著者の所属・活動拠点の国は、リトアニア、ギリシャ、エストニア、トルコ、オランダ、オーストリア、マルタ、クロアチア、スウェーデン、スロバキア、ラトビア、イタリア、アルバニア、スペイン、デンマーク、ドイツ、イギリス、フランス、ブルガリア、北マケドニア、キプロス、スイス、アルメニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、ポーランドです。

掲載誌:British Journal Of Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ヨーグルトやチーズ、パン、ワイン、ビール、コーヒー、チョコレートなど、微生物の働きを利用して作られる発酵食品は、ヨーロッパの食生活に深く根付いています。しかし、ヨーロッパ全体で人々がどの発酵食品をどれくらい口にしているのかを、同じ基準でまとめたデータはほとんどありませんでした。著者らによれば、これまでの研究は特定の食品や一国の調査に限られることが多く、発酵食品の定義や1回分の量の扱いも研究ごとにばらついていました。

そこで研究チームは、欧州の研究協力プログラム「PIMENTO(発酵食品のイノベーション推進)」のもとで、発酵食品の摂取を調べるための専用の質問票「3FQ」を開発しました。今回の論文は、この質問票を用いて、ヨーロッパの地域ごとに発酵食品を食べる人の割合と食べる量を描き出し、地域間の違いを明らかにすることを目的としています。

何をどのように調べたか

調査は2023年10月から2024年5月にかけてオンラインで行われ、ヨーロッパ53か国に住む18歳以上の成人1万2646人が回答しました。国々はEUの分類に基づき、北欧、南欧、西欧、中東欧の4地域に分けられています。質問票は英語で作成されたのち27の言語に翻訳され、各国の身近な食品例が示されるよう工夫されました。

調べた対象は、発酵乳製品、発酵させた穀物製品(パンなど)、発酵野菜、発酵させた豆類、発酵させた肉・魚製品、チョコレート、コーヒー、ワイン、ビール・サイダー、蒸留酒、酢、発酵茶、ココア飲料、ノンアルコールの発酵飲料、植物性の肉・乳製品代替品の15分類です。回答者はまず各分類を食べるかどうかに答え、食べる場合には頻度と、写真を見ながら選んだふだんの1回量を答えました。この頻度と量から1日あたり、または1週間あたりの摂取量が計算されています。

参加者は主にウェブサイトやSNS、メールでの呼びかけで集められ、不足する性別・年齢層はオンラインのパネル調査で補われました。分析では、地域・性別・年齢層ごとの実際の人口構成に近づくよう重み付けが行われています。なお、この研究は摂取の実態を記述するためのもので、発酵食品が健康にどう影響するかや因果関係を調べるようには設計されていない、と著者らは明記しています。

主な結果

最も広く食べられていたのは発酵乳製品で、どの地域でも回答者の94.1〜95.6%が食べていました。15分類のうち、食べる人の割合に統計的に意味のある地域差がみられなかったのは発酵乳製品だけでした。食べる人に限った1日の摂取量の中央値は、中東欧の66.7グラムから西欧の80.1グラムまででした。

発酵させた穀物製品も89.9〜95.9%、コーヒーも78.4〜84.1%と、多くの人が口にしていました。食べる人の1日の摂取量の中央値は、穀物製品が44.0〜77.1グラム、コーヒーが60.0〜73.1ミリリットルでした。チョコレートも大半の人が食べており、1週間あたりの摂取量は西欧と中東欧で138.8グラム、北欧で76.0グラムと報告されています。

お酒では、ワインの1日の摂取量が中東欧の12.5ミリリットルから西欧の25.0ミリリットル、ビール・サイダーが中東欧の25.0ミリリットルから西欧の50.0ミリリットルと、地域による差がみられました。

一方、食べる人の割合と量が必ずしも一致しない例も目立ちました。発酵野菜は約9割の人が食べていながら、1日の量は4.4〜8.4グラムとわずかでした。植物性の代替品は西欧で72.8%の人が食べていたものの、量の中央値は1週間に25.5グラムにとどまり、他の地域では中央値が0でした。反対に、ノンアルコールの発酵飲料は飲む人の割合が18.3〜49.3%と低めでしたが、飲む人に限ると1週間に18.7〜49.8ミリリットルを飲んでいました。発酵茶は飲む人の割合が最も低い分類(33.8〜44.3%)でした。

食品科学や栄養学の知識を持つ回答者を除いて分析し直しても、多くの分類で地域差は残っていたと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、発酵食品を「食べる人がどれだけいるか」と「食べる人がどれだけ食べるか」は分類ごとに別々に変動しており、両方を見ることで初めて人々が発酵食品にどう触れているかを捉えられると述べています。そのうえで、ヨーロッパ全体を見渡した今回の調査から、地域による大きな違いが浮かび上がったとしています。

論文は、こうした違いを正しく把握するには、各国で共通の方法による食事調査の仕組みを整え、発酵食品の摂取データの空白を埋める必要があると結論づけています。今回の地図づくりは、発酵食品と健康の関係を今後調べていくための土台となる実態の記録として位置づけられています。

著者:Michail Syrpas(Kaunas University of Technology)、Theodoros Smiliotopoulos(Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens)、Signe Adamberg(Tallinn University of Technology)、Kaarel Adamberg(Tallinn University of Technology)、Duygu Ağagündüz(Gazi Universitesi)、Elske Maria Brouwer-Brolsma(Wageningen University)、Johanna Burtscher(BOKU University)、Mario Caruana Grech Perry(University of Malta)、Marija Cerjak(University of Zagreb)、Konstantinos Chandolias(RISE Research Institutes of Sweden AB)、Zuzana Ciesarová(National Agricultural and Food Centre)、I. Ciproviča(Latvia University of Life Sciences and Technologies Food Institute)、Francesca De Filippis(University of Naples Federico II)、Etleva Delia(Agricultural University of Tirana)、Yiannis Frestis(National and Kapodistrian University of Athens)、Amparo Gamero(University of Valencia)、Hristo Hristov(Institute of Nutrition)、Daniel Borch Ibsen(Aarhus University)、Doris Jaros(Technische Universität Dresden)、Håvard Jenssen(Roskilde Universitet)、Petra Jones(University of Malta)、Anastasia Z. Kalea(University College London)、Zeynep Kalyoncu(Sağlık Bilimleri Üniversitesi, TR)、Vaida Kitrytė(Kaunas University of Technology)、Marta Laranjo(Mediterranean Institute for Agriculture Environment and Development)、Victoria Meslier(INRAE)、Niki Myrintzou(Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens)、Nóra Emilia Nagybákay(Kaunas University of Technology)、Gjore Nakov(Technical University of Sofia)、Daniela Nikolovska Nedelkoska(University “St. Kliment Ohridski”-Bitola)、Christos Pafilas(Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens)、Photis Papademas(Cyprus University of Technology)、Foteni Pavli(University of Malta)、Kathryn Jane Pimentel(Agroscope)、Davit Pipoyan(National Academy of Sciences of Armenia, AM)、Terhi A. Pohjanheimo(Aistila Ltd)、Igor Pravst(Institute of Nutrition)、Harald Rohm(Technische Universität Dresden)、Pasquale Russo(University of Milan)、Irzada Taljić(University of Sarajevo)、Biljana Trajkovska(University “St. Kliment Ohridski”-Bitola)、Sonja Umićević(University of Banja Luka)、Guy Vergères(Agroscope)、Bojana B. Vidović(University of Belgrade)、Andjela Vukojevic(University of Belgrade)、Małgorzata Wronkowska(Polish Academy of Sciences, Institute of Animal Reproduction & Food Research)、Christophe Chassard(INRAE)、Effie Tsakalidou(Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens)、Emmanuella Magriplis(Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Michail Syrpas, Theodoros Smiliotopoulos, Signe Adamberg, et al. Mapping fermented food prevalence and intake across European regions: results from the Promoting Innovation of Fermented Foods (PIMENTO) study. British Journal Of Nutrition 2026-10-15. DOI: 10.1017/s0007114526108563. 原著ライセンス:CC BY.