この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Innovative Technologies in Social Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとした研究か

たんぱく質は、体の組織をつくり修復し、酵素やホルモンをつくるうえで欠かせない栄養素です。著者らによれば、世界保健機関は成人に理想体重1kgあたり1日0.83g以上のたんぱく質を推奨していますが、上限の許容量は定めていません。論文では、標準的な推奨量を超える摂取——おおむね体重1kgあたり1日1.2〜2.2gを超える水準——を「高たんぱく食」と定義しています。

こうした食事は、医療や運動の現場で広く用いられています。著者らは、慢性疾患や悪液質(とくにがんに伴うもの)、整形外科手術後や広範囲熱傷の療養に加え、健康な人が体脂肪を減らしたり筋肉量を増やしたり、満腹感を長持ちさせる目的でも使われていると整理しています。一方で、腎臓にすでに問題を抱える人にとって高たんぱく食が有害でありうることは広く認められているのに対し、健康な人での危険性を示す根拠は限られている、というのが出発点です。そこで著者らは、高たんぱく食が腎臓のろ過機能に及ぼす影響を検討しました。

調べ方と、腎機能をみる指標

この論文は、複数の研究を読み解いてまとめる「ナラティブレビュー(叙述的総説)」です。著者らはPubMedとGoogle Scholarといった電子データベースを検索し、高たんぱく食、たんぱく質摂取量、腎機能、糸球体ろ過量(GFR)などの語とその組み合わせを手がかりに文献を集めました。

腎臓の働きを評価する主な指標として、著者らはGFRとアルブミン尿(たんぱく尿)を挙げています。GFRは腎臓が血液をろ過する能力を表す値で、血液中のクレアチニン濃度に年齢・体重・性別などを組み合わせて推定します。アルブミン尿は、本来は尿にあまり出ないたんぱく質が尿へ漏れ出ている量で、尿中アルブミン/クレアチニン比などで評価されます。論文では、GFRが90 ml/min/1.73 m²を超えれば正常、年齢などを考慮すれば60〜89 ml/min/1.73 m²も正常範囲の一つとされる、と説明されています。また、GFRが60 ml/min/1.73 m²未満の状態が3か月以上続く場合などに慢性腎臓病(CKD)と診断されるとしています。

報告された主な結果

著者らがまとめた研究群では、数か月程度までの短期的な高たんぱく食は「糸球体過剰ろ過」——腎臓のろ過量が一時的に高まる状態——を引き起こしていました。たとえばOmniHeart試験では、前高血圧または第1度高血圧のある健康な成人164人が3種類の食事を6週間続けたところ、たんぱく質を多くした食事では、炭水化物や不飽和脂肪を多くした食事と比べて、シスタチンCに基づく推算GFRがおよそ4 ml/min/1.73 m²有意に上昇したと報告されています。

一方、長期の観察研究では、ろ過機能の低下が示されていました。看護師健康調査では、軽度の腎機能低下がある女性において、たんぱく質摂取量が10g増えるごとに推算GFRが1.69 ml/min/1.73 m²低下する関連がみられましたが、腎機能が正常な人ではこの関連は認められませんでした。グビオ研究(45〜64歳の1522人)では、たんぱく質摂取量が多いほど12年後の推算GFRが低いという関連が、CKDのある人にもない人にも認められたと報告されています。

ただし著者らは、健康な人で高たんぱく摂取が腎障害につながるという説得力のある根拠は見当たらない、とも述べています。Devriesらによる系統的レビューでは、2144件の抄録を検討して28件の研究が選ばれ、腎機能が正常な人では高たんぱく摂取がGFRにほとんど、あるいはまったく影響しないという結果でした。2型糖尿病のある人のような腎機能低下リスクが高い集団でも、そうした関連は観察されなかったとされています。なお、この系統的レビューは1型糖尿病やCKD、たんぱく尿・腎結石の既往といった腎機能障害の徴候がある人を除外している点に留意が必要です。

著者らは、たんぱく質摂取に応じてGFRが高まる能力そのものは「腎機能予備能」と呼ばれる正常な適応のしくみであり、CKD発症の危険因子とはみなされていない、と説明しています。妊娠中にも推算GFRが最大65%増えるという生理的な過剰ろ過が起こりますが、これが慢性腎臓病のリスクを高めるわけではない、という例も挙げられています。他方で、CKDのある人では、高たんぱく食が腎機能の悪化を早め、クレアチニン値などの腎障害の指標を上昇させうると指摘されています。また、動物性たんぱく質の摂取と腎結石の発生との正の関連を示した大規模な前向き研究にも触れ、素因のある人では高たんぱく摂取が結石形成の独立した危険因子になりうるとしています。

この研究が伝えていること

著者らの結論は、条件によって答えが変わる、というものです。CKDのある人にとって高たんぱく摂取が不利に働きうることは広く受け入れられている一方、腎機能が正常な人で観察される過剰ろ過は、負荷ではなく適応反応にすぎない可能性がある、と整理されています。腎臓には多数のネフロン(腎臓の機能単位)が余裕をもって備わっているため、食事だけで腎障害が起こることは多くの人では考えにくく、一般集団にとって高たんぱく食は害よりも益が大きいように見える、というのが論文の見方です。

同時に著者らは、高たんぱく食とCKD発症との関係は、インスリン抵抗性やメタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧を介している部分が大きいかもしれない、と述べています。つまり「たんぱく質そのもの」だけを見るのでは足りない、ということです。健康な集団を対象とした大規模で長期の無作為化試験や、2型糖尿病や肥満といった併存症のある人に的を絞った長期試験が必要だという指摘も、この総説がはっきりと残した課題です。

著者:Monika Kułaga(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Krzysztof Tyszkiewucz(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Anna Kasprzak(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Monika Grzybek(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Diana Mazur-Lesińska(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Barbara Szostak(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Sylwia Wielgosz-Biała(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Borys Łozowski(Independent Public Clinical Hospital No 4 in Lublin, Doktora Kazimierza Jaczewskiego 8, 20-954 Lublin, Poland)、Małgorzata Kasprzak(Stefan Cardinal Wyszyński Provincial Specialist Hospital SPZOZ in Lublin, al. Kraśnicka 100, 20-718 Lublin, Poland)、Barbara Wilczyńska(University Children's Hospital in Lublin, Profesora Antoniego Gębali 6, 20-093 Lublin, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Monika Kułaga, Krzysztof Tyszkiewucz, Anna Kasprzak, et al. THE IMPACT OF HIGH-PROTEIN DIETS ON RENAL FUNCTION: A COMPREHENSIVE REVIEW. International Journal of Innovative Technologies in Social Science 2026-09-25. DOI: 10.31435/ijitss.3(51).2026.5792. 原著ライセンス:CC BY.