この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
この総説は、食物アレルギーの予防を「アレルギーを起こしやすい食べ物を避けること」とだけとらえる考え方を見直し、妊娠の成立からおよそ生後24か月までの「最初の1000日」という期間に注目してまとめられたものです。著者らは、この期間を出生前・周産期(出産前後)・出生後という時期に分け、それぞれの時期にどのような要因が関わるのかを整理することを目的としています。
著者らは本稿を、イタリア小児アレルギー・免疫学会(SIAIP)の委員会が提案する臨床的な枠組みとして位置づけており、正式な診療ガイドラインや合意声明ではないと明記しています。
どのように整理したか
著者らは、既存のガイドライン、系統的レビュー、ランダム化比較試験、出生コホート研究(生まれた子どもを長期間追跡する研究)、そしてしくみを調べた基礎的研究から得られた知見を集め、発達の時期ごとに並べ直しました。整理にあたっては、評価指標が妥当か、他の要因の影響が混ざっていないか、実行しやすいか、臨床の現場で使える段階にあるか、という観点から解釈したと述べています。
出生前の要因としては、母親がアレルゲンとなる食品を避けないこと、食事全体の質、微量栄養素や脂肪酸の状態、抗菌薬の使用、環境、母親の細菌叢が挙げられています。周産期の要因としては、分娩の方法、分娩中や新生児期の抗菌薬、妊娠週数の成熟度、生後早期の細菌の定着、母乳育児の開始、定期予防接種が挙げられています。出生後の要因としては、湿疹と皮膚バリアの炎症、アレルゲンを食べ始める時期とその継続性、母乳育児の進め方、乳児期の食事の多様さ、きょうだい、保育所、ペット、喫煙や大気汚染、身体活動、そして誰もが実行できる形での普及が挙げられています。
主な報告と、その意味
著者らによれば、実際の行動に結びつく根拠がもっとも強いのは、湿疹があることをリスクの手がかりとして認識すること、そしてピーナッツとよく加熱した卵を適切な時期から口から与え、それを続けることの二点です。
一方で、母親側の要因や環境の要因も臨床的には重要だとしつつ、その多くは「こうすべき」と一律に指示する性質のものではなく、状況に応じて考える文脈的なものだと著者らは述べています。そのため、これらは制限を課したり保護者を責めたりする助言ではなく、リスクを決めつけるようなレッテル貼りでもない形で、相談の材料として用いるべきだとしています。
最初の1000日という時期に働く要因は、食事、皮膚などの上皮バリアの健全さ、細菌の生態、免疫の成熟、そして家庭で実際に続けられるかどうかが互いに関わり合っています。この総説は、そうした複数の要素を時期ごとに見渡しながら、確かな根拠のある実践と、状況に応じて考えるべき事柄とを区別して示した点に意味があります。
著者:Angela Klain(Department of Woman, Child and General and Specialized Surgery, University of Campania ‘Luigi Vanvitelli’, 80138 Naples, Italy)、Salvatore Cascone(Department of Woman, Child and General and Specialized Surgery, University of Campania ‘Luigi Vanvitelli’, 80138 Naples, Italy)、Carolina Grella(Department of Woman, Child and General and Specialized Surgery, University of Campania ‘Luigi Vanvitelli’, 80138 Naples, Italy)、Valentina Cattivera(Department of Pediatrics, University of L’Aquila, 67100 L’Aquila, Italy)、Cecilia Fabiano(Department of Pediatrics, University of L’Aquila, 67100 L’Aquila, Italy)、Francesca Galletta(Pediatric Unit, Department of Human Pathology in Adult and Developmental Age ‘Gaetano Barresi’, University of Messina, 98124 Messina, Italy)、Sara Manti(Pediatric Unit, Department of Human Pathology in Adult and Developmental Age ‘Gaetano Barresi’, University of Messina, 98124 Messina, Italy)、Antonio Andrea Senatore(Pediatric Clinic, Fondazione IRCCS Policlinico, 27100 Pavia, Italy)、Amelia Licari(Pediatric Clinic, Fondazione IRCCS Policlinico, 27100 Pavia, Italy)、Michele Miraglia del Giudice(Department of Woman, Child and General and Specialized Surgery, University of Campania ‘Luigi Vanvitelli’, 80138 Naples, Italy)、Gian Luigi Marseglia(Pediatric Unit, Department of Clinical, Surgical, Diagnostic and Pediatric Sciences, University of Pavia, 27100 Pavia, Italy)、Cristiana Indolfi(Department of Woman, Child and General and Specialized Surgery, University of Campania ‘Luigi Vanvitelli’, 80138 Naples, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Angela Klain, Salvatore Cascone, Carolina Grella, et al. Prenatal, Perinatal and Postnatal Exposures and Clinical Factors of Food Allergy Prevention: A Review for the First 1000 Days of Life from the SIAIP Primary and Secondary Prevention of Allergic Diseases Commission. Nutrients 2026-08-22. DOI: 10.3390/nu18172749. 原著ライセンス:CC BY.