この研究は、ブラジル、スペインの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Chromatography A

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

大豆の摂取は、イソフラボンやソヤサポニンといった生理活性をもつ複数の成分の存在と関連づけて語られてきました。著者らは、食品加工がこうした成分の構成を大きく変えてしまう一方で、その変化は複雑であり、従来のクロマトグラフィー(混合物の成分を分離して調べる分析手法)では十分に捉えられないという課題を出発点としています。

そこで研究チームは、分離能力を高めた二次元液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析法を組み合わせ、大豆ミール(大豆から油を搾った後に残る粕)に含まれる代謝物の全体像を明らかにすることを目的としました。さらに、二つの加工処理によって成分がどう変化するかを調べています。

何を調べたか

比較の対象となったのは、未処理の大豆ミールと、パン酵母として知られるサッカロミセス・セレビシエによる発酵を行ったもの、そして食品用途のセルラーゼ(繊維質を分解する酵素)で酵素処理を行ったものです。

成分を抽出する条件についても検討が行われ、論文ではメタノールと水を1対1で混ぜた溶媒を用いた場合に、抽出量が最も多く、検出される成分の種類も最も多様になったと報告されています。

主な報告結果

未処理の大豆ミールからは12種類のイソフラボンが同定されました。著者らによると、発酵と酵素処理のいずれの工程でも、糖が結合した形のイソフラボン(配糖体)は対応するアグリコン(糖が外れた形)へ完全に変換され、処理後の試料ではアグリコン型のイソフラボンのみが検出されたとされています。

ソヤサポニンについては、39種類が推定同定されました。そのうち28種類は未処理の大豆ミールにのみ見られ、三つの試料すべてに共通していたのはわずか3種類でした。

成分構成の変化は処理の種類によって異なりました。今回の分析条件下では、発酵によって39種類の化合物が検出されなくなり、新たに42種類(うちソヤサポニン18種類)が検出されました。酵素処理ではこれとは別の変化が生じ、43種類が検出されなくなる一方で36種類が新たに現れ、そのうち7種類のソヤサポニンは発酵試料では検出されなかったものでした。

この結果が示すこと

著者らは、こうした複雑な成分の変化を解きほどくうえで高度なクロマトグラフィー手法が重要であることを、この結果が示していると述べています。あわせて、発酵や酵素処理といった生物工学的な加工を条件を管理しながら用いることが、大豆由来原料の化学的な多様性を広げる役割を担いうる点を強調しています。

同じ原料から出発しても、施す処理の種類によって残る成分と現れる成分の組み合わせが変わるという報告は、加工を成分構成を設計する工程として捉える視点につながるものです。

著者:Fabricio Oliveira Silva(Laboratório de Desenvolvimento e Análise Sensorial de Alimentos, Faculty of Pharmacy, Federal University of Rio de Janeiro, Av. Carlos Chagas Filho, 373, CCS, Bloco A, 2nd floor, Sala 26, Rio de Janeiro 21941-902, Brazil)、Lídia Montero(Foodomics Laboratory, Institute of Food Science Research (CIAL, CSIC-UAM), Nicolás Cabrera 9, 28049, Madrid, Spain)、Alejandro Cifuentes(Foodomics Laboratory, Institute of Food Science Research (CIAL, CSIC-UAM), Nicolás Cabrera 9, 28049, Madrid, Spain)、Miguel Herrero(Foodomics Laboratory, Institute of Food Science Research (CIAL, CSIC-UAM), Nicolás Cabrera 9, 28049, Madrid, Spain)、Mariana Costa Monteiro(Laboratório de Alimentos Funcionais, Nutrition Institute, Federal University of Rio de Janeiro, Av. Carlos Chagas Filho, 373, CCS, Bloco J, 2nd floor, Sala 16, Rio de Janeiro 21941-902, Brazil)、Daniel Perrone(Laboratório de Bioquímica Nutricional e de Alimentos, Department of Biochemistry, Chemistry Institute, Federal University of Rio de Janeiro, Av. Athos da Silveira Ramos 149, CT, Bloco A, Sala 528A, Rio de Janeiro 21941-909, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fabricio Oliveira Silva, Lídia Montero, Alejandro Cifuentes, et al. Comprehensive two-dimensional liquid chromatographic profiling reveals distinct phytochemical modifications in soybean meal induced by fermentation and enzymatic hydrolysis. Journal of Chromatography A 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.chroma.2026.467469. 原著ライセンス:CC BY.