年齢を重ねると筋肉量や筋力が徐々に低下し、「サルコペニア」と呼ばれる状態に至ることがあります。これは中高年以降の健康に関わるテーマとして関心が高まっていますが、食事とどう関わるのかはまだ十分にわかっていません。特に、玄米や豆類、緑黄色野菜、海藻類などに多く含まれる栄養素「マグネシウム」との関連については、これまでの研究で結果が一致していませんでした。今回紹介する研究は、マグネシウムの摂取量だけでなく、マグネシウムを豊富に含む食品パターン全体をスコア化し、両者とサルコペニアとの関連を、慢性炎症という切り口も交えて調べたものです。

研究でわかったこと

この研究は、韓国国民健康栄養調査(2022〜2024年)のデータを用いた横断研究で、50歳以上の成人3,830人が対象とされました。食事の摂取状況は24時間思い出し法という方法で調べられ、さらに全粒穀物、ナッツ・豆類、緑黄色野菜・海藻類、豆乳、コーヒーの摂取量をもとに「マグネシウム豊富な食事スコア」が算出されました。

食事の質など複数の要因を調整したうえで分析した結果、マグネシウム摂取量が最も多いグループ(女性で1日351mg以上、男性で1日442mg以上)は、最も少ないグループと比べてサルコペニアのオッズが約53%低いという関連が示されました(オッズ比0.47)。同様に、マグネシウム豊富な食事スコアが最も高いグループも、最も低いグループと比べてサルコペニアのオッズが約50%低いという関連が認められました(オッズ比0.50)。これらの関連は、マグネシウム摂取量が100mg/日増えるごと、また食事スコアが1点増えるごとにも一貫して見られたとされています。

さらにこの研究では、慢性炎症の指標である高感度CRP(hsCRP)が、これらの関連の一部を媒介している可能性も示されました。具体的には、マグネシウム摂取量と筋肉量の関連の7.3%、マグネシウム豊富な食事スコアと筋肉量の関連の18.1%、同スコアと筋力の関連の8.6%が、hsCRPを介した経路によって説明され得ると報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、ある一時点でのデータを分析した横断研究であるため、マグネシウム摂取や食事パターンが「原因」でサルコペニアが「結果」として起こりにくくなる、という因果関係を証明するものではありません。あくまで、両者の間に統計的な関連が見られたという報告であり、一つの研究として結論が確定したわけではない点に留意が必要です。また、対象は韓国在住の50歳以上の成人であり、他の集団にそのまま当てはまるとは限りません。

まとめ

今回紹介した研究では、韓国の中高年成人を対象に、マグネシウム摂取量およびマグネシウムを豊富に含む食事パターンとサルコペニアとの間に、統計的な逆相関があることが示唆されました。また、その関連の一部には慢性炎症が関わっている可能性も示されています。今後さらに研究が積み重ねられることで、マグネシウムと筋肉の健康との関係についての理解が深まることが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:韓国中高年成人におけるマグネシウム摂取量およびマグネシウム豊富な食事スコアとサルコペニアの関連:C反応性タンパクによる媒介の可能性(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)