著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Animal Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
霊山鶏は中国・広西の在来品種で、やわらかな肉質と豊かな風味で評価されています。一方で、市販の成長の速いブロイラーに比べて育つまでに時間がかかり、飼料を体重に変える効率も低いとされます。肉質の良さを保ちながら成長や飼料効率を高めることが、この品種の課題です。
研究チームが注目したのは、キク科の植物タカサブロウ(Eclipta prostrata)の地上部を乾燥させた伝統的な生薬「墨旱蓮(Ecliptae herba)」です。この生薬にはクメスタン類、トリテルペン類、フラボノイド類など多様な成分が含まれ、免疫調節や抗酸化などの作用が報告されています。ただし著者らによれば、家畜・家禽の飼育での利用は分かっていませんでした。そこで本研究では、粉末にした墨旱蓮を飼料に混ぜる量を変え、49日間の飼育で霊山鶏の成長、肉質、腸内細菌、腸内の代謝物がどう変わるかを調べました。
どのように調べたか
生後60日の健康な霊山鶏72羽を4つのグループに無作為に分けました。1グループは3つの囲いで構成され、1つの囲いに6羽ずつ入れています。基本の飼料だけを与えるグループと、墨旱蓮の粉末を0.2%、0.4%、0.6%加えた飼料を与えるグループを比べました。粉末は飼料の成分を置き換えず、上乗せする形で加えています。
成長については、最終体重、1日あたりの体重増加量、1日あたりの飼料摂取量に加え、飼料要求率を調べました。飼料要求率は体重を1増やすのに必要な飼料の量を示し、値が小さいほど少ない飼料で効率よく育ったことを意味します。肉質は胸肉ともも肉で調べ、肉の色、つるしたときに出る水分による重量の減少(ドリップロス)、加熱による重量の減少(加熱損失)などを測りました。
さらに、成長と肉質で一貫して改善が見られた0.4%のグループと基本飼料のグループを選び、盲腸の内容物を分析しました。細菌の遺伝子を読み取って腸内細菌の構成を調べ、含まれる多数の代謝物も網羅的に測定しています。
主な結果
0.4%と0.6%のグループでは、基本飼料のグループより最終体重と1日あたりの体重増加量が大きく、飼料要求率は小さくなりました。最終体重の平均は基本飼料のグループが約1914グラムだったのに対し、0.4%のグループは約1954グラム、0.6%のグループは約1962グラムでした。飼料要求率は5.92から、それぞれ5.59と5.51に下がっています。一方、飼料の摂取量はグループ間で差がありませんでした。著者らは、食べる量が増えたのではなく、飼料の利用効率が高まったことで成長が改善したと考えています。0.2%のグループでは、こうした差は見られませんでした。
肉質では、0.4%と0.6%のグループで、胸肉ともも肉のどちらでもドリップロスと加熱損失が小さくなりました。もも肉では赤みを示す値も高くなっています。胸肉の色や、肉のやわらかさを示す指標などには差がありませんでした。
腸内細菌を調べると、2つのグループには302種類の共通する細菌の配列型があり、片方にしか見られないものはわずかでした。著者らはこれを、中心となる細菌群が保たれていたと解釈しています。一方で、細菌群集の全体的な構成は2つのグループで異なっていました。0.4%のグループでは、バチルス属などが増えました。逆に、カンピロバクター門や、炎症と関連するとされる属は減っていました。代謝物の分析では、0.4%のグループで109種類が増え、93種類が減っていました。変化した代謝物は、アミノ酸の合成、タンパク質の消化と吸収、植物由来成分の合成に関わる経路に多く集まっていました。
この研究が示すこと
この研究は、墨旱蓮を飼料に0.4〜0.6%加えると、霊山鶏の成長効率と肉質の一部の指標が改善したことを報告しています。また0.4%のグループでは、腸内細菌の構成と腸内の代謝物にも変化が測定されました。ただし、こうした腸内の変化が飼料効率や成長の改善に結びついているかどうかは、まだ確かめられていません。著者らは両者の間に関連がある可能性を示唆していますが、特定の細菌と代謝物の間の直接的な統計的な相関は計算しておらず、推定した関係はさらなる検証が必要な仮説だとしています。因果関係も確立されていません。代謝経路の変化も、タンパク質の消化や吸収が実際に高まったことを直接示すものではないとされています。肉質の改善が抗酸化作用によるという見方も、筋肉の酸化の指標は測定されておらず、推測の段階です。
著者らは、この結果を墨旱蓮が天然の飼料添加物として家禽生産に使える可能性を支える科学的な根拠と位置づけています。在来鶏の持ち味を保ちながら育てやすさを高める手がかりとして、生薬の利用を検討した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Yulian Xi(Guangxi Vocational University of Agriculture)、Yifei Xiang(College of Animal Science and Technology, Guangxi University)、Minyu Chen(Guangxi Vocational University of Agriculture; Sitang Town Animal Husbandry, Veterinary and Aquatic Products Station, Youjiang)、Chaojie Yang(Xilin County Agriculture Bureau, Baise, China)、Shishan Qin(Guangxi Vocational University of Agriculture)、Mingxu Zhou(Guangxi Vocational University of Agriculture)、Xiangyun Hu(Guangxi Vocational University of Agriculture)、Bing Zhang(Guangxi Vocational University of Agriculture)、Ruifang Liu(College of Animal Science and Technology, Northwest A&F University)、Peng Xiao(Guangxi Vocational University of Agriculture)、Mengjiao Chen(Guangxi Vocational University of Agriculture; Sitang Town Animal Husbandry, Veterinary and Aquatic Products Station, Youjiang)、Junli Sun(Guangxi Vocational University of Agriculture)、Wenjing Li(Guangxi Zhuang Autonomous Region Veterinary Drug Inspection Institute, Guangxi Zhuang Autonomous Region Feed Monitoring Institute, Guangxi Zhuang Autonomous Region Livestock Product Quality Inspection Center, Ministry of Agriculture and Rural Affairs Livestock Product Inspection Center (Nanning))、Jieping Huang(College of Animal Science and Technology, Guangxi University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yulian Xi, Yifei Xiang, Minyu Chen, et al. Dietary Ecliptae herba improved growth performance and meat quality possibly associated with gut microbiota and metabolomic changes in Lingshan chickens. Frontiers in Animal Science 2026-09-30. DOI: 10.3389/fanim.2026.1937601. 原著ライセンス:CC BY.