この研究は、カザフスタンの研究機関の研究論文です。
掲載誌:The Journal of Almaty Technological University
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
価値の高い漁獲対象魚の資源が減るなか、これまで十分に利用されてこなかった「低価値魚」を食品原料として活用することが課題になっています。著者らは、低価値魚から作る魚の半製品(家庭や調理現場で加熱して仕上げる下ごしらえ済みの製品)について、加熱調理の方法が味や見た目、化学的性質、微生物の状態にどう影響するかを調べました。
あわせて、ローズマリー抽出物とクエン酸ナトリウムという2種類の食品添加物を加えた場合の違いも検討しています。ローズマリー抽出物はフェノール化合物を多く含み、脂質の酸化を抑える抗酸化作用や抗菌作用が知られています。クエン酸ナトリウムは酸性度を調整し、製品の保水性などを安定させる目的で使われます。
どのように調べたか
半製品は密閉容器に入れて5℃で7日間保管した後、4通りの方法で加熱されました。オーブンで200℃・20分焼く方法(中心温度72℃以上を目安)、スチームコンベクションオーブン(熱風と蒸気を組み合わせて加熱する業務用調理機器)で180℃・湿度40%・18分加熱する方法、植物油で170〜180℃、片面5分ずつ焼く方法、そして100℃で20分蒸す方法です。
評価項目は、味・におい・色・食感・外観の官能評価、水溶性と脂溶性の抗酸化物質の活性、pH、脂肪の酸価(脂肪が分解されて生じる遊離脂肪酸の量の目安)、そして中温で増殖する一般的な細菌の数です。官能評価は5〜7人の評価者が、加熱方法や添加物の有無を伏せた状態で5点満点で採点しました。
主な結果
添加物を加えない製品の官能評価の平均点は、油で焼いたものが4.8点で最も高く、オーブン焼きが4.4点、スチームコンベクションオーブンが4.0点、蒸したものが3.4点で最も低くなりました。添加物を加えると、それぞれ4.4点、4.0点、3.6点、3.0点となり、論文によれば、添加物によって味や見た目の評価が良くなることはなく、いずれも0.4点ずつ低下しました。
一方、化学的な指標では添加物の効果が見られました。脂溶性の抗酸化物質は添加物を加えた製品の多くで高く、たとえば油で焼いた製品では1グラムあたり0.118ミリグラムから0.145ミリグラムに増えていました。脂肪の酸価はすべての加熱方法で添加物ありの方がやや低く、著者らはこれを脂肪の酸化や分解が遅くなっていることを示すものと解釈しています。これに対し、水溶性の抗酸化物質は添加物ありの方がやや低い場合が多く、オーブン焼きや油で焼く調理といった強い加熱ほど減少が大きく、穏やかな加熱では変化が小さい傾向でした。pHは、オーブン焼きで変化がなかった以外は、添加物によってわずかに低下しました。
細菌数については、オーブン焼きと油で焼いた製品では添加物を加えた方が少なくなりました。反対に、スチームコンベクションオーブンと蒸し調理の製品では、添加物ありの方がわずかに多くなりました。著者らは、高温で湿度の低い加熱ではローズマリー抽出物の抗菌成分が働きやすい一方、湿度の高い穏やかな加熱では成分の一部が凝縮水に移るなどして効果が弱まる可能性を挙げています。
研究が示すこと
この研究は、低価値魚の半製品の品質が加熱方法によって大きく変わり、同じ添加物でも加熱方法によって効き方が異なることを報告しています。添加物は味や見た目を良くするものではなかった一方で、脂肪の酸化に関わる指標や、条件によっては細菌数の面で良い方向の変化をもたらしました。著者らは、こうした結果から、ローズマリー抽出物とクエン酸ナトリウムの使用は主に油で焼く製品やオーブン焼きの製品で妥当であると結論づけています。
著者:М. А. Иосифов(Almaty Technological University)、A. M. Tayeva(Almaty Technological University)、G. D. Shambulova(Almaty Technological University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):М. А. Иосифов, A. M. Tayeva, G. D. Shambulova. The effect of heat treatment and food additives on the consumer properties of fish semi-finished products. The Journal of Almaty Technological University 2026-09-30. DOI: 10.48184/2304-568x-2026-3-119-128. 原著ライセンス:CC BY.