この研究は、カナダ、オーストリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Agricultural and Food Chemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとした研究か

ウェスタンレッドシーダー(Thuja plicata Donn)は林業で広く使われる樹木で、その樹皮は木材を得る過程で大量に出る副産物です。この樹皮にはタンニンの一種であるプロアントシアニジン(PA)が豊富に含まれており、機能性食品素材としての活用が期待されています。

ところが、樹皮からタンニンを取り出そうとしても、完全には抽出しきれないことが知られていました。研究チームは、その理由が「PAが細胞壁の多糖(糖がつながった高分子)と化学的な結合で結びついているためではないか」と考え、両者のあいだに共有結合(原子同士がしっかり結びついた、簡単には外れない結合)が存在するかどうかを調べました。

どのように調べたか

研究チームはまず、樹皮を水で抽出し、そこからアルコールに溶けない残さ(AIR)を回収しました。この残さは乾燥重量の樹皮に対して1.0%(重量比)にあたり、PAを少なくとも1.46%(残さ重量比)、多糖をおよそ30%(同)含んでいました。さらにこの残さは、通常なら成分を分けられるはずの反応性の低い溶媒で処理しても分離せず、PAと糖が容易には切り離せない形で結びついていることと符合する結果だったと報告しています。

次に、酸性ブタノールによる分解処理と液体クロマトグラフィー質量分析(LC–MS、成分を分離して重さから種類を見分ける手法)を組み合わせたところ、糖が炭素同士で直接つながった「C-グリコシル化アントシアニジン」が検出されました。具体的には、6-C-ペントシルシアニジン、8-C-(デオキシヘキソシル)シアニジン、X-C-(デオキシヘキソシル)-Y-C-ペントシルデルフィニジンといった、結合の証拠となる化合物です。加えて核磁気共鳴(NMR)による分析でも、PAと多糖がつながった複合体の存在が支持され、相手となる糖としてヘミセルロースやペクチン(いずれも植物の細胞壁を構成する多糖)が想定されました。

報告された意味

研究チームは、こうして見つかったPAと糖の複合体を「フラボグリカン」と名づけています。複数の実験から得られた証拠が同じ方向を指しており、樹皮のなかでPAと糖のあいだにC-グリコシル結合による架橋が生じていることを示唆する、というのが著者らの見解です。

この知見は、樹皮からタンニンを完全には抽出できないという従来からの現象に、化学的な説明を与えるものです。また著者らは、糖との結合がPAの取り出しやすさや、水を用いた系での界面でのふるまいを左右しうると述べています。樹皮という素材から有用成分を回収しようとするとき、目的の成分そのものだけでなく、それが細胞壁の糖とどう結びついているかを踏まえる必要があることを示した研究といえます。

著者:Gio Ferson M. Bautista(The University of British Columbia , , 2036 Main Mall , , ,)、Oliver Musl(BOKU University , , Konrad-Lorenz-Strasse 24 , ,)、Markus Bacher(BOKU University , , Konrad-Lorenz-Strasse 24 , ,)、Zhicheng Xia(The University of British Columbia , , 2036 Main Mall , , ,)、Julia L. Azzi(The University of British Columbia , , 2360 East Mall , , ,)、Antje Potthast(BOKU University , , Konrad-Lorenz-Strasse 24 , ,)、Thomas Rosenau(BOKU University , , Konrad-Lorenz-Strasse 24 , ,)、Orlando José Rojas(The University of British Columbia , , 2036 Main Mall , , ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gio Ferson M. Bautista, Oliver Musl, Markus Bacher, et al. Flavoglycans: Evidence for Covalent Proanthocyanidin–Polysaccharide Linkages in Western Redcedar Bark. Journal of Agricultural and Food Chemistry 2026-09-10. DOI: 10.1021/acs.jafc.6c03146. 原著ライセンス:CC BY.