にどのような生物を食べている可能性があるかを調べました。その結果、この手法によって、従来の目視観察と比べて10倍以上の数の分類群(生物の種類のまとまり)が検出されたと報告されています。これにより、目視観察だけでは見えてこなかった、この貝の食性のより詳しい実態が明らかになったとされています。
検出された生物の中でも、介形虫類(Ostracoda、小型の甲殻類の一群)と珪藻類(Bacillariophyceae、光合成を行う微小な藻類の一群)が、天然飼料の候補として重要なグループとして挙げられています。さらに珪藻類の中では、Skeletonema costatumおよびChaetoceros属の仲間が、栄養価、細胞の大きさ、培養のしやすさという観点から、特に適した候補種として同定されたとされています。これらの結果は、ゴンゴン貝の養殖を支えるための天然飼料の開発に向けた科学的な基礎情報を提供するものだと結論づけられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ゴンゴン貝の食性を分子生物学的な手法で詳しく調べた一つの研究であり、ここで得られた知見がそのまま実際の養殖現場での飼料開発の成功を保証するものではありません。候補として挙げられた珪藻類などが実際に飼料として有効かどうかは、今後さらなる検証が必要になると考えられます。あくまで、養殖のための飼料候補を絞り込む上での基礎データを示したものと捉えるのが妥当でしょう。
まとめ
ゴンゴン貝は天然採取への依存から資源の持続可能性が課題となっており、養殖の実現には適した天然飼料の解明が欠かせません。今回のDNAメタバーコーディングによる解析では、目視観察の10倍以上にあたる分類群が消化管内から検出され、介形虫類や珪藻類、特にSkeletonema costatumやChaetoceros属が有望な飼料候補として示されました。今後、これらの知見を踏まえた飼料開発の進展が期待される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):メタバーコーディングによるゴンゴン貝(Laevistrombus turturella)の餌生物相の特性解析:天然飼料源としての可能性(ハヤティ・ジャーナル・オブ・バイオサイエンシズ・2026年07月)
原著論文の著者・所属:Muzahar(Aquaculture Study Program, Raja Ali Haji Maritime University, Tanjungpinang 29115, Indonesia. Evironmental Science Magister Study Program, Raja Ali Haji Maritime University, Tanjungpinang 29124, Indonesia. Center for Halal Studies and Halal Inspection, Raja Ali Haji Maritime University, Tanjungpinang 29124, Indonesia)、Arief Pratomo(Marine Science Study Program, Raja Ali Haji Maritime University, Tanjungpinang 29115, Indonesia)、Lily Viruly(Fisheries Product Technology Study Program, Raja Ali Haji Maritime University, Tanjungpinang 29115, Indonesia. Evironmental Science Magister Study Program, Raja Ali Haji Maritime University, Tanjungpinang 29124, Indonesia. Center for Halal Studies and Halal Inspection, Raja Ali Haji Maritime University, Tanjungpinang 29124, Indonesia)