パンや麺の原料となる小麦粉を作るとき、小麦の外皮部分である「ふすま(麦の表皮や胚芽の部分)」は大量に副産物として出てきます。ふすまは食物繊維やミネラル、ビタミン、そして体に働きかけるとされる成分(バイオアクティブ化合物)を豊富に含む、安価で手に入りやすい素材です。しかし独特の食感や風味の問題から、パンなどの主原料にそのまま多く混ぜるのは難しいとされてきました。今回紹介する研究は、この小麦ふすまを酵素や発酵といった「バイオプロセス」で処理することで、性質を改善し、機能性パン(健康に配慮した特徴を持たせたパン)づくりに活用できないかを調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、小麦ふすまに対して、キシラナーゼという酵素と、乳酸菌の一種であるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、そしてパン酵母(baker's yeast)を、単独あるいは組み合わせて処理する実験が行われました。
その結果、キシラナーゼ酵素・乳酸菌・パン酵母の3つを組み合わせて処理したふすまが、単独処理を行った場合と比べて、栄養価やフェノール含量(植物由来の抗酸化成分の指標とされるもの)、水抽出性アラビノキシラン(食物繊維の一種で機能性が注目される成分)の値がもっとも高くなったと報告されています。
さらに、この処理済みふすまを小麦粉の一部(15%未満)と置き換えてパン生地を作ったところ、生地のレオロジー特性(伸びやすさや弾力性といった物理的な扱いやすさ)が改善したとされています。加えて、出来上がった食パンについても、栄養価、フェノール含量、抗酸化活性、そして焼き上がり後の鮮度が向上したことが示されたとのことです。
研究チームは、乳酸菌とパン酵母による固体発酵にキシラナーゼ処理を組み合わせる方法が、小麦ふすまの栄養面・機能面の特性を高め、機能性食品づくりに役立つ効率的な技術であると結論づけています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、酵素処理と発酵という手法を組み合わせることで、廃棄されがちな副産物である小麦ふすまの価値を高められる可能性を示したものです。ただし、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。今回の要旨からは、実験の詳細な条件や、どの程度の量で効果が確認されたかといった細部までは分かりません。また、ここで示された変化は実験室レベルでの評価であり、実際の商品としてのパンの味や食感、健康への効果を保証するものではない点にも留意が必要です。
まとめ
小麦粉づくりの副産物である小麦ふすまに、酵素と乳酸菌・酵母による発酵処理を組み合わせることで、栄養価やフェノール含量、アラビノキシラン量が高まり、パン生地やパンの品質改善にもつながる可能性が示されたことがこの研究のポイントです。食品廃棄物の有効活用と、機能性食品開発という2つのテーマがつながる興味深い研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:機能性パン製造への応用に向けた潜在的バイオプロセスを用いた小麦ふすまの特性改善(フード・セーフティ・アンド・ヘルス・2025年07月)