ぬめりのある食感と鮮やかな緑色が特徴のオクラ(生)は、高齢期に気になる骨密度や筋力、免疫維持を意識した食卓に取り入れやすい野菜のひとつです。特別な調理をしなくてもさっと使えるうえ、成分表の数字を見るとその意外な充実ぶりに驚かされます。毎日の食事に小さな習慣として加えることで、さまざまな栄養素をコツコツと食事に加えていける野菜です。
骨・筋力・免疫で注目したい栄養素
骨の健康を語るとき、カルシウムは欠かせない成分です。最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)によれば、70歳以上の女性のカルシウム推奨量は1日600mg、男性は700mgとされています。野菜でこの量を丸ごと補うことはできませんが、継続的に上乗せしていく積み重ねに意義があります。
筋肉の維持には、たんぱく質を構成するアミノ酸の質と量が関係します。筋肉合成のスイッチに関わるとされる分岐鎖アミノ酸(BCAA)のひとつ、ロイシンの働きは栄養科学の分野でよく研究されている話題です。また、骨の石灰化を支えるビタミンKも、高齢期の骨代謝を考えるうえで注目される成分として知られています。
免疫の維持という観点では、粘膜の健康に関わるβ-カロテン(体内でビタミンAに変換される成分)と、葉酸・ビタミンCといった水溶性ビタミンが食生活の中で継続的に摂られることが大切です。
オクラの数字を読み解く
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」に収録されたオクラ(生)の実測値(可食部100gあたり)を見ると、その成分の顔ぶれは豊かです。
- カルシウム 92mg――野菜の中では際立った数値。乳製品には及ばないものの、毎日数本を続けることで確実に積み上げられます。
- マグネシウム 51mg――カルシウムとともに骨の構成に関わるミネラルです。
- ビタミンK 66µg――骨たんぱく質の活性化に関与するとされる成分。ゆでたオクラ(ゆで)でも八訂収載値では66µgとなっており、加熱によるロスがほぼ見られません(八訂収載値。加熱条件等により変動する場合があります)。
- β-カロテン 520µg(生)/530µg(ゆで)――脂溶性のため油と合わせると体内利用効率が高まることが一般的に知られています。
- 葉酸 110µg――生・ゆでともに同値。細胞分裂や免疫細胞の維持にも関わる水溶性ビタミンです。
- ロイシン 99mg(生)――アミノ酸の中でも筋たんぱく質合成に関わるとされる成分。オクラ(生)は八訂アミノ酸成分表の収載値でアミノ酸組成計1,700mgとなっており、ロイシンをはじめとする必須アミノ酸をしっかり含んでいます。
- 食物繊維総量 5.0g(生)――そのうち水溶性が1.4g、不溶性が3.6g。あのぬめりの正体は、ペクチンなどの水溶性食物繊維と、ムチラゲと呼ばれる多糖類・糖タンパク質成分によるもので、腸内環境のサポートに関わるとされます。不溶性食物繊維は消化管の動きを助ける性質で知られています。
ゆでたオクラ(ゆで)はビタミンCが生の11mgから7mgに減少しますが、植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収を助けるとされるビタミンCは、生のまま和え物にする方法で補いやすくなります(オクラの鉄は0.5mg・生)。より詳しい成分はオクラ(生)の詳細ページとオクラ(ゆで)の詳細ページでご確認ください。
毎日の食事への取り入れ方
高齢者にとって大切なのは、無理なく続けられる「量より頻度」の習慣です。オクラ(生)は1本あたり約10gほどなので、5本(約50g)を目安に毎日食べれば、カルシウムは約46mg、ビタミンKは約33µgを継続的に積み上げられます。
- 油と合わせる:β-カロテンの体内利用を高める一般的な方法として、オリーブオイルで炒めたり、ごまあえにしたりする方法があります。
- 生で薄切りに:ビタミンCを損なわずとる方法として、薄切りにしてかつお節・ポン酢であえる「生オクラの和え物」がシンプルで手軽です。
- たんぱく質と組み合わせる:豆腐や納豆、ちりめんじゃこと合わせると、カルシウムとたんぱく質の両方を一皿で意識しやすくなります。ちりめんじゃこはビタミンDも含み、カルシウムの骨への利用に関わる成分として知られています。
- 冷凍活用:下ゆでしたオクラ(ゆで)を冷凍ストックしておくと、汁物やとろみ付けに毎日少量ずつ加えることができ、継続のハードルが下がります。
まとめ
一見地味に見えるオクラ(生)ですが、成分表の数字はカルシウム92mg・ビタミンK 66µg・葉酸110µg・食物繊維5.0gと、骨・筋力・免疫を意識したい高齢期の食卓に重なるポイントをいくつも持っています。毎日5本を食卓の脇役として置く習慣を、今日から始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。