妊娠中に血糖値が高くなる「妊娠糖尿病(GDM)」は、母体だけでなく赤ちゃんの健康にも影響しうることが知られており、予防につながる要因として食事の質が注目されています。ただし、どのような食事パターンがGDMのリスクと関連するのかは、まだ十分にわかっていません。今回紹介する研究では、肥満予防の観点から食事の質を数値化する「食事性肥満予防スコア(Dietary Obesity-prevention Score, DOS)」という指標を使い、妊婦のGDMリスクとの関連を調べています。

この研究は、中国の9つの医療機関で実施された前向きコホート研究で、1,894人の妊婦を対象としています。参加者の食事内容は「3日間・24時間思い出し法」という方法で把握され、6つの食品グループをもとにDOSが算出されました。研究チームは、複数の要因を考慮した統計モデル(多変量ロジスティック回帰)に加え、スコアを構成する食品ごとの分析、対象者を条件で分けたサブグループ解析、非直線的な関係を調べる手法(制限付き3次スプライン)を組み合わせて、DOSとGDMリスクの関連を検討しました。

わかったこと:全体では関連なし、一部の妊婦では関連あり

対象者全体で見ると、DOSとGDMリスクの間に統計的に明確な関連は見られませんでした(オッズ比0.944、95%信頼区間0.879〜1.015)。また、DOSとエネルギー摂取状況との間の交互作用も統計的に有意ではありませんでした(交互作用のp値=0.193)。

一方、探索的なサブグループ解析では、エネルギー摂取が不足している妊婦に限ると、DOSが高いほどGDMリスクが低い傾向が見られました(オッズ比0.867、95%信頼区間0.773〜0.973)。

さらに、スコアを構成する食品ごとの分析では、モデルから果物の項目を除くと当てはまりの良さが有意に悪化したことから(尤度比検定、p<0.001)、果物の摂取がこの関連に一定の役割を果たしている可能性が示唆されました。果物摂取量そのものとGDMリスクとの関連は、境界域ながら逆相関の傾向が見られ(50g/1,000kcalあたりのオッズ比0.905、95%信頼区間0.817〜1.001、p=0.053)、DOSが中程度の群では統計的に有意な関連(オッズ比0.783、p=0.041)、DOSが高い群では境界域の関連(オッズ比0.828、p=0.049)がそれぞれ報告されています。

加えて、エネルギー摂取が不足している妊婦の中で果物摂取量とGDMリスクの関係を詳しく見たところ、単純な直線的な関係ではなく(非直線性のp=0.048)、1日あたり約400gまではリスクが低下し、それ以降は横ばいになるという傾向が見られました。ただし、1日600gを超える範囲はデータが少なく信頼区間が広がっており、著者らはこの400gという数値について、確定的な基準ではなく、あくまで探索的な観察結果として扱うべきだと述べています。

この研究を読むうえでの注意点

この研究は、GDMリスクと食事の質との関連を示唆するものですが、いくつかの留意点があります。まず、全体集団ではDOSとGDMリスクに明確な関連が見られておらず、関連が認められたのはエネルギー摂取が不足している妊婦というサブグループに限られます。また、著者ら自身が述べている通り、これらのサブグループ解析や果物摂取量に関する分析結果は探索的なものであり、今回の一つの研究だけで結論が確定したわけではなく、独立した別のコホートでの確認が必要とされています。

さらに、この研究は観察研究であるため、DOSや果物摂取とGDMリスクとの間に統計的な関連が見られたとしても、それが直接の因果関係を意味するものではない点にも注意が必要です。

まとめ

今回紹介した研究では、中国の妊婦を対象に、肥満予防の観点からの食事の質を示すDOSとGDMリスクとの関連が検討されました。対象者全体では明確な関連は見られなかったものの、エネルギー摂取が不足している妊婦では、食事の質が高いことがGDMリスクの低さと関連しており、その背景に果物摂取が関わっている可能性が示唆されています。ただし、これらは探索的な結果であり、著者らも独立した研究での検証が必要だとしています。今後、他の集団でも同様の関連が確認されるかどうかが注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食事性肥満予防スコアと妊娠糖尿病リスクとの関連:探索的サブグループ解析(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)