著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Plexus Medical Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
おなか周りに脂肪がたまる「腹部肥満(中心性肥満)」は、高血圧や糖尿病、心血管疾患のリスクと関係するとされ、世界でもインドネシアでも増えています。論文によると、インドネシアの都市部では腹部肥満の割合が2007年の28%から2018年には57.2%へ大きく上昇しました。
腹部肥満の背景には、加齢や運動不足に加え、食生活も関わると考えられています。著者らが注目したのは、糖とたんぱく質や脂質が酵素を介さずに反応してできる「終末糖化産物(AGEs)」です。AGEsは、水分の少ない状態で高温・長時間加熱した食品に多く含まれるとされます。研究チームは、その代表的な指標である「カルボキシメチルリシン(CML)」の食事からの摂取量に着目しました。
食事由来のCMLと腹囲の関係については、関連を示した研究もあれば、関連が見られなかった研究もあり、インドネシアでの報告はまだ限られていました。そこで研究チームは、ジャカルタ西部の地域保健センター(プスケスマス)で働く都市部の成人女性を対象に、食事から摂るCMLの量と腹部肥満との関連を調べました。
何を調べたか
研究は2024年9月から10月にかけて行われました。ある一時点での状態を調べる横断研究で、対象は同センターに勤める20〜64歳の健康な女性104人です。妊娠中・授乳中の人、糖尿病のある人、喫煙者などは除外されました。
食事内容は、勤務日と休日の各1日について、前日24時間に食べたものを思い出して答えてもらう方法で調べました。CML量の算出には、著者らが以前に作成したインドネシアの食品210種類のCML含有量データベースを使い、載っていない食品は他国のデータで補いました。果物と野菜はCMLが少ないため、計算には含めていません。
腹部肥満の判定には腹囲を用い、アジア太平洋地域の女性の基準に従って80cm以上を腹部肥満としました。CML摂取量は、1日2.65mg未満を「少ない群」、2.65〜4.8mgを「中程度の群」、4.8mgを超える場合を「多い群」に分けて比較しました。年齢やエネルギー・たんぱく質の摂取量の影響を統計的に調整したうえで関連を評価しています。
主な結果
参加者が食事から摂るCMLの量は、中央値で1日3.7mgでした。腹囲が80cm以上で腹部肥満に該当した人は全体の62.5%でした。
CML摂取量の「多い群」は「少ない群」に比べて、腹部肥満に該当する人の割合が高い傾向にありました。ただし、他の要因を考慮しない単純な比較では、統計的に意味のある差とはいえませんでした。年齢とエネルギー・たんぱく質の摂取量を調整すると、「多い群」で腹部肥満に該当する見込み(オッズ)が「少ない群」の約4.75倍となり、統計的に意味のある関連が認められました。一方、「中程度の群」では、調整の前後とも明確な関連は見られませんでした。
年齢も腹部肥満と関連していました。調整後の分析では、年齢が1歳上がるごとに腹部肥満に該当するオッズが約1.16倍になると報告されています。
研究が示すこと
著者らは、インドネシアの食品データベースを用いて都市部女性のCML摂取量を評価した初めての研究だと位置づけています。そのうえで、食事からのCML摂取が多いことと腹部肥満との間に関連があると結論づけ、CML摂取を控えるための教育が腹部肥満のリスク低減に役立つ可能性に触れています。
ただし、この研究は一時点の調査で、関連は示しても、CMLが腹部肥満を引き起こすという因果関係までは確かめていません。著者ら自身も、対象が1か所の施設に限られ無作為に選ばれていないこと、食事調査が本人の記憶に頼ること、魚や内臓類などデータベースに未収録の食品があることを限界として挙げています。研究は、都市部の女性の食事に含まれるCMLの量と、腹部肥満との関わりを考えるための基礎的なデータを提供するものです。
原著論文の著者・所属:Levina Gabrielle Hermawan(Faculty of Medicine, Universitas Trisakti, Jakarta, Indonesia)、Patricia Budihartanti Liman(Department of Nutrition, Faculty of Medicine, Universitas Trisakti, Jakarta, Indonesia/ Nutrition Study Center, Faculty of Medicine, Universitas Trisakti)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Levina Gabrielle Hermawan, Patricia Budihartanti Liman. Association of Dietary Carboxy Methyl Lysine in Adult Women With Central Obesity: A Cross-Sectional Study. Plexus Medical Journal 2026-10-19. DOI: 10.20961/plexus.v5i4.3488. 原著ライセンス:CC BY.