著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。

掲載誌:Food Research International

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

小麦などに含まれるたんぱく質「グルテン」は、胃や腸で消化される途中で短い断片(ペプチド)に分かれます。こうしたペプチドの一部は、セリアック病、小麦アレルギー、そして運動などの増悪因子が加わったときに症状が出る小麦アレルギー(WALDA)といった、小麦に関連するさまざまな疾患の引き金になりうるとされています。

研究チームは、このような免疫反応に関わるペプチド(免疫反応性ペプチド)を特定・定量し、グルテンがどれだけ消化されやすいか(消化性)との関係を調べることを目的としました。あわせて、穀物の種類による消化性の違いと、加熱温度が消化性に与える影響も比較しました。

どのように調べたか

研究では、小麦・ライ麦・大麦の粉と、それらを酵母で発酵させたパン、サワードウ(乳酸菌などを含む発酵種)で発酵させたパンを試料としました。これらを、INFOGESTと呼ばれる標準化された手順に従い、試験管内で胃から腸までの消化を模擬する処理にかけました。

消化後に生じたペプチドは、微量の成分を分離して分子の重さから配列を割り出す分析法(ナノ液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析)で特定し、相対的な量を比較しました。また、消化後に残ったグルテン由来ペプチドの量を、抗体を使った測定法(ELISA)で測りました。消化性は、ペプチド配列の平均の長さと消化物中のグルテン量をもとに評価されています。

主な結果

抄録によると、白い小麦粉と全粒粉の間では消化性に違いは見られませんでした。3種類の穀物を比べると、大麦粉の消化性が最も低く、小麦粉が最も高かったと報告されています。

免疫反応性ペプチドは、小麦粉の消化物から569種類が見つかったのに対し、ライ麦と大麦の試料では388種類にとどまったとされています。小麦と大麦では、見つかったペプチドの多くがセリアック病に関連するものでしたが、ライ麦ではセリアック病に関連するものとWALDAに関連するものが同程度に存在していました。

パンの外側の皮(クラスト)と内側の柔らかい部分(クラム)を比べたところ、焼成時により高い温度にさらされるクラストでは、グルテンの消化性が低下し、免疫反応性ペプチドの存在量が増えていました。一方、クラムの消化性は原料の粉よりも高く、著者らはパン作りの工程が消化性に良い影響を与えたことを示すものとしています。

研究が示すこと

この研究は、グルテンの消化されやすさや、消化の過程で生じる免疫反応性ペプチドの種類と量が、穀物の種類や加熱条件によって異なることを、模擬消化の実験から示しました。同じパンでも、高温になる皮の部分と内側とで消化のされ方が違うという点は、原料だけでなく調理・加工の条件にも目を向ける意味を示す報告といえます。

原著論文の著者・所属:Kim Karolin Lorenz(Technical University of Munich, TUM School of Life Sciences, Professorship of Food Biopolymer Systems, Lise-Meitner-Str. 34, 85354 Freising, Germany; Leibniz Institute for Food Systems Biology at the Technical University of Munich, Lise-Meitner-Str. 34, 85354 Freising, Germany)、Katharina Anne Scherf(Technical University of Munich, TUM School of Life Sciences, Professorship of Food Biopolymer Systems, Lise-Meitner-Str. 34, 85354 Freising, Germany; Leibniz Institute for Food Systems Biology at the Technical University of Munich, Lise-Meitner-Str. 34, 85354 Freising, Germany. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kim Karolin Lorenz, Katharina Anne Scherf. Temperature and raw material impact on gluten digestibility and immunoreactive peptides in wheat, rye, and barley. Food Research International 2026-08-08. DOI: 10.1016/j.foodres.2026.120324. 原著ライセンス:CC BY.