この研究は、タイ、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods (Basel, Switzerland)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC
研究の目的
米は世界人口の半数以上にとって主食であり、タイでは主要な輸出農産物でもあります。米は炭水化物の供給源として知られていますが、タンパク質も6〜7%含んでいます。研究チームによれば、米タンパク質はアミノ酸のバランスがよく消化されやすいうえ、乳糖・グルテン・大豆といった代表的なアレルゲンを自然に含まないため、アレルゲンを避けたい食品や植物性食品の材料として関心を集めています。
一方、グミは子どもから働く大人まで幅広く食べられるお菓子ですが、一般的な配合は砂糖・ブドウ糖シロップ・動物由来のゼラチンが中心で、炭水化物が多いのが特徴です。近年は健康志向の高まりから、単なるカロリー源ではない「機能性グミ」への需要が増えています。そこで著者らは、タイのジャスミン米「カオ・ドーク・マリ105(KDML 105)」から抽出したタンパク質をグミに配合し、その物理的・化学的・官能的な性質を総合的に評価することを目的としました。
何を調べたか
研究チームは、KDML 105を収穫時期の異なる2段階で用意しました。受粉後22〜28日の「青米(GR)」と、受粉後29〜35日の完熟米(RR)です。それぞれの米からタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)とデンプン分解酵素(α-アミラーゼ)を使ってタンパク質を抽出しました。酵素を用いる方法は、デンプンとタンパク質が絡み合った構造を分解して抽出効率を高められると報告されています。抽出液のタンパク質含量は、完熟米由来で18.04 g/100 mL、青米由来で22.28 g/100 mLでした。
グミの基本配合は、砂糖33%、ブドウ糖シロップ33.5%、ゼラチン8%、クエン酸1%、水24.5%です。この水の部分を、抽出したタンパク質液で20%、40%、60%、80%、100%と段階的に置き換えた試作品をつくり、水のみの対照品と比較しました。
評価項目は多岐にわたります。色・可溶性固形分(糖度の指標)・pH・離水(保存中に水分が分離する割合)といった物性、たんぱく質や脂質などの成分組成、テクスチャー分析による硬さや弾力、レオロジー測定によるゲルの構造特性、FTIR分光法によるタンパク質の構造、ポリフェノールやフラボノイドの量と抗酸化能、さらに18〜45歳の一般消費者30名による9段階の嗜好評価と、においを測る電子鼻・味を測る電子舌による分析です。
主な報告結果
まず栄養面では、タンパク質液の割合が増えるほどグミのタンパク質含量が上がりました。対照品の7.17 g/100 gに対し、水を全量置き換えた試作品では完熟米由来で11.59 g/100 g、青米由来で12.63 g/100 gに増加しています。同じ置換率で比べると、青米由来のほうがわずかに高い値でした。一方で、食品全体の重量は一定なので、タンパク質が増えた分だけ炭水化物は相対的に減少しました。
食感は、多くの試作品で対照品より柔らかくなりました。硬さは対照品の39.42 Nに対し、全量置換では完熟米由来が15.71 N、青米由来が22.82 Nまで低下しています。著者らは、米タンパク質がゼラチンのゲル網目構造の形成を妨げ、また主要なゲル化剤が相対的に薄まったためと説明しています。一方、対照品で目立っていた表面のべたつきは、米タンパク質を加えたすべての試作品で軽減されました。弾力性については、20%置換(完熟米由来)や60%置換(青米由来)で対照品を上回る値が得られました。
抗酸化に関わる成分は大きく増えました。総ポリフェノール量は、対照品の134.83 mg GAE/100 g DWに対し、青米由来を全量使った試作品で1099.45 mg GAE/100 g DWと最も高くなりました。総フラボノイド量も同じ試作品で最高値(486.08 mg QE/100 g DW)を示し、完熟米由来の全量置換品(340.32 mg QE/100 g DW)を上回っています。DPPH法で測った抗酸化活性も、青米由来の全量置換品が47.70 mg ビタミンC相当/100 g DWと、対照品のおよそ10倍でした。著者らは、青米には結合型・遊離型のフェノール酸が多いという既報と整合する結果だとしています。
消費者による嗜好評価では、対照品の総合的な好ましさが3.96と最も低く、米タンパク質を加えたすべての試作品が有意に高い評価を得ました。完熟米由来では40%置換が総合6.93で最も好まれ、それ以上増やしても評価は向上しませんでした。青米由来では全量置換が総合8.03と全試作品中で最高評価となり、外観(8.10)、色(7.96)、香り(7.50)、甘味(7.80)でも高い点数がつきました。著者らは、若い青米特有の香りが植物性タンパク質に伴いがちな異風味を覆い隠した可能性を指摘しています。
この研究が示すこと
この研究は、ジャスミン米から酵素で取り出したタンパク質をグミの水分と置き換えることで、タンパク質含量とポリフェノール・フラボノイド量、そして試験管内で測った抗酸化能を高められることを報告しました。同時に、置換の割合によって硬さや弾力、離水といった性質が変わることも示されました。
注目されるのは、米の収穫時期の違いが結果を左右した点です。青米由来の抽出物は抗酸化成分の量でも消費者の評価でも完熟米由来を上回り、高い割合で加えても嗜好が下がりませんでした。原料をいつ収穫するかという選択が、できあがる食品の性質に関わってくるという知見です。また、置換率を変えることで硬さや噛みごたえを調整できることから、著者らは柔らかい製品を好む層に合わせた食感設計の余地があるとも述べています。身近なお菓子の配合を見直すことで、素材のもつ栄養や成分をどう活かせるかを具体的に検討した一例といえます。
著者:Siripan T(Department of Food Technology and Nutrition, Faculty of Technology, Mahasarakham University, Kantarawichai, Maha Sarakham 44150, Thailand.)、Li H(Department of Cuisine and Nutrition, Yangzhou University, Yangzhou 225127, China.; Key Laboratory of Chinese Cuisine Intangible Cultural Heritage Technology Inheritance, Ministry of Culture and Tourism, Yangzhou 225127, China.)、Siriamornpun S(Department of Food Technology and Nutrition, Faculty of Technology, Mahasarakham University, Kantarawichai, Maha Sarakham 44150, Thailand.; Research Unit of Thai Food Innovation (TFI), Mahasarakham University, Kantarawichai, Maha Sarakham 44150, Thailand.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Siripan T, Li H, Siriamornpun S. Rice Protein-Fortified Gummy: The Physicochemical, Bioactive and Sensory Evaluation. Foods (Basel, Switzerland) 2026-09-04. DOI: 10.3390/foods15173148. 原著ライセンス:CC BY.