この研究は、アメリカ、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Current Nutrition Reports

ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

更年期というと「閉経後の体調変化」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、実際にはその前段階である「更年期移行期(パリメノポーズ)」の時点で、すでに代謝面での重要な変化が始まっている可能性があります。今回紹介するのは、この更年期移行期におけるホルモン変動と代謝・心血管代謝リスクの変化を整理し、栄養や生活習慣によるアプローチの可能性を検討した総説論文です。カレント・ニュートリション・レポーツ誌に2026年08月に掲載予定です。

更年期移行期に何が起きているのか

この総説によれば、更年期移行期はホルモンが大きく変動する時期であり、それに伴って代謝や心血管代謝リスクに臨床的に意味のある変化が生じるとされています。ほてりや発汗といった血管運動症状、睡眠の乱れ、体組成の変化に加え、生殖年齢後期から閉経後早期にかけての移行過程では、メタボリックシンドロームの正式な診断基準に達する前段階から、すでに生理的な変化が起こっている可能性があると指摘されています。

ここで論文が問題提起しているのは、現在のスクリーニングやリスク評価の多くが「閉経後」を基準に設計されているという点です。そのため、更年期移行期の時点でリスクが高まりつつある人を見逃し、対応が遅れてしまう可能性があるとされています。

この研究でわかったこと・示唆されていること

この総説は、更年期移行全体を通じた生理的な変化をまとめたうえで、進行を和らげる可能性のある栄養・生活習慣的な介入について評価しています。具体的には、生活習慣の見直しや、対象を選んだうえでの更年期ホルモン療法が、代謝の悪化を抑える方向に働く可能性があると報告されています。

一方で、この分野にはまだ不確かな点も多く残されていると論文は述べています。特に、個々人に合わせた「精密栄養」のアプローチや、遺伝子型に基づいた戦略が長期的にどの程度効果的なのかについては、はっきりした結論が出ていないとされています。

この総説の位置づけと読むうえでの注意

この記事で紹介した内容は、これまでの研究知見を整理・要約した「総説(ナラティブレビュー)」に基づくものであり、新たに大規模な臨床試験を実施した研究ではありません。そのため、更年期移行期の代謝変化への早期の注目や、栄養・生活習慣的なアプローチの可能性について方向性を示すものではありますが、個々の介入の効果が確立された結論というわけではなく、特に精密栄養や遺伝子型に基づく戦略の長期的な有効性には、著者らも不確実性が残ると明言しています。一つの総説であり、これをもって特定の食事法やホルモン療法の効果が確定したわけではない点に留意が必要です。

まとめ

今回紹介した総説は、更年期移行期という「閉経前のホルモン変動期」に、代謝や心血管代謝リスクの変化がすでに始まっている可能性を指摘し、閉経後基準に偏ったスクリーニングのあり方に注意を促すものでした。生活習慣の工夫やホルモン療法が進行の抑制に役立つ可能性が示唆される一方、精密栄養など個別化アプローチの長期的な効果については今後のさらなる研究が必要とされています。更年期に向けた体の変化に関心のある方にとって、自身の健康管理を考えるうえでの一つの視点として参考になる内容と言えるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):更年期移行期の代謝変化と栄養アドバイス(カレント・ニュートリション・レポーツ・2026年08月)

著者:Sara L. Bonnes(Mayo Clinic, 200 First St SW, Rochester, MN, 55905, USA. [email protected])、H. Nordhues(Mayo Clinic, 200 First St SW, Rochester, MN, 55905, USA)、R. Sood(Mayo Clinic, 200 First St SW, Rochester, MN, 55905, USA)、D. Kulick(Mayo Clinic, Scottsdale, AZ, USA)、A. Muratore(UNC Health, Raleigh, NC, USA)、E. Bischof(Shanghai University of Medicine and Health Sciences, Shangai, China)