魚は傷みやすい食品のひとつで、世界各地で油で揚げたり、煙でいぶしたり、乾燥させたりといった加工が古くから行われてきています。こうした加工は保存性を高める一方で、栄養価や食べたときの風味・食感にも影響を与えると考えられます。今回紹介する研究は、ナイジェリア産の淡水魚Coptodon guineensisを対象に、加工方法の違いが栄養成分(概量組成)と食べたときの官能評価にどのような違いをもたらすかを調べたものです。
どのように調べたのか
研究では、ナイジェリア・リバース州のチョバ市場で調達した新鮮なCoptodon guineensisを、油揚げ・燻製・オーブン乾燥という3つの加工方法でそれぞれ3回ずつ処理し、完全無作為配置という実験計画のもとで比較しました。栄養成分についてはAOAC(米国分析化学会)が定める標準的な分析法を用いて、水分・タンパク質・脂質・灰分・粗繊維の含有量を測定しています。また、食べたときの印象については12名のパネルが5段階の快楽尺度(好ましさの度合いを5段階で評価する方法)を用いて、風味・味・食感・総合評価などの項目を評価しました。得られたデータは一元配置分散分析とTukey検定(有意水準5%)によって、加工方法間の差が統計的に意味のあるものかどうかを確かめています。
加工方法によって何が変わったのか
水分含量は加工によって有意に減少し、燻製区が25.88%と最も低い値になりました。水分が少ないほど微生物が繁殖しにくく保存性が高まると考えられるため、燻製は保存性の面で優れていることが示唆されています。
タンパク質含量は加工によって増加する傾向がみられ、燻製(63.88%)とオーブン乾燥(61.87%)で最も高い値となりました。一方、脂質含量は生の状態(36.88%)と油揚げ(30.59%)で高く、燻製では6.45%と最も低くなっています。油揚げで脂質が高めに残った点については、揚げ油が魚に吸収されたことが一因として示唆されています。灰分(ミネラル分の指標)や粗繊維の含量についても、加工方法によって統計的に有意な差がみられました。
官能評価では、加工方法ごとに得意分野が分かれる結果となりました。油揚げは風味(4.74点)、味(4.91点)、総合評価(4.72点)で最も高い評価を得た一方、燻製は食感の評価(4.91点)で最も高くなりました。これに対しオーブン乾燥は、多くの評価項目で相対的に低い評価にとどまっています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この結果は、ナイジェリアの特定の市場で調達した一種類の魚を対象に、3種類の加工方法・各3反復という条件のもとで得られたものです。パネルによる官能評価も12名という規模で実施されており、他の魚種や地域、より大規模な調査でも同様の傾向が得られるかどうかは、この研究だけでは分かりません。あくまで一つの研究として得られた知見であり、加工方法と栄養・嗜好性の関係を考えるうえでの一つの手がかりと捉えるのが妥当です。
まとめ
この研究では、Coptodon guineensisという魚を油揚げ・燻製・オーブン乾燥の3方法で加工した場合、燻製とオーブン乾燥はタンパク質含量や保存性を高める傾向がある一方、油揚げは風味や味、総合的な好ましさの評価で優れる傾向があると報告されています。加工方法の選択は、栄養面を重視するか、味や食感といった嗜好面を重視するかによって変わりうることが示唆されており、目的に応じた加工方法の使い分けを考える上で参考になる知見といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):C.F. Ikeogu. Effects of Some Processing Methods on Organoleptic Properties and Proximate Composition of Coptodon guineensis (Günther, 1862). リサーチ・ジャーナル・オブ・フード・サイエンス・アンド・クオリティ・コントロール (2026). DOI: 10.56201/rjfsqc.vol.12.no3.2026.pg42.50.