著者の所属・活動拠点の国は、中国、マレーシアです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ドリアンは独特の香りで知られる熱帯果実ですが、呼吸が盛んでエチレン(果実の成熟を進める植物ホルモン)を多く出すため、収穫後の日持ちが短い果物です。過熟、果皮の割れ、微生物による傷み、風味の劣化が早く進み、遠方への流通の妨げになっています。

二酸化硫黄(SO2)は果物や野菜の保存に広く使われる添加物で、微生物を抑える働きがあることが知られています。一方、ドリアンの風味に与える影響や、果皮表面にすむ微生物の集団(微生物群集)をどう変えるかはよく分かっていませんでした。研究チームは、SO2処理がドリアンの品質、香り成分、果皮の真菌(カビや酵母の仲間)の群集、防御に関わる酵素にどう影響するかを総合的に調べ、病気への抵抗性が高まる仕組みの手がかりを探りました。

どのように調べたか

研究チームは、品種「モントーン」の市販熟度のドリアンを使いました。まず室温での予備試験として、果皮を1%、2%、3%のSO2でくん蒸して比較しました。その結果、2%で真菌の数が最も少なくなりました。2%処理では、保存5日目以降の果肉のSO2残留量が1kgあたり10mg未満となり、中国農業農村部の基準を満たしたと報告されています。

本試験では、密閉箱の中で果実を2%のSO2に30分間さらした後、14℃、相対湿度80%で保存しました。処理しない果実と比べ、0、5、10、15日目に、呼吸速度、エチレンの発生量、重量の減少、果肉の硬さと色、ビタミンC(アスコルビン酸)などを測定しました。

さらに、においのもとになる揮発性成分を、ガスクロマトグラフィー・イオン移動度分光法(GC-IMS)という分析法で調べました。果皮を洗った水から集めた真菌については、遺伝子の一部を大量に読み取る高スループットシーケンシングで種類と割合を解析しました。あわせて、果肉中の防御関連酵素の働きも測りました。

主な結果

SO2処理をした果実では、呼吸速度が5日目にいったん高まりました。しかし10日目以降は、処理しない果実より有意に低くなりました。エチレンの発生も5日目には処理果実のほうが高かったものの、論文の要旨では15日目に抑えられていたとまとめられています。15日目の重量減少率は、処理しない果実の約15.8%に対し、処理した果実は約11.9%でした。処理した果実では、保存中盤まで果肉が硬く保たれ、10日目以降は果肉の明るさや黄色みが保たれていました。ビタミンCの減り方も緩やかでした。

香りの分析では、合わせて51種類の揮発性成分が見つかり、主なものはエステル類、硫黄化合物、アルコール類、アルデヒド類でした。著者らによると、SO2処理した果実では、ドリアンのフルーティーな香りのもとになるエステル類が強まり、硫黄を含む揮発性成分は弱まりました。また、アルファ-テルピネン、ベンジルアルコール、2-デカノン、2-ヘプチルフランといった成分の信号も強まりました。これらは他の研究で抗酸化作用や抗菌・抗カビ作用が報告されている成分で、著者らは病気への抵抗性に寄与している可能性があると考えています。

果皮の真菌の解析では、処理しない果実で保存初期に真菌群集の構成が大きく揺れ動きました。一方、SO2処理した果実では、その変動が小さく抑えられていました。全期間を通じて共通して見られた真菌の型は、処理しない果実の6に対し、処理した果実では9でした。酵母の一種メイエロジマ属(Meyerozyma)の割合は、処理しない果実では5日目に約35%まで下がりました。これに対し、処理した果実では約77〜84%で安定していました。また、処理した果実では、アルテルナリア属(Alternaria)とバーティシリウム属(Verticillium)の割合が5日目に、モエシジオミセス属(Moesziomyces)の割合が5日目と10日目に低下しました。さらに、カタラーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼといった防御関連酵素の働きも高まったと報告されています。

研究が示すこと

この研究は、2%のSO2くん蒸がドリアンの呼吸や重量減少を抑え、色や硬さ、ビタミンCを保つ一方で、香り成分の構成や果皮の真菌群集にも変化をもたらすことを示しました。著者らは、抗菌性をもつ香り成分、真菌群集の移り変わり、防御関連酵素の働きが組み合わさって、ドリアンの病気への抵抗性を高めている可能性があると考えています。ただし、これらの仕組みはあくまで可能性として示されたものです。この成果は、収穫後のドリアンの保存にSO2を使う際の科学的な根拠の一つとして位置づけられています。

原著論文の著者・所属:Shuangdi Hou(Key Laboratory of Postharvest Physiology and Storage of Agricultural Products, Institute of Agricultural Products Preservation and Processing Science and Technology, National Engineering Technology Research Center for Preservation of Agricultural Product, Tianjin Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Tianjin 300384, China)、Xia Wang(College of Food Science and Nutritional Engineering, China Agricultural University, Beijing 100091, China; Key Laboratory of Postharvest Physiology and Storage of Agricultural Products, Institute of Agricultural Products Preservation and Processing Science and Technology, National Engineering Technology Research Center for Preservation of Agricultural Product, Tianjin Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Tianjin 300384, China)、Hui Liu(China Packing Research & Test Center, Tianjin 300457, China)、Phebe Ding(Department of Crop Science, Faculty of Agriculture, Universiti Putra Malaysia (UPM), Serdang 43400, Selangor, Malaysia)、Xian Ji(Key Laboratory of Postharvest Physiology and Storage of Agricultural Products, Institute of Agricultural Products Preservation and Processing Science and Technology, National Engineering Technology Research Center for Preservation of Agricultural Product, Tianjin Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Tianjin 300384, China)、Xiaoshuan Zhang(Sanya Research Institute of China Agricultural University, Sanya 572000, China)、Zhiqiang Zhu(Key Laboratory of Postharvest Physiology and Storage of Agricultural Products, Institute of Agricultural Products Preservation and Processing Science and Technology, National Engineering Technology Research Center for Preservation of Agricultural Product, Tianjin Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Tianjin 300384, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shuangdi Hou, Xia Wang, Hui Liu, et al. Effects of Sulfur Dioxide on Disease Resistance and Storage Quality of Durian (Durio zibethinus L.): A Comprehensive Analysis Integrating GC-IMS, HTS, Physiological and Biochemical Parameters. Foods 2026-10-08. DOI: 10.3390/foods15193574. 原著ライセンス:CC BY.