著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Frontiers in Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

植物のRNAに埋もれるウイルス配列を集める

研究チームは、植物試料からウイルスの遺伝情報を読み取る際に、目的のウイルスに由来する配列の割合を高められるかを調べました。植物から取り出したRNAには植物自身に由来するものが多く含まれるため、そのまま解析すると、ウイルスの情報を得るために使える読み取りが少なくなることがあります。

著者らが検証したのは、目的の配列に結合する短い核酸「プローブ」を使った回収法です。RNAをDNAに写し取ってからウイルス由来のDNAを集め、ナノポアという微細な穴を利用して塩基配列を読む装置で解析しました。

同じ出発試料から、回収前後を比較

対象は、トバモウイルス属のキュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)、トウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)、タバコモザイクウイルス(TMV)です。研究チームは、健康な植物から抽出したRNAに、感染組織由来の凍結乾燥した陽性対照試料を加え、条件をそろえた実験系を用意しました。

このRNAから二本鎖の相補的DNA(cDNA)を作り、増幅した後、各ウイルスの配列に結合するプローブで回収しました。配列解析では、ウイルスごとに4組の回収前後の試料を比較し、全読み取りに占めるウイルス由来の割合と、ウイルスのゲノムのどの範囲まで読めたかを調べました。

読み取りの割合は増えたが、ウイルスごとに違い

研究チームは、3種すべてで、4組とも回収後にウイルス由来の読み取り割合が増えたと報告しています。平均値は、CGMMVで0.76%から37.62%、PMMoVで8.16%から24.68%、TMVで15.62%から36.83%になりました。CGMMVでは各組で約45~54倍の増加が見られ、TMVでは増加の大きさにばらつきがありました。ただし、主要な統計検定では、いずれも統計的に有意な増加とは確認されていません。著者らは、各ウイルス4組という小規模な比較で観察された増加として示しています。

ゲノムの読めた範囲について、著者らは回収後も大きな損失はなかったとしています。一方、別の測定法である定量PCRでウイルスと植物由来の指標配列の比を調べると、CGMMVでは増加を裏づけたものの、PMMoVでは結果が一定せず、TMVでは比が低下しました。この比は植物由来の核酸全体の除去量を示すものではなく、配列解析とは異なる対象を測っています。

既知のウイルスを対象とする手法の実行可能性

この研究が示したのは、条件を整えた植物RNA試料から作ったcDNAについて、既知のウイルスに由来する読み取りの割合を高める手順の実行可能性です。ウイルス粒子や元のRNAそのものを濃縮した結果ではなく、診断の感度や現場での性能を確立したものでもありません。著者らの報告は、目的の配列を選んで集めることで、ウイルスのゲノム情報を得るための読み取りを増やせる一方、その効果はウイルスや測定方法によって異なることを伝えています。

原著論文の著者・所属:Andres S. Espindola(Department of Entomology and Plant Pathology, Oklahoma State University; Institute for Biosecurity and Microbial Forensics, Oklahoma State University)、Francisco Mosquera-Yuqui(Department of Entomology and Plant Pathology, Oklahoma State University; Institute for Biosecurity and Microbial Forensics, Oklahoma State University)、Francisco Ochoa-Corona(Department of Entomology and Plant Pathology, Oklahoma State University; Institute for Biosecurity and Microbial Forensics, Oklahoma State University)、Stephen Marek(Department of Entomology and Plant Pathology, Oklahoma State University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andres S. Espindola, Francisco Mosquera-Yuqui, Francisco Ochoa-Corona, et al. Hybridization capture increases on-target nanopore sequencing of plant RNA tobamovirus- derived cDNA libraries. Frontiers in Microbiology 2026-08-31. DOI: 10.3389/fmicb.2026.1925769. 原著ライセンス:CC BY.