この研究は、南アフリカ、ドイツの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

傷みやすいイチジクの品質を保つために

研究チームは、収穫後に傷みやすい生鮮イチジクについて、低温プラズマ処理が保存中の品質と表面の微生物にどう影響するかを調べました。特に、プラズマを作る気体として空気を使う場合と、論文で「窒素を富化した気体」と呼ぶ条件を比較しました。

低温プラズマは、気体に電気を加えて反応性の高い粒子を生み出す技術で、高温で加熱する処理とは異なります。著者らは、絶縁体を挟んだ電極間で放電させる方式を用い、「Tangier」品種の果実を室温で2分間処理しました。処理しない果実も含め、容器に入れて5℃で21日間保存し、重さ、硬さ、果皮の色、果汁の成分、表面の微生物数を比較しました。

重さや成分の変化はどう違ったか

保存中はどの条件でも果実の重さが減りましたが、処理した果実では減少が小さくなりました。21日目の重量減少は、無処理で8.38%だったのに対し、空気を使った処理では約5%、窒素を富化した気体による処理では約7%でした。著者らは、処理した果実では硬さもよりよく保たれたと報告しています。一方、プラズマ処理による果皮の色への統計的に有意な影響は認められませんでした。

糖などの水に溶ける成分を示す「可溶性固形分」は、保存中にどの条件でも増加しましたが、処理した果実では増加が緩やかでした。また、酸の量を示す「滴定酸度」は、処理した果実の方が高く保たれました。論文は、こうした変化を、処理によって熟成の進行が抑えられたことを示す結果として説明しています。

総フェノール含量も、21日目には処理した果実の方が高い値を示しました。果汁100mL当たり、空気による処理では147.96mg、窒素を富化した気体による処理では142.68mg、無処理では135.18mgでした。これらは、測定の基準に使う没食子酸の量に換算した値で、個々のフェノール成分の量を直接示すものではありません。

微生物の増加を抑えながら品質を保つ

研究チームは、果実表面から回収した酵母・カビと、酸素のある環境で増殖する細菌も調べました。保存期間を通じて、両方のプラズマ処理で微生物数が無処理より有意に少なく、二つの処理条件の間には有意差がありませんでした。ただし、処理した果実でも微生物数は保存とともに増えており、微生物を完全になくしたという結果ではありません。

著者らは、低温プラズマ処理が冷蔵中のイチジクの品質を保ち、微生物の増加を抑える方法になり得ると結論づけています。今回の実験では、微生物への効果は両条件で同程度でしたが、重量減少の抑制や総フェノール含量では空気を使った処理がより良い値を示し、使う気体の違いが品質保持に関わることが伝わります。

著者:Manyasha L. Letsie Ntsoane(Department of Crop Sciences, Tshwane University of Technology)、PhushudI Peter. Tinyane(Department of Crop Sciences, Tshwane University of Technology)、Lucia M. Ntsoane(Institute for Tropical and Subtropical Crops (ITSC), Agricultural Research Council (ARC))、Zinash A. Belay(Post-Harvest and Agro-Processing Technologies (PHATs), Agricultural Research Council (ARC) Infruitec-Nietvoorbij)、Marios Psarianos(Department Systems Process Engineering, Leibniz Institute for Agricultural Engineering and Bioeconomy (ATB))、Oliver Schlüter(Department Systems Process Engineering, Leibniz Institute for Agricultural Engineering and Bioeconomy (ATB))、Oluwafemi James Caleb(AgriFood BioSystems and Technovation Research Group, Africa Institute for Postharvest Technology, Faculty of Agri-Sciences, Stellenbosch University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Manyasha L. Letsie Ntsoane, PhushudI Peter. Tinyane, Lucia M. Ntsoane, et al. Effects of feed gas composition during dielectric barrier discharge cold plasma treatment on physicochemical attributes, total phenolic content, and storability of fresh Tangier figs. Frontiers in Food Science and Technology 2026-09-30. DOI: 10.3389/frfst.2026.1907914. 原著ライセンス:CC BY.