著者の所属・活動拠点の国は、ペルー、チリです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
生産大国なのに国内ではあまり食べられていない
キヌア、キウィチャ(アマランサスの一種)、カニウア、タルウィ(ルピナス豆の一種)といったアンデス地域の穀物は、たんぱく質や必須アミノ酸、食物繊維を多く含み、厳しい気候や土壌でも育つことから、国連食糧農業機関(FAO)にも重要な食料として認められてきました。ペルーはこれらの世界最大の生産国・輸出国です。一方で、著者らによると、国内での消費は「たまに食べる」程度にとどまることが多く、生産力と日々の食生活のあいだに食い違いがあります。
研究チームは、ペルーの消費者がアンデス穀物をどのように買い、どのくらいの頻度で食べ、何を理由に選び、何が妨げになっているのかを、まとめて調べた研究はこれまでなかったと指摘しています。そこで本研究では、購買と消費の実態、購入理由と動機、障壁を明らかにし、それらが出身地域の文化的背景、年齢層、性別によってどう違うかを検討しました。
若者を中心とした1074人へのオンライン調査
調査は2024年にオンラインのアンケートで行われ、過去6か月以内にアンデス穀物を食べたことがあるペルー在住のペルー人1074人が回答しました。回答者は集めやすい範囲から募る方法(便宜的サンプリング)で集められ、81.2%が25歳以下、多くが大学関係者という若い集団です。そのため著者らは、結果をペルーの消費者全体を代表するものとして受け取るべきではないと明記しています。
「文化的背景」は、回答者が生まれた、あるいは主に育った地域をもとに、伝統的なアンデス山岳地域、都市化した沿岸地域、アマゾン地域の三つに分けて扱いました。これは、穀物の産地にどれだけ地理的に近いところで育ったかを示す目安であり、本人の文化的な帰属意識を直接測ったものではないと論文は説明しています。
分析では、まず各項目の回答の割合を集計し、次に出身地域・年齢層・性別と、購入頻度・購入場所・主な障壁・消費頻度との関連を、統計的な検定(カイ二乗検定)で調べました。関連の強さも数値で示し、効果の大きさを小・中程度・大に分けて評価しています。
「健康によい」と思っていても、買うのはたまに
購入も消費も「ときどき」という回答が最も多く(購入47.0%、消費42.6%)、購入頻度が高い人は27.9%、消費頻度が高い人は32.4%にとどまりました。食べ方は、穀物をそのまま買って家で調理する形が47.3%で最も多く、加工品が42.2%で続きました。購入場所は地域の市場が36.4%で最も多く、市場と近所の店を合わせた身近な購入先が58.7%を占めました。
食べている穀物はキヌアが79.3%と突出し、キウィチャ47.0%、カニウア31.1%、タルウィ7.9%の順でした。著者らは、カニウアやタルウィが少ないのは栄養価の差ではなく、市場での目にしやすさやなじみの差と関係している可能性があると考察しています。
購入理由は「栄養がある」(63.6%)と「自然な食品である」(46.2%)が上位で、食べる動機も「栄養価」(56.9%)と「健康」(56.7%)がほぼ並びました。三番目には「文化的アイデンティティ」(21.8%)が挙がり、栄養面だけでなく、伝統や郷土とのつながりとしての意味も持たれていることがうかがえます。
一方、食べるうえでの障壁は「価格が高い」(30.7%)、「調理法を知らない」(26.9%)、「時間がない」(21.4%)が上位で、この三つで回答の79.0%を占めました。「味が好きではない」は7.9%で最も少ない回答でした。
育った地域によって買い方も障壁も違う
12通りの組み合わせのうち9つで統計的に意味のある関連が見られ、関連の強さは小〜中程度でした。なかでも出身地域は、調べた四つの行動すべてと関連しており、最も一貫した要因でした。アンデス山岳地域の出身者は購入頻度の高い人の割合が37.3%で、沿岸都市部の21.2%を上回りました。購入先では、オーガニック市や生産者からの直接購入といった「代替的な購入経路」を主に使う人が、アンデス出身者では26.1%と、沿岸都市部の9.7%より多くなっていました。沿岸都市部の人は、近所の店(26.8%)やスーパーマーケット(23.8%)をより多く利用していました。主な障壁は、アマゾン地域(40.0%)とアンデス地域(34.3%)では価格が最も多かったのに対し、沿岸都市部では価格と時間不足が同じ割合(いずれも27.3%)で並びました。
年齢層では31歳以上で購入頻度の高い人の割合が55.7%と最も高く、性別では女性の購入頻度の高い人の割合(32.1%)が男性(22.6%)より高い結果でした。ただし性別は、購入場所、障壁、消費頻度とは関連が見られませんでした。
この研究は一時点の調査であり、示されたのは関連であって原因と結果の関係ではありません。出身地域による違いがなじみや習慣、周囲の影響、入手のしやすさのどれによるのかも、今回のデータからは判断できないと著者らは述べています。それでも、栄養や健康への評価が高いにもかかわらず日常的な消費につながっていないこと、そしてその背景に価格・調理の知識・時間という具体的な障壁があり、その現れ方が育った地域によって異なることを、若い消費者のデータで示した点にこの研究の意味があります。
原著論文の著者・所属:Dany Yudet Millones-Liza(Escuela Profesional de Administración, Facultad de Ciencias Empresariales, Universidad Peruana Unión, Lima 15102, Peru)、Elizabeth Emperatriz García-Salirrosas(Faculty of Management Science, Universidad Autónoma del Perú, Lima 15842, Peru)、Manuel Escobar-Farfán(Department of Administration, Faculty of Administration and Economics, University of Santiago of Chile, Santiago 9170020, Chile)、Iván Veas-González(Departamento de Administración, Facultad de Economía y Administración, Universidad Católica del Norte, Antofagasta 1270709, Chile)、Manuel Amasifuen-Reategui(Unidad de Ciencias Empresariales, Escuela de Posgrado, Universidad Peruana Unión, Lima 15102, Peru)、Esther Olivia Acosta-Miraval(Universidad Tecnológica Del Perú, Lima 15487, Peru)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dany Yudet Millones-Liza, Elizabeth Emperatriz García-Salirrosas, Manuel Escobar-Farfán, et al. Consumer Behavior Toward Andean Grains Among Young Peruvian Adults: Purchase Patterns, Motivations, and Barriers Across Cultural Contexts. Foods 2026-09-20. DOI: 10.3390/foods15183341. 原著ライセンス:CC BY.