この研究は、フィンランド、ペルー、ドイツの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of the Science of Food and Agriculture

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ルピナスは広く栽培されている豆類で、栄養面の利点からパンなどの焼き菓子への利用が注目されています。一方で、有害なアルカロイドを含むことや、粉としての加工特性(水や油を抱え込む性質、生地のまとまりやすさなど)が十分でないことが、利用拡大の妨げになってきました。

研究チームが注目したのは超音波処理(ソニケーション)です。超音波を当てて分子の構造を変える方法で、環境に配慮した技術とされています。著者らは、超音波処理によってペルー原産のルピナス(Lupinus mutabilis)と欧州のルピナス(L. angustifolius)の粉の加工特性が向上し、小麦パンやグルテンフリーパンに使いやすくなるかを調べました。

何を調べたか

研究チームは2種類のルピナス粉に超音波処理を施し、未処理の粉と比べました。分子構造の変化を赤外分光法で調べたほか、粉が吸収できる水や油の量、生地のこね特性、加熱したときの粘りの変化、食感などを測定しました。

さらに、これらの粉を実際にパンの配合に使いました。小麦パンでは小麦粉の20%(重量比)を、グルテンフリーパンではグルテンフリー粉の10%(重量比)をルピナス粉に置き換えて焼き、品質を比較しています。

主な結果

論文によると、超音波処理した欧州種(L. angustifolius)の粉は、未処理の粉より水を吸収する能力が高くなりました。この粉を使ったグルテンフリーパンでは、膨らみ(体積)、食感、水分の保持が改善しました。これに対し、超音波処理したペルー種(L. mutabilis)では、同じ項目がかえって悪化しました。

小麦パンでは、ルピナス粉を加えると品質が下がりました。著者らは、小麦粉の一部を置き換えたことで、パンの骨格となるグルテンのつながりが薄まったためと説明しています。

グルテンフリーパンでは、ルピナス粉の添加、とくに超音波処理した欧州種の添加によって、まとまりのよさ、弾力、水分保持といった食感に関わる指標が向上しました。研究チームは、超音波処理によってたんぱく質の塊がほどけ、多糖類の鎖が切れることで、グルテンに似た網目状の構造ができた可能性を挙げています。また、超音波処理はでんぷんが加熱で糊状になる過程(糊化)や、冷えて再び硬くなる過程(老化)にも影響し、それによって離水(水分が分離して出てくる現象)や保存性が変化したと報告しています。

研究が示すこと

著者らは、超音波処理は欧州種のルピナス(ブルールピナスとも呼ばれる)の粉をグルテンフリーパンに使いやすくする有望な手段と考えられる一方、その効果は種類によって異なると結論づけています。同じ処理でも、ペルー種では逆効果だったためです。

また、超音波処理がたんぱく質の構造をどのように変えるのかについては理解を深めることが欠かせず、それがさまざまな食品への応用を広げる鍵になるとしています。この研究は、ルピナス粉の性質を超音波で変えられる可能性と、その効果が原料の種類に左右されることを示しています。

著者:Emilia Kärkkäinen(Food Sciences, Department of Life Technologies, Faculty of Technology University of Turku Turku Finland)、Julio Mauricio Vidaurre-Ruiz(Centro de Investigación e Innovación en Productos Derivados de Cultivos Andinos CIINCA Universidad Nacional Agraria La Molina Lima Peru)、Jonas Ehren(Food Technology, Faculty of Horticulture and Food Technology Hochschule Weihenstephan‐Triesdorf Freising Germany)、Angeleth Pacheco(Centro de Investigación e Innovación en Productos Derivados de Cultivos Andinos CIINCA Universidad Nacional Agraria La Molina Lima Peru)、Gloria Jesus Pascual-Chagman(Departamento de Tecnología de Alimentos y Productos Agropecuarios, Facultad de Industrias Alimentarias Universidad Nacional Agraria La Molina Lima Peru)、Jukka‐Pekka Suomela(Food Sciences, Department of Life Technologies, Faculty of Technology University of Turku Turku Finland)、Ritva Repo‐Carrasco‐Valencia(Centro de Investigación e Innovación en Productos Derivados de Cultivos Andinos CIINCA Universidad Nacional Agraria La Molina Lima Peru)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Emilia Kärkkäinen, Julio Mauricio Vidaurre-Ruiz, Jonas Ehren, et al. Effect of sonication on European and Peruvian lupin flours: impact on the technological quality of gluten‐free breads and as a partial substitute for wheat. Journal of the Science of Food and Agriculture 2026-10-09. DOI: 10.1002/jsfa.71111. 原著ライセンス:CC BY.