ニガウリ(ゴーヤ)は独特の苦味を持つ野菜として知られていますが、その栽培には土壌の養分バランスが大きく関わっているといわれています。特に傾斜地を段々に整えた「テラス土壌」のような農地では、作物が必要とする微量要素が不足しがちになることがあります。今回紹介する研究は、こうしたテラス土壌において、マグネシウム(Mg)・亜鉛(Zn)・ホウ素(B)という3つの要素を組み合わせて施肥した場合に、ニガウリの生育や収量、品質、養分の利用効率にどのような変化が見られるかを調べたものです。
研究チームは、Mg・Zn・Bの施肥量を段階的に変えた9通りの組み合わせを用意し、乱塊法という統計的な手法で3回繰り返す圃場試験を行いました。施肥なしの対照区(T1)から、Mgを4または8kg/ha、Znを3または4kg/ha、Bを1.5または2kg/haの範囲で組み合わせたT2〜T9まで、計9つの処理区が比較されています。
研究でわかったこと
最も施肥量の多い組み合わせであるMg8・Zn4・B2 kg/ha(T9)の区では、市場で販売可能な果実の収量が1ヘクタールあたり14.8トンとなり、これは無施肥の対照区と比べて98%多い結果だったと報告されています。またT9の区では、生育の状態や収量に関わる各種の指標、そして品質面でも他の処理区より優れた値を示したとされています。
品質に関しては、T9の区でビタミンCの含有量が100gあたり64.9mg、ベータカロテンの含有量が100gあたり151マイクログラムと、いずれも最も高い値が記録されました。さらに、収穫後4日間の保存試験では、T9の区で果実の重量減少が抑えられる傾向が見られたとのことです。
養分の面では、T9の区で窒素・リン・カリウム・硫黄・カルシウム・マグネシウム・亜鉛・ホウ素といった多様な養分の蓄積量や吸収量が最大になったと報告されています。ただし、施肥したMg・Zn・Bそのものがどれだけ効率よく作物に取り込まれたかを示す「見かけの回収効率」については、一定の傾向が見られなかった(inconsistentだった)とされている点は注意が必要です。経済性の面では、T9の区が1ヘクタールあたり2405米ドルという最も高い粗利益を生み出したとも述べられています。また、収穫後の土壌分析では、栽培前と比べて化学性がわずかに改善していたことも示されています。
これらの結果から、研究チームはMg8・Zn4・B2 kg/haという組み合わせが、ニガウリの収量・品質・養分利用効率・収益性を高めるうえで最適な施肥戦略になり得ると結論づけています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究はテラス土壌という特定の条件下での圃場試験に基づくものであり、他の土壌条件や気候、栽培品種でも同様の結果が得られるかどうかは、この要旨だけからは判断できません。また、Mg・Zn・Bの回収効率が一定でなかったという記述もあり、施肥と養分吸収の関係が単純ではないことも示唆されています。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読むことが大切です。
まとめ
今回の研究では、テラス土壌で栽培したニガウリに対し、マグネシウム・亜鉛・ホウ素を組み合わせて施肥することで、収量やビタミンC・ベータカロテンといった品質指標、さらには収益性においても良好な結果が得られたことが報告されています。今後、こうした知見がどのように応用されていくのか、続報が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:テラス土壌におけるニガウリの生育・収量・品質・養分利用効率に対するマグネシウムと微量要素の複合効果(ディスカバー・プランツ・2026年08月)