この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Brazilian Journal of Microbiology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
リステリア・モノサイトゲネスは、冷蔵庫の温度でも増えることができる食中毒菌です。欧州の機関による2021年の監視活動では、この菌による病気(リステリア症)は、動物と人の間で共通してみられる感染症のうち4番目に多く報告されました。致死率が高く、最も重い部類の病気とされています。特に乳児や免疫の弱い人では注意が必要です。加熱せずにそのまま食べる「調理済み食品」のうち、酸性度が中性に近く水分の多いものでは、この菌が増えやすいと考えられています。
ブラジルの研究チームは、こうした性質を持つ魚加工品として、白身魚のすり身から作るカニ風味かまぼこ(カニカマ)と、スライスしたスモークサーモンに注目しました。ブラジルではカニカマはすべて輸入品で、スモークサーモンも原料は輸入されています。一方、国内の魚加工品でこの菌がどの程度見つかるかについての疫学データは知られていませんでした。
そこで著者らは、市販の冷凍品にリステリア属菌(衛生状態の目安となる菌の仲間)とリステリア・モノサイトゲネスがどれだけ含まれているかを調べました。あわせて、消費者が購入後に冷凍せず冷蔵庫で保管した場合に何が起きるかも調べました。また、乳酸菌など食品にもともといる他の菌との関係も検討しました。
どのように調べたか
研究チームは2021年10月から2022年7月にかけて、リオデジャネイロ市とその周辺の店で、賞味期限内の冷凍品を購入しました。カニカマは人気の3銘柄から72検体、スモークサーモンは3銘柄から48検体で、合計120検体です。同じロットの包装を複数買い、購入直後に分析するものと、未開封の真空包装のまま5℃で冷蔵してから分析するものに分けました。冷蔵期間は、カニカマが7日と15日、スモークサーモンが30日です。
菌の検出には、国際規格に基づく培養法(菌を培地で増やして確かめる方法)と、遺伝子を検出するPCR法の両方を使いました。リステリア属菌は培養法とPCR法で調べました。リステリア・モノサイトゲネスは、菌種を見分けるリアルタイムPCR法で調べています。さらに、1グラムあたりの菌数も数えました。
主な結果
カニカマもスモークサーモンも、すべての銘柄で、購入直後の時点から少なくとも1検体でリステリア属菌が見つかりました。リステリア属菌が陽性だった検体は、カニカマでは72検体中、培養法で17検体(23.6%)、PCR法で33検体(45.8%)でした。スモークサーモンでは48検体中、培養法で16検体(33.3%)、PCR法で27検体(56.2%)でした。著者らは、PCR法の方が少ない汚染も検出できたと報告しています。
病原菌であるリステリア・モノサイトゲネスは、カニカマ72検体中21検体(29.2%)で検出されました。内訳は購入直後が4検体、7日冷蔵後が7検体、15日冷蔵後が10検体で、冷蔵期間が長いほど陽性検体が多くなっていました。スモークサーモンでは48検体中23検体(47.9%)が陽性で、内訳は購入直後が12検体、30日冷蔵後が11検体でした。著者らは、冷凍状態で売られていた段階でもこの菌が高い割合で見つかったことを指摘しています。
菌数で見ると、リステリア・モノサイトゲネスの平均値は、カニカマとスモークサーモンのどちらでも、ブラジルなどで基準とされる1グラムあたり100個(2 log CFU/g)を超えませんでした。しかし検体ごとに見ると、カニカマでは11検体がこの値を超え、最大で3.2 log CFU/gに達していました。スモークサーモンでも、この値を超える検体が購入直後に3検体、30日冷蔵後に4検体ありました。また、スモークサーモンのリステリア属菌の菌数は、30日冷蔵した後に統計的に有意に多くなっていました。
カニカマは真空包装したまま加熱殺菌される製品で、汚染は起こりにくいと考えられてきました。そのため著者らは、今回陽性の検体が多かったことを予想外の結果としています。郊外のスーパーでは、一部のカニカマが解凍された状態で売られていました。包装に「解凍後はすぐに食べきる」という注意書きがあったのは1銘柄だけでした。なお、乳酸菌はカニカマでは非常に少なく、スモークサーモンでは冷蔵中に増えました。ただし、乳酸菌とリステリアの関係は確認できませんでした。
研究が示すこと
この研究は、ブラジルで売られている冷凍のカニカマとスモークサーモンから、リステリア・モノサイトゲネスがかなりの割合で見つかったことを報告しています。また、購入後に冷蔵保存すると、陽性の検体や菌数が増える場合があることも示しました。著者らはこの結果から、製造工程や流通時の温度管理に不備があった可能性を指摘しています。そして、包装の表示どおりに低温管理を守ることが重要だと結論づけています。
著者:Mayara S. Tavares(Food Microbiology Laboratory, Department of Food Technology, Federal Rural University of Rio de Janeiro, 23.897-970 Seropédica, Rio de Janeiro, Brazil. [email protected])、Patrícia G. Paulino(Poultry Health Laboratory, Department of Epidemiology and Public Health, Federal Rural University of Rio de Janeiro, 23.897-970 Seropédica, Rio de Janeiro, Brazil)、Daniele S. Juliano(Poultry Health Laboratory, Department of Epidemiology and Public Health, Federal Rural University of Rio de Janeiro, 23.897-970 Seropédica, Rio de Janeiro, Brazil)、Roberto Laureano‐Melo(Department of Physiological Sciences, Institute of Biological and Health Sciences Federal Rural University of Rio de Janeiro, Seropédica, Rio de Janeiro, 23897000, Brazil)、Huarrisson Azevedo Santos(Poultry Health Laboratory, Department of Epidemiology and Public Health, Federal Rural University of Rio de Janeiro, 23.897-970 Seropédica, Rio de Janeiro, Brazil)、Rosa Helena Luchese(Food Microbiology Laboratory, Department of Food Technology, Federal Rural University of Rio de Janeiro, 23.897-970 Seropédica, Rio de Janeiro, Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mayara S. Tavares, Patrícia G. Paulino, Daniele S. Juliano, et al. How safe from Listeria monocytogenes are frozen ready-to-eat fish products, either cooked or smoked, when stored under refrigeration after purchasing?. Brazilian Journal of Microbiology 2026-10-05. DOI: 10.1007/s42770-026-02103-7. 原著ライセンス:CC BY.