著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:生食用ブドウを甘口ワインに生かせるか
中国北西部の新疆は、栽培面積と年間生産量のいずれでも中国最大のブドウ産地です。そこで栽培される在来の生食用ブドウ「和田紅(Hetianhong)」は、皮が厚く果肉が多く、果汁がよく取れます。ただし著者らによると、その加工用途はこれまで主に干しブドウづくりと、地域の伝統的な発酵飲料「ムサレス」に限られていました。
収穫後のブドウを干して水分を減らす「脱水」は、糖や酸、ポリフェノールなどを濃縮し、甘口ワインの甘さや風味を高める手法として知られています。一方、脱水を収穫時の熟度と組み合わせて調べた研究は、ワイン専用品種に限られていたと論文は述べています。研究チームは、白い生食用品種である和田紅について、熟度と脱水の程度、そしてその組み合わせが甘口白ワインの品質にどう影響するかを調べることを目的としました。
何をどう調べたか
研究チームは、糖度の目安となる可溶性固形分(°Brix)が20と24に達した時点で和田紅を収穫しました。それぞれを、重量が15%、30%、45%減るまで脱水する区と、脱水しない対照区に分け、合計8通りの条件で甘口白ワインを仕込みました。脱水には、和田地域の風と熱を模した送風式の乾燥機を使い、45℃、風速毎秒1メートル、湿度40%の条件で行いました。
できたワインについて、アルコール度数や酸度などの基本成分、還元力を持つフェノール類の総量(総還元フェノール当量)、DPPHという試薬を用いた試験管内での抗酸化力を測定しました。香りの成分は、ガスクロマトグラフィー質量分析で分析しました。さらに、各成分の濃度を人が匂いを感じ取れる最低濃度で割った「香気活性値(OAV)」を求めました。この値が1を超える成分は、香りに寄与しうるとみなされます。訓練を受けたパネルによる官能評価も行っています。
なお論文は、各脱水条件の脱水処理を1回ずつしか行っておらず、3回の発酵は同じ脱水ロットから分けたものであると明記しています。そのため、結果から言えることは、この実験で用いた脱水ロットに限られるとしています。
主な結果:濃縮でアルコール・フェノール・香りが増加
脱水によって果汁の糖と酸が増えました。その結果、ワインのアルコール度数も上がり、30%と45%の脱水区ではいずれの熟度でも15%を超えました。45%の脱水区では、アルコールと残った糖の作用により、発酵が途中で自然に止まりました。ワインの色は、熟度と脱水の程度が高いほど黄褐色が濃くなりました。
総還元フェノール当量も脱水で大きく増え、20°Brix収穫・45%脱水の区は同じ原料の未脱水区の8.67倍でした。熟度の影響も大きく、未脱水どうしで比べると、24°Brix収穫の区は20°Brix収穫の区の2.96倍でした。DPPH試験で測った抗酸化力も、熟度と脱水の程度が高いほど概ね上昇し、24°Brix収穫・45%脱水の区が最も高い値を示しました。
香りの成分は全体で58種類が検出されました。脱水するとその総量が増え、20°Brix収穫・45%脱水の区では未脱水区の5.93倍に達しました。脱水によりアルデヒド・ケトン類や高級アルコール類が大きく増えた一方、揮発性の脂肪酸類は減りました。揮発性フェノール類への影響は有意ではありませんでした。クリーミーな香りなどに関わるとされる3-ヒドロキシ-2-ブタノンは、脱水したワインでのみ検出されました。官能評価でも、脱水によってフルーティー、バラ様、クリーミーといった香りの特徴が強まったと報告されています。
香気活性値が1を超えた成分は27種類でした。統計的な判別分析では、未脱水のワイン、軽度から中程度に脱水したワイン(20°Brixの15%・30%区と24°Brixの15%区)、強めに脱水したワイン(20°Brixの45%区と24°Brixの30%・45%区)の三つのまとまりに分かれました。果実様の香りに関わる酢酸エチルや(Z)-3-ヘキセニルアセテートなど8成分は、軽度から中程度に脱水したグループに多く含まれていました。
研究が示すこと
この研究は、生食用の在来品種である和田紅でも、収穫時の熟度と脱水の程度を組み合わせることで、甘口白ワインの成分や香りの特徴が大きく変わることを示しました。著者らは、白い生食用品種から脱水甘口白ワインをつくる取り組みを系統的に評価した初めての研究だと位置づけています。そして、和田紅の加工と、和田地域の風と熱という気候資源の活用に向けた基礎になるとしています。
原著論文の著者・所属:Dexin Yang(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Aoran Zhang(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Xianghan Cheng(College of Agriculture, Henan University of Science and Technology, Luoyang 471023, China)、Xingyuan Yang(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)、Qiling Chen(College of Food Science and Pharmacy, Xinjiang Agricultural University, Nongda East Road 311, Urumqi 830052, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dexin Yang, Aoran Zhang, Xianghan Cheng, et al. Effects of Dehydration Treatment on the Quality of Sweet Wine from Hetianhong Grapes at Different Ripeness Levels. Foods 2026-09-25. DOI: 10.3390/foods15193436. 原著ライセンス:CC BY.