著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:British Journal Of Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

糖尿病は世界的に重要な慢性疾患で、食事は血糖の調節に深く関わると考えられています。ただし、個々の栄養素や食品だけを見る従来の方法では、食事全体の良し悪しを捉えにくいという課題がありました。そこで近年は、食事全体の質を点数化する「食事の質指標」が使われるようになっています。

研究チームは、アジアの人々を対象に食事の質と糖尿病の関係を調べた研究がまだ少なく、結果も一致していない点に着目しました。また、食事が糖尿病と関わる仕組みもはっきりしていません。そこで著者らは、食事の質と血糖の状態との関連を調べるとともに、体内の慢性的な炎症を示す指標がその関連の一部を説明するかどうかを検討しました。

何をどのように調べたか

対象は、中国福建省福清市で行われている「福清コホート研究」に参加した35〜75歳の住民21,476人です。2020年7月から2022年12月に集めた参加開始時のデータを使い、ある一時点の状態を比べる横断研究として分析しました。

食事は、過去1年間の食習慣を93項目で尋ねる食物摂取頻度質問票で調べました。その結果をもとに、国際的によく使われる健康的食事指数(HEI)と食事の質指数(DQI)、中国の食事指針に基づく食事バランス指数(DBI)の3つで食事の質を評価しました。HEIとDQIは点数が高いほど、DBIは点数が低いほど食事の質が良いことを表します。DBIでは、不足の程度、摂り過ぎの程度、全体の偏りを別々の指標として算出しています。

血糖の状態は、空腹時血糖と、ブドウ糖を飲んだ後の血糖の変化をみる検査(経口ブドウ糖負荷試験)で判定しました。参加者は正常、前糖尿病、糖尿病の3群に分けられました。炎症の指標としては、白血球数や好中球・単球などの血球数、好中球とリンパ球の比、それらを組み合わせた全身性免疫炎症指数(SII)など、11種類を用いました。

分析では、年齢、性別、居住地、BMI、喫煙、飲酒、高血圧などの影響を考慮しました。さらに「媒介分析」という手法で、食事の質と糖尿病の関連のうち、どの程度が炎症指標を経由した関連として説明されうるかを推定しました。

主な結果

3つの指標はいずれも、食事の質が高いほど糖尿病である見込みが低いという関連を示しました。食事の質が最も低いグループと比べた最も高いグループのオッズ比は、HEIで0.863、DQIで0.719、DBI(全体の偏りの指標)で0.852でした。オッズ比は1を下回るほど、糖尿病である見込みが低いことを意味します。3指標のなかでは、DQIで最も強い関連がみられました。

炎症指標では、白血球数、好中球数、単球数、好中球とリンパ球の比、SIIなどが高いほど糖尿病である見込みが高いという関連がみられました。一方、よく知られた炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)と糖尿病との間には、有意な関連は認められませんでした。

媒介分析では、HEIと糖尿病の関連の一部が炎症指標を経由している可能性が示されました。指標を1つずつ調べた場合、媒介されたと推定される割合は、白血球数で10.67%、好中球数で11.32%でした。単球数、好中球とリンパ球の比、SIIでは3〜4%程度でした。複数の指標を同時に組み込んだモデルでは、媒介された割合は8.83%と推定されました。DQIとDBIについては、DBIの摂り過ぎの指標の一部を除き、炎症指標による媒介ははっきりしませんでした。

横断研究では、糖尿病と診断された人が食事を変えたために見かけの関連が生じる「逆の因果」のおそれがあります。そこで著者らは、もともと糖尿病の既往がある人を除き、今回新たに糖尿病と判定された人だけで分析し直しました。その結果でも、3つの指標と糖尿病との関連は保たれていました。

この研究が示すこと

この研究は、中国南東部の大規模な住民集団で、食事の質が高い人ほど糖尿病である見込みが低く、炎症指標も低い傾向にあることを報告しました。また、その関連の一部が体内の炎症を介している可能性を示しました。ただし、媒介されたと推定された割合は一部にとどまります。また、一時点のデータに基づく分析であるため、食事が糖尿病を防ぐという因果関係を直接示したものではありません。食事と糖尿病をつなぐ仕組みの手がかりの一つとして、炎症に目を向けた研究といえます。

原著論文の著者・所属:Fengqiong Liu(Fujian Medical University)、Ziqi Lin(Fujian Medical University)、Qiaofen Lin(Fujian Medical University)、Xiaoying Hu(Fujian Medical University)、Jiamin Gong(Fujian Medical University)、Qingling Su(Fujian Medical University)、Weihong Qiu(Fujian Medical University)、Shanshan Du(Fujian Medical University)、Weimin Ye(Fujian Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fengqiong Liu, Ziqi Lin, Qiaofen Lin, et al. Effects of dietary quality on type 2 diabetes risk and the mediating role of inflammatory markers. British Journal Of Nutrition 2026-10-15. DOI: 10.1017/s0007114526108605. 原著ライセンス:CC BY.