著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、ニュージーランドです。

掲載誌:Forest Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜニューカレドニアのキノコを調べたのか

南西太平洋に浮かぶニューカレドニアは、生物多様性が特に豊かな地域として知られています。その評価は主に植物に基づいており、約3,200種の維管束植物のうち74%がこの地域だけに見られる固有種です。菌類についても、近年の遺伝子を使った研究で非常に多様なことが分かり始めていますが、まだ多くが調べられていません。

野生のキノコは世界各地で食べられています。ただし、どの地域でどんなキノコが食べられているかという知識には大きな偏りがあり、オセアニアは特に情報が乏しい地域です。ニューカレドニアでは、住民が食べている野生キノコについての研究がこれまで一つもありませんでした。そこで研究チームは、住民が食べている在来のキノコの種類を初めて一覧にすることを目的に調査を行いました。

聞き取りとDNA分析を組み合わせた調べ方

研究チームは「民族菌類学」と呼ばれる手法を用いました。人々がキノコをどう認識し、どう利用しているかを、本人への聞き取りから明らかにする方法です。2021年10月から2022年8月にかけて、主にキノコが発生する時期に、大まかな質問の柱だけを決めて自由に話してもらう形式の面接を行いました。

質問の柱は四つでした。食べているキノコの地元での呼び名や見分け方、採れる場所や時期などの基本情報。味の好みや保存法、料理法。分け合いや販売の習慣。そして薬としての利用や、キノコにまつわる神話・伝説・物語です。対象者は主に研究者の友人や家族、同僚、地元の菌類学会の会員など、研究者と直接または人を介してつながりのある人たちでした。

可能な場合は、回答者と一緒に野外でキノコを採取しました。キノコの組織からDNAを取り出し、種の判別に使われる遺伝子の領域を読み取って既存のデータベースと照合することで、種類をより正確に特定しようとしました。

主な結果:少なくとも19種が食べられていた

調査は22人を対象に計20回行われました(同じ世帯の3人は一緒に面接)。回答者は20歳から78歳までで、職業も農家、鉱山労働者、料理教師、研究機関の技術者、歯科医、記者などさまざまでした。住んでいる、または出身の市町村は14にのぼり、本島の北から南まで、さらにイル・デ・パン、マレ、リフーといった周辺の島々にも及びました。著者らは、回答者の間では野生キノコを食べる習慣が地域を問わず広く共有されていることがうかがえるとしています。

聞き取りの結果、少なくとも19種の食用キノコが挙がりました。中でも特によく食べられていたのは、キクラゲの仲間、アンズタケの仲間(シャントレル)、草地に生えるハラタケの仲間、ヒラタケの仲間の四つのグループです。味の面では、複数の種類を食べる人の多くがアンズタケの仲間を最も好み、「キノコの王様だ」と語る人もいました。採ったキノコは主に自分や家族で食べ、親類や友人とも分け合っていました。市場で売る人や、米やコーヒーなど他の食品と物々交換する人もわずかにいました。

採取できたのは、よく食べられる四つのグループのうちキクラゲ、アンズタケ、ヒラタケの三つと、二種類のイグチ(傘の裏がひだではなくスポンジ状のキノコ)でした。DNAを取り出した47試料のうち44試料で遺伝子の読み取りに成功しました。キクラゲの仲間は二つのグループに分かれ、野外での見た目から別の種と考えられていた1試料が、実際には別の種に近いことが分かりました。アンズタケの仲間も二つのグループに分かれ、一つはニューカレドニア固有種のCantharellus garnieriiと確認されました。もう一つは見た目から別の固有種と同定されましたが、比較できる遺伝子データがないため、DNAによる確認はできていません。

ヒラタケの仲間の配列は、ニュージーランドのヒラタケの一種Pleurotus parsonsiaeと99.6〜100%一致しました。この種はPleurotus djamorという種のまとまり(複合種群)に属するかもしれないとする先行研究があることから、著者らはこの複合種群の呼び名を用いることにしたと述べています。二種類のイグチは既知の種とは十分に一致せず、論文では科学的にまだ記載されていない新種の可能性があると報告されています。

このほか、聞き取りではキノコを薬として使う例が2件語られました。いずれも標本は採取されておらず、種は特定されていません。また、キノコと結びついた小さな超自然的存在の話や、子どもが森に入るときに怖がらせるための物語なども記録されました。

この研究が示すこと

著者らによれば、この研究はニューカレドニアで食べられている野生キノコの初めての一覧です。わずか20回の聞き取りから少なくとも19種が挙がったことは、この地域で食べられているキノコの多様さを示しています。国連食糧農業機関の資料ではオセアニアで食用と記録された野生キノコはごく限られており、著者らはこの調査によって、この地域で食べられていると知られる種の数がほぼ倍になったと述べています。

一方で著者らは、今回の結果は初期的な探索であり、それぞれのキノコがどれほどの頻度や量で食べられ、暮らしや経済にどの程度関わっているかを評価するには、数量的な調査が必要だとしています。人々の暮らしの知恵とDNA分析を組み合わせることで、身近に食べられてきたキノコの中にも、まだ名前のない種が含まれている可能性が見えてきました。

原著論文の著者・所属:Fabian Carriconde(Institut Agronomique néo-Calédonien (IAC), Équipe Sol & Végétation (SolVeg), Nouméa 98800, New Caledonia)、Alexis Guerin-Laguette(Mycotree C/- Southern Woods Nursery, 1002 Robinsons Road, RD8, Christchurch, 7678, New Zealand)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fabian Carriconde, Alexis Guerin-Laguette. Edible wild mushrooms of New Caledonia: an unsuspected richness with a great potential. Forest Systems 2026-10-14. DOI: 10.5424/fs/2026352-21063. 原著ライセンス:CC BY.