この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Sustainability

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

学校給食は、家庭の経済状況にかかわらず子どもに同じ食事を届け、より健康的で環境にも配慮した食習慣を育てる場として期待されています。一方で、野菜や豆類を中心とした新しいメニューは子どもの好みに合わず、食べ残しが増えやすいという課題もあります。論文によれば、給食の食べ残しは食事全体の重さの約15〜40%に及ぶと推計されてきました。

研究チームは、子どもの好みは家庭の食卓で身につくものの、給食の場では友だちとの関係のなかで改めて形づくられていくと考えました。そこで、家庭や友だちとの関わりのなかで育つ食への価値観が、新しく導入された植物性の給食メニューの受け入れやすさや食べ残しとどう結びついているかを探りました。著者らは、この研究を決まった仮説を厳密に検証するものではなく、今後重点的に調べるべき点を見つけるための探索的な研究と位置づけています。

何を調べたか

調査は欧州の研究プロジェクトの一環として、欧州12か国16校で9〜15歳の子ども2481人を対象に行われました。参加者の約6割は毎日給食を利用していました。

試食したのは、肉を使わないこと、精製度の低い食材を使うこと、塩分を控えることという共通の原則に沿った料理です。ただし全校で同じ料理を出すのではなく、各校で普段出している料理や地域の郷土料理をもとに調整し、子どもにとってなじみのある味になるよう工夫されました。

食事の直後に、子どもたちは教室でアンケートに答え、自分がどれくらい食べ残したかを申告しました。食事に付き添った教員らはその場で子どもの様子を観察し、申告内容を確かめる役割を担いました。アンケートには、「家とは違う料理を試すのが好き」「友だちと給食を食べるのが楽しい」「動物を傷つけない野菜だけの料理が好き」「甘いものはエネルギーになるから好き」など、日常の食の場面を描いた12枚のイラストが含まれていました。子どもは、それぞれが自分にどれくらい当てはまるかを5段階で答えました。これらの項目は、人の価値観を「変化への開放性」や「他者や環境への配慮」などに分類する心理学の理論に基づいて作られています。

主な結果

新しい料理を少なくとも部分的には受け入れた子どもは75.6%で、皿に何も残さなかった子どもは46.9%でした。

12の価値観の項目のうち6つで、食べ残しの量との間に統計的に意味のある関連がみられました。最も強く結びついていたのは、新しい食べ物を試すことに前向きな姿勢です。次いで、友だちと給食を囲むことを楽しむ姿勢、そして倫理や環境に配慮した食の価値観が、食べ残しの少なさと関連していました。反対に、甘いお菓子やデザートなど、おいしさや快楽を重視する傾向は、食べ残しの多さと関連していました。

国ごとの比較では、「友だちと給食を食べるのが楽しい」という項目がどの国でも高く、給食が国を問わず社交の場として受け止められていることがうかがえました。これに対し、家庭のルールに従う傾向や、倫理・環境への意識は、国によるばらつきが大きくなりました。

研究が示す意味

著者らは、子どもが新しい給食を受け入れるかどうかは、料理の味だけで決まるのではなく、家庭の食文化と学校という場の両方によって形づくられると結論づけています。そのうえで、学校と家庭の足並みをそろえること、地域の食文化に根ざした献立にすること、楽しく食卓を囲める雰囲気をつくることが、受け入れを高め、食べ残しを減らすことにつながりうると提案しています。

この研究は、健康や環境に配慮した給食を広めるには、栄養の基準を整えるだけでなく、子どもたちの食の価値観や給食の場での人間関係にも目を向ける必要があることを示しています。

著者:Maria Giovanna Onorati(University of Gastronomic Sciences of Pollenzo, 12042 Pollenzo, CN, Italy)、Nadia Tecco(University of Gastronomic Sciences of Pollenzo, 12042 Pollenzo, CN, Italy)、Franco Fassio(University of Gastronomic Sciences of Pollenzo, 12042 Pollenzo, CN, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maria Giovanna Onorati, Nadia Tecco, Franco Fassio. From Taste to Non-Waste: Food Patterns and Family Eating Styles Behind Children’s Acceptance of a Planetary Healthy School Recipe—Findings from a Large-Scale Study in EU School Canteens. Sustainability 2026-09-15. DOI: 10.3390/su18189437. 原著ライセンス:CC BY.