著者の所属・活動拠点の国は、中国、韓国です。

掲載誌:International Journal of Molecular Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

緑茶や烏龍茶、紅茶、プーアル茶などの「茶」は、すべて同じ植物(チャノキ、学名Camellia sinensis)の葉から作られますが、加工方法の違いによって含まれる成分が大きく変わります。今回紹介する総説論文は、こうした加工の違いに注目しながら、茶に含まれる様々な成分が体重や脂肪代謝にどう関わりうるのかを、細胞実験・動物実験・ヒトでの臨床試験まで幅広く整理したものです。著者らは、これまでの研究では茶が均一な飲み物として扱われがちで、加工によって化学的に別物になった成分の違いや、実験室での効果とヒトでの実際の効果がどこまで一致するのかが曖昧なままだったと指摘しています。

この総説では、茶を萎凋・乾燥のみで最小限の加工にとどめる白茶、加熱して酸化を止める緑茶、部分的に酸化させる烏龍茶、完全に酸化させる紅茶、微生物発酵を経る黒茶(プーアル茶など)の5種類に分類し、それぞれの特徴的な成分を比較しています。白茶と緑茶にはカテキン(エピガロカテキンガレート=EGCGなど)が比較的多く残る一方、烏龍茶や紅茶では酸化の過程でテアフラビンやテアルビジンといった別の物質に変化し、黒茶ではさらに微生物発酵によってテアブラウニンや多糖類などが生まれるとされています。

細胞や動物の実験でわかった仕組み

細胞や動物を使った実験では、茶の成分が消化酵素(膵リパーゼやα-グルコシダーゼなど)の働きを弱めて栄養素の吸収を抑えたり、AMPK(細胞のエネルギーセンサーとされる酵素)を活性化させて脂肪酸の分解を促したり、褐色脂肪組織や白色脂肪組織の「ベージュ化」と呼ばれる熱産生の仕組みに関わったりする様子が報告されています。白茶の抽出物をヒトの脂肪前駆細胞に加えた実験では、中性脂肪の取り込みが減り、脂肪細胞への分化に関わる遺伝子(PPARγ、C/EBPα、SREBP-1cなど)の働きが弱まったとされていますが、この実験では50マイクロモルという濃縮された濃度のEGCGが使われており、普段のお茶を飲む場合と同じ量が体内に届くわけではない点に著者らは注意を促しています。

また、腸内細菌との関わりも詳しく扱われています。動物実験では、Fu brick茶のポリフェノールやEGCGの投与によってAkkermansia muciniphilaという腸内細菌が増え、肥満に関連する体の状態の改善と関連したことが報告されています。ほかにも黒茶やプーアル茶の成分が胆汁酸の代謝経路(FXR、TGR5などの受容体を介する経路)に影響し、短鎖脂肪酸の産生や腸のバリア機能に関わる可能性が示されていますが、著者らは「善玉菌」のような曖昧な表現ではなく、具体的な菌の名前や機能で語るべきだと強調しています。

ヒトでの試験結果は「小さな効果」にとどまる

実際に人を対象にした研究では、効果はかなり控えめだとされています。過体重・肥満の女性を対象にした最近のメタ分析(複数の試験を統合した解析)では、緑茶の摂取により体重が平均で1.23キログラム、ウエスト周囲径が平均で3.46センチメートル、それぞれ減少したと報告されています。ただし対象となった試験の期間は多くが4週間から24週間程度で、特に12週間以内の短中期の試験が中心だったとされ、試験間のばらつき(異質性)も中程度から高いレベルだったとされています。著者らは、この程度の体重減少は、肥満治療で臨床的に意味があるとされる「体重の5%以上の減少」という目安を下回るものであり、統計的に有意であることと臨床的に意味があることは別だと明確に述べています。

個別の試験としては、6か月間にわたり1日3杯の紅茶を摂取した二重盲検試験で、3か月時点では体重やウエスト周囲径にわずかな改善がみられたものの、6か月時点ではその差が維持されなかったとされています。また、過体重・肥満の成人106人を対象にした90日間のLiupao黒茶(プーアル茶に類する後発酵茶)の試験では、体重や血圧、脂質の一部に改善がみられたものの、お茶を飲まない対照群が設定されていなかったため、因果関係の解釈には限界があると著者らは述べています。烏龍茶由来の重合ポリフェノールを使った急性試験(健康な成人50人が参加、100または150ミリグラムを摂取)では、食後の中性脂肪の上昇を明確には抑えられなかったとも報告されています。

安全性と、お茶の淹れ方についての注意

安全性については、欧州食品安全機関の評価が紹介されており、通常の緑茶として飲む分にはカテキンによる安全上の懸念は特にないとされる一方、サプリメントとして1日800ミリグラム以上のEGCGを摂取した場合には血液検査での肝機能値(血清トランスアミナーゼ)の上昇との関連が統計的に確認されたとされています。著者らは、この800ミリグラムという数字を「安全な上限値」と誤解してはいけないと注意を促しています。また、鉄分を含む食事と一緒にお茶を飲むと非ヘム鉄の吸収が大きく妨げられるものの、食事から1時間ずらすことでこの影響が弱まったという安定同位体を用いた試験も紹介されています。

お茶の淹れ方についても触れられており、湯温や浸出時間、茶葉と水の比率、何煎目かによって溶け出す成分の量やバランスが変わるとされています。牛乳を加えると試験管内ではカテキンとタンパク質が結合する様子が確認される一方、実際に紅茶に牛乳を加えても血中のカテキン濃度に有意な差は出なかったとするランダム化クロスオーバー試験も紹介されており、著者らは「薄いお茶」「濃いお茶」を単純に良し悪しで語らず、実際に淹れた飲料の組成を報告すべきだと述べています。

この研究の位置づけ

著者らは、現時点で得られている臨床データは、お茶を肥満そのものへの主要な治療手段とみなすことを支持しないと明言しています。無糖のお茶や成分が標準化された調製品は、あくまで食事療法や運動、行動療法、医学的管理といった根拠に基づく取り組みを補助する位置づけにとどまるとされています。限界としては、カテキンなどの成分が体内に吸収されにくく代謝も速いために全身への到達量が少ないこと、研究ごとに用量や製品が標準化されていないこと、試験期間が短いこと、個人差が大きいこと、茶の種類同士を直接比較した研究が少ないことなどが挙げられています。今後の課題として、実際に体内に届く量を踏まえた現実的な用量設定、淹れたお茶の組成を統一した報告方法、長期試験、腸内細菌の個人差を考慮した個別化アプローチの必要性が指摘されています。

この総説は一つの研究チームによる文献の整理であり、これによって茶と肥満の関係が最終的に結論づけられたわけではない点に留意が必要です。

原著論文の著者・所属:Yi Hu(College of Physical Education, Sichuan Agricultural University, Ya’an 625014, China)、Guoyuan Huang(College of Physical Education, Sichuan Agricultural University, Ya’an 625014, China)、Kwon Soonjae(Department of Taekwondo, Honam University, Gwangju 62399, Republic of Korea)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Yi Hu, Guoyuan Huang, Kwon Soonjae. Tea Bioactive Compounds in Obesity Prevention and Management: Processing-Dependent Composition, Molecular Mechanisms, Human Evidence, and Translational Challenges. インターナショナル・ジャーナル・オブ・モレキュラー・サイエンシズ (2026). DOI: 10.3390/ijms27167203. 原著ライセンス: cc-by.