私たちは食品を口にするとき、生産者や販売者、そして国の監督機関をどれくらい信頼しているだろうか。食への信頼は、表示の見方や食品選びの行動にも関わるといわれるテーマだが、その水準が年々どう推移しているのかは意外と知られていない。今回紹介するのは、欧州12カ国とイスラエルを対象に、2019年から2024年までの6年間にわたって食品チェーンの関係者への消費者の信頼を追跡した研究である。ちょうど新型コロナウイルスの流行期をまたぐ期間であり、社会的な混乱が人々の信頼にどう影響したのかを見る手がかりにもなっている。
研究チームは、EIT Food TrustTracker®という毎年実施されているデータ収集の結果をもとに、商業的な立場にある食品チェーンの関係者(生産者や小売業者など)と、行政・監督機関という二つのタイプへの信頼を分けて分析した。対象となったのは欧州12カ国とイスラエルで、6年分のデータを国ごと・年ごとに比較する形が取られている。
研究でわかったこと
まず全体的な傾向として、国によって信頼の水準にはかなりの差があることが確認された。ある国では信頼が高く、別の国では低いといった違いが、6年を通じて一貫して見られたという。
一方で、時間の経過にともなう変化という点では、信頼のレベルは全体としては非常に安定していたと報告されている。大きく上下するのではなく、各国ともおおむね同じような水準を保ち続けていたということだ。
ただし、コロナ禍の期間に限っては、一部の国で信頼水準の変化が見られたとされる。具体的には、いくつかの国では商業的な食品関係者への信頼がコロナ禍の間にやや上昇し、パンデミックが収まったあともその高い水準が維持されたという。また、行政・監督機関への信頼についても、一部の国でコロナ禍の間にわずかに上昇したが、こちらはパンデミック後にはおおむね元の水準に戻ったと述べられている。
研究チームはこうした変化について、コロナ禍における食品サプライチェーンの混乱とそれに対する消費者の受け止め方、そして各国政府によるパンデミックへの対応という二つの観点から解釈できるとしている。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は探索的な分析と位置づけられており、多国間・複数年にわたる継続的な調査データを扱った一つの研究である。今回の情報からは、日本の食品や食習慣、日本に所属する研究者についての言及は確認できない。信頼という心理的な指標の変化の背景には多くの要因が絡みうるため、ここで示された解釈がそのまま因果関係を証明するものではない点には注意したい。
まとめ
欧州13カ国・地域を対象にした6年間の調査から、食品チェーンへの消費者の信頼は国ごとに大きな差がありながらも、全体としては時間を通じて安定していたことが報告された。ただしコロナ禍という特殊な時期には、商業的な関係者や行政機関への信頼に一時的な変化が見られた国もあり、その後の推移も一様ではなかったという。食への信頼がどのような出来事によって動き、どのように定着していくのかを考えるうえで、興味深い手がかりを示す研究といえるだろう。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Anna L. Macready, Sophie Hieke, Liesbet Vranken, et al. Trust patterns in food chain actors in the European region over a six-year period (2019-2024): an exploratory analysis. フードコントロール誌 (2026). DOI: 10.1016/j.foodcont.2026.112545. 原著ライセンス: cc-by.