マヨネーズは多くの料理に使われる人気の調味料ですが、脂肪分やコレステロールの多さから、血中脂質が高めの人や体重管理を気にする人にとっては悩ましい存在でもあります。今回紹介する研究では、卵を使わずにコレステロールフリーとし、さらに脂肪分も減らしたマヨネーズを、チアシードから得られる粘液質(ねばりのある多糖成分)と乳由来のホエイタンパク質を使って作り、通常の全脂マヨネーズとどれくらい近い食感・風味・品質が得られるかを調べています。
研究でわかったこと
研究チームは、チアシード粘液質を0.5〜1%、ホエイタンパク質を5〜10%配合した「ライトマヨネーズ」を複数パターン試作し、卵を使った通常のマヨネーズ(コントロール)と比較しました。その結果、新しい配合のマヨネーズは、乳化の安定性が98.91〜99.08%と、コントロールの57.42%を大きく上回りました。乳化安定性とは、油と水分が分離せずになめらかな状態を保てる度合いを指し、マヨネーズらしい質感を保つうえで重要な指標です。
粘度(8185〜9657cp、コントロールは8610cp)や、とろみの指標である稠度(0.73、コントロールは0.65)、硬さ(147.8〜198.2、コントロールは110)、粘着性(1991〜2170mJ、コントロールは1850mJ)についても、新配合の方が高い値を示したと報告されています。それでいて、コントロールと比べてカロリーは22%以上削減されたとのことです。
さらに、新配合は水分含量が27.95〜29.56%と、コントロールの15.21%より多く、これが粘度の高さとあわせて、パネリスト(官能評価を行う試食者)による評価スコアの向上(4.45〜4.55、コントロールは3.85)につながったと考えられています。研究チームは、これはクリーミーさや新鮮さが感じられたためではないかと推測しています。こうした食感の良さは、タンパク質と多糖類が結びつく際に生じる静電的な相互作用(電気的な引き合い)によるものとされ、コントロールと同等かそれ以上の食感を生み出したと分析されています。
見た目については、色を測定するハンター・ラボ法という手法を用いた分析で、新配合は明るさ(光の反射の仕方の違いによるもの)、黄色み(油分が少ないため)、赤み(卵黄を使っていないため)のいずれもコントロールより低い値を示しました。また、酸化の指標となる過酸化物価は、新配合の方が低い値(3.3〜3.74meq O2/kg)となり、コントロールの5.86meq O2/kgを下回ったと報告されています。一方で、水分量が多いことに伴い、カビの発生がやや多く見られたものの、保存期間の終わりまで、食品衛生上許容される上限値(10の2乗CFU/g)は下回っていたとされています。
これらの結果から、研究チームは、ホエイタンパク質5%とチアシード粘液質0.5〜1%を組み合わせた配合が、技術的な品質と健康面への配慮を両立させたライトマヨネーズとして活用できる可能性があるとまとめています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の配合条件のもとで行われた品質評価や官能評価の結果であり、一つの研究として得られた知見です。日常的な食生活の中でこの配合のマヨネーズがどのような影響を及ぼすかについては、要旨の中で直接言及されていません。また、官能評価は限られた人数のパネリストによるものと考えられ、風味や食感の感じ方には個人差があることにも留意が必要です。マヨネーズの脂肪やコレステロールを減らす工夫として興味深い成果ですが、これをもって特定の健康効果が保証されたり、症状の改善や予防につながると断定されているわけではありません。
まとめると、チアシード粘液質とホエイタンパク質を使うことで、卵を使わずに脂肪分を抑えつつ、乳化の安定性や食感、官能評価の点で通常のマヨネーズに匹敵する、あるいはそれを上回るとされる結果が得られたという研究です。低脂肪・卵不使用の調味料開発における一つの選択肢として、今後さらに検討が重ねられていく分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:チアシード粘液質とホエイタンパク質による低脂肪・コレステロールフリーマヨネーズの開発:品質パラメータと官能特性(フード・サイエンス・アンド・ニュートリション・2026年06月)