著者の所属・活動拠点の国は、ケニアです。

掲載誌:Academia Engineering

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

最終結果だけでは見えない「どこで割れたか」

米は粉にして食べる他の穀物と違い、粒のまま食べられることが多いため、精米後にどれだけ形の整った粒が残るかが品質と価格を大きく左右します。これまで精米の品質は、精米後に残る整粒(ヘッドライス)の割合や砕米の割合といった、工程の最後の結果で評価されるのが一般的でした。しかしこうした指標では、もみすりや精白、選別といった一連の工程のどこで粒が傷み、割れたのかまでは分かりません。

ケニア・ナイロビ大学の研究チームは、試料を壊さずに測定できる画像解析を使い、精米工程の複数の地点で米粒の形を比べることで、粒の健全さがどの区間で大きく変化するのかを調べました。対象は、ケニア国内で特に好まれる香りのある長粒米「ピショリ米」です。

市販のスキャナーで粒の長さと細長さを測る

研究チームはケニアの精米会社で、同じ生産ロットから3つの地点の米を採取しました。もみ殻を除いた直後の玄米、ぬかを削る精白を経た後で選別前の白米、そして選別後の白米です。これを1週間おきに3回繰り返しました。

各地点の試料から約10gを取り分け、粒どうしが重ならないよう手で並べて、市販のフラットベッドスキャナーで200dpiの解像度で読み取りました。背景には黒い板を置き、粒が画像の中で際立つようにしています。画像は種子解析用のソフトウェアで処理され、一粒ごとの長さ、幅、そして長さを幅で割った「縦横比」(細長さの目安)が求められました。

粒の分類には、研究独自の基準を使っています。長さ6.0mm以上かつ縦横比3.0以上の粒を「長粒の形態基準を満たす粒」とし、その平均長さの4分の3以上の長さがある粒を整粒、それより短い粒を大・中・小の砕米に分けました。著者らは、この基準は国際規格の定義をそのまま当てはめたものではなく、画像解析用に調整した運用上の分類であると明記しています。また、整粒の割合は重さではなく粒の数に基づく割合として示されています。

最も大きく悪化したのは玄米から選別前白米までの区間

論文によると、粒の健全さが最も高かったのは玄米でした。長粒の形態基準を満たす粒の割合は63.98%、粒数に基づく整粒の割合は72.17%でした。

一方、精白後で選別前の白米では、平均の長さが5.10mmと3地点で最も短く、砕米の割合は43.12%と最も高くなりました。平均の長さは玄米から0.88mm短くなり、縦横比も同じように小さくなっています。中くらいの長さの砕米の割合は、玄米の13.46%に対して24.35%と大きく増えていました。

選別後の白米では、整粒の割合が68.12%、砕米の割合が31.88%となり、選別前より長い粒の比率が高くなっていました。著者らは、これは傷んだ粒が元に戻ったのではなく、選別によって短い破片が取り除かれ、長い粒が集められた結果だと説明しています。

こうした結果から、研究チームは、最も大きな変化が玄米の採取地点と選別前白米の採取地点の間で起きていたと報告しています。ただしこの区間には精白機だけでなく、搬送などの取り扱い工程も含まれており、今回の調査設計では精白だけが原因だとは断定できないとしています。また、玄米の段階ですでに砕米がある程度見られたことから、一部の粒は精米前から構造的な弱さを抱えていた可能性も指摘しています。

身近な機器で工程ごとの変化を「見える化」する

この研究は、一般的なフラットベッドスキャナーで得た画像から、精米工程の途中で米粒の形がどう変わっていくかを読み取れることを示しました。著者らは、この方法が精米所で整粒や砕米の発生を日常的に監視し、工程の調整に役立てる手法になりうると述べています。

一方で、今回の結果はあくまで記述的なもので、統計的な検定や因果関係の検証は行っていないと著者らは断っています。日常の品質管理に使える手段として確かめるには、工程をまたいで固定した基準での分類、手作業による寸法測定や重量に基づく測定との照合などが必要だとしています。「最終的な結果」だけでなく「途中のどこで傷むのか」に目を向けるための、手軽な観察方法を示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Joackim Mutua(Department of Environmental and Biosystems Engineering, University of Nairobi, Nairobi, Kenya)、Duncan Mbuge(Department of Environmental and Biosystems Engineering, University of Nairobi, Nairobi, Kenya)、Michael Okoth(Department of Food Science and Technology, University of Nairobi, Nairobi, Kenya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Joackim Mutua, Duncan Mbuge, Michael Okoth. Non-destructive image analysis for assessing rice kernel integrity during milling. Academia Engineering 2026-10-26. DOI: 10.20935/acadeng8581. 原著ライセンス:CC BY.