著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:発酵はササゲの多糖をどう変えるのか

ササゲ(英名カウピー)は世界各地で食べられている豆の一種で、これを納豆菌で発酵させた「ササゲ納豆」は、何らかの機能性をもつ可能性がある発酵豆食品とされています。一方で、発酵によってササゲに含まれる多糖(糖が多数つながった大きな分子)がどう変わるのかは、十分に分かっていませんでした。

そこで研究チームは、ササゲを納豆菌(Bacillus subtilis natto)で発酵させ、発酵前のササゲから取り出した多糖と、発酵後のササゲ納豆から取り出した多糖を比べました。あわせて、発酵後の多糖から一つの成分を精製し、その構造と、試験管内(in vitro)で示す性質を調べています。

何を調べたか

研究チームはまず、発酵前のササゲ(論文中の略称はJD)と発酵後のササゲ納豆(JD-F)から多糖を抽出し、得られる量や組成を比較しました。続いて、発酵後の多糖から性質のそろった単一の多糖を分離・精製し、JDFE1-Fと名付けました。

この多糖について、分子の大きさ、どの種類の糖でできているか、糖どうしがどの位置でつながっているかを、メチル化分析や核磁気共鳴(NMR)分光法といった分析手法で調べました。

さらに、二つの性質を試験管内で評価しました。一つは、でんぷんを分解する消化酵素であるα-アミラーゼの働きをどれだけ妨げるかです。もう一つは、消化を助ける胆汁の成分である胆汁酸を、どれだけ結びつけて捕まえられるかです。胆汁酸としては、グリコデオキシコール酸ナトリウムとタウロデオキシコール酸ナトリウムの2種類が用いられました。

主な結果

抄録によると、発酵によって多糖の収量は35.60%増加しました。精製したJDFE1-Fは、重量平均分子量が5.175 kDaと比較的小さな多糖で、構成する糖の98.22%がグルコース(ブドウ糖)でした。

構造解析からは、JDFE1-Fの骨格が主にα型のグルコースが4位で次々につながった鎖でできており、6位で枝分かれする箇所は限られていることが報告されています。枝の部分には末端のグルコースのほか、ごく一部にグルコースとアラビノースという別の糖がつながった構造も含まれていました。精製後のJDFE1-Fの総炭水化物含量は85.12%でした。

α-アミラーゼについては、酵素の働きを半分に抑えるのに必要な濃度(IC50)が、JDFE1-Fでは1ミリリットルあたり2.668ミリグラムでした。この値は発酵前のササゲの多糖(JD)よりも統計的に有意に低く、より少ない量で酵素の働きを抑えたことを意味します。

胆汁酸の結合については、1ミリリットルあたり4ミリグラムの濃度で、JDFE1-Fはグリコデオキシコール酸ナトリウムの58.09%、タウロデオキシコール酸ナトリウムの60.79%を結合しました。グリコデオキシコール酸ナトリウムの50%を結合するのに必要な濃度は、JDFE1-FのほうがJDより有意に低い結果でした。一方、タウロデオキシコール酸ナトリウムの結合については、比較した3種類の多糖の間に有意な差はみられませんでした。

この研究が示すこと

著者らは、納豆菌による発酵がササゲの多糖の収量を高め、その組成や試験管内での機能的な性質の変化と関連していたとまとめています。また、JDFE1-Fの分子量の小ささ、グルコース中心の組成、枝分かれをもつα-グルカン構造が、今回観察された試験管内での働きと関係している可能性があると述べています。

ただし、これらはいずれも試験管内での結果であり、構造と働きの関係や、体内での意味合いについては、さらに調べる必要があると論文自体が位置づけています。今回の研究は、発酵がササゲの多糖にどのような違いをもたらすのかを理解するための基礎となる知見といえます。

著者:Jinyi Yu(Innovation Center for Comprehensive Utilization of Food and Medicine Homologous Specialty Resources Wuhan China)、Mengyue Xu(Innovation Center for Comprehensive Utilization of Food and Medicine Homologous Specialty Resources Wuhan China)、Hui Li(Innovation Center for Comprehensive Utilization of Food and Medicine Homologous Specialty Resources Wuhan China)、Enzhao Yan(Innovation Center for Comprehensive Utilization of Food and Medicine Homologous Specialty Resources Wuhan China)、Huifang Niu(Innovation Center for Comprehensive Utilization of Food and Medicine Homologous Specialty Resources Wuhan China)、Qin Liu(Hubei Province Engineering Research Center for Legume Plants Wuhan China)、Hongxing Zhang(Innovation Center for Comprehensive Utilization of Food and Medicine Homologous Specialty Resources Wuhan China)、Hongbo Wang(Hubei Province Engineering Research Center for Legume Plants Wuhan China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jinyi Yu, Mengyue Xu, Hui Li, et al. Structural Characterization and In Vitro α ‐Amylase Inhibitory and Bile Acid‐Binding Properties of a Glucan Isolated From Fermented Cowpea Natto. Food Science & Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.1002/fsn3.72456. 原著ライセンス:CC BY.