7月2日ごろ、暦の上で「半夏生(はんげしょう)」と呼ばれる日がある。この日にたこを食べる風習が各地に残っているが、なぜよりによって「たこ」なのだろうか。単なる語呂合わせのように語られることもあるが、薬膳・東洋医学的な食の知恵と結びつけて考えると、たこにしょうがを添える組み合わせにはもう一つの見方が見えてくる。
そもそもまだこは、たこ類の中で最も多く出回る食材であり、行事の食卓にも定着しやすかったのかもしれない。
「涼」のたこに、「温」のしょうがを添える
薬膳・東洋医学の考え方では、食材にはそれぞれ体を温めるか冷やすかという性質(五性)があるとされる。たこは五性「涼」、つまり体を穏やかに冷やす側の食材とされる。一方、しょうがは五性「温」に分類され、体を温める側とされている。ここで思い出したいのが、たこ焼きに欠かせない紅しょうがだ。冷やす側のたこに、温める側のしょうがを添えるという取り合わせは、味のアクセントというだけでなく、性質の異なる食材を合わせて釣り合いをとる薬膳的な発想とも重なる。半夏生にたこを食べる際も、しょうが醤油や酢しょうがを添えてみると、味わいだけでなく食の知恵としての筋も通る一皿になる。
ゆでだこと生だこ、栄養で見る違い
まだこ(皮つき・生)は100gあたりエネルギー70kcal、たんぱく質16.1g。これは日本人の食事摂取基準における女性30〜49歳のたんぱく質推奨量50g/日の約32%にあたる。高たんぱく・低脂質(脂質0.9g)の食材として、夏の食卓にもっておきたい一品だ。
一方まだこ(ゆで)になると、たんぱく質は21.7gまで上がり、同じ基準の約43%に達する。ゆでることで水分が抜け、たんぱく質が凝縮された値になっているとみられる。エネルギーは91kcalと生よりやや高い。脂質は生が0.9g、ゆでが0.7gといずれも控えめで、食塩相当量は生1gに対しゆで0.6gだった。あっさりとした一皿になりやすい食材だとわかる。
選び方と下処理のひと手間
半夏生の献立でたこを扱うときは、見分け方も知っておくと安心だ。生だこは吸盤の吸いつきがよいものを、ゆでだこは弾力のあるものを選ぶとよいとされる。また、たこの足の先には細菌が多く含まれているため、調理の際は必ず先端を切り落としてから使うことが勧められている。ちょっとした手間だが、安全に一皿を楽しむための大切な作法だ。
まとめ
半夏生にたこを食べる風習は、単なる語呂合わせにとどまらない見方もできる。冷やす側とされるたこに、温める側とされるしょうがを添えるという、性質の異なる食材を合わせる薬膳的な発想がその背景にあるのかもしれない。たこ焼きの紅しょうがも、そう思って見るとまた違った表情を見せてくれる。今年の半夏生は、たこにしょうがを添えて、たんぱく質もしっかり補いながら、先人が積み重ねてきた食の知恵に思いを馳せてみてはどうだろうか。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
※特定の食品の効果を示すものではありません。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準