著者の所属・活動拠点の国は、ブルンジ、ロシア、ルワンダです。
掲載誌:European Scientific Journal ESJ
ライセンス: CC BY 4.0 確認元: 論文掲載ページ
輸出の主力でありながら、国内ではどう飲まれているのか
東アフリカのブルンジでは、茶は外貨を稼ぐ輸出品として2番目に大きな位置を占め、6万人を超える小規模茶農家の暮らしを支えています。標高の高い産地で育つブルンジ茶は、国際的なオークションで高く評価されています。一方で研究チームは、ブジュンブラの住民が自国の茶の具体的な健康効果をどの程度知っているかは、これまで体系的に数値として調べられてこなかったと指摘しています。
研究チームが注目したのは、茶に含まれる成分と健康の関係について知られていることと、実際の飲み方とのあいだにずれがあるのではないかという点です。茶にはポリフェノール(植物に含まれる抗酸化性の成分群)やカフェイン、L-テアニン(茶に特有のアミノ酸)などが含まれ、既存の研究では慢性疾患との関連が報告されてきました。著者らは、こうした可能性を生かせるかどうかは原料の質だけでなく、淹れ方や消費者の知識にも左右されると述べています。
この研究は、ブルンジの経済の中心地であるブジュンブラの茶の消費者を対象に、回答者の属性、家庭での淹れ方、そして茶の健康面についての知識・態度・行動を把握し、健康情報が十分に届いていない部分を明らかにすることを目的としています。なお、この論文は査読前のプレプリントとして公開されたものです。
300人への聞き取り調査
研究チームは2025年11月、ブジュンブラ市内の3つの地区(ンタハングワ、ムゲレ、ムカザ)で、茶を飲む18歳以上の成人300人を対象に調査を行いました。各地区の人口に応じて人数を割り振り、決められた起点から一定の間隔で世帯を選ぶ方法で回答者を選びました。質問票はスマートフォンなどのモバイル端末で記入する形式でした。
分析は、回答の割合を集計して属性ごとに比べる記述的なものです。著者らは、要因同士の関連を統計的に検定する分析は今回は行っておらず、別の研究で扱う予定だと明記しています。回答者は男性53%、女性47%で、35歳以下が3分の2を占める若い集団でした。中等教育以上を修了した人は71%にのぼりました。
健康のために飲む人は多いが、砂糖はほぼ必須
論文によると、回答者の54.4%が健康上の理由で茶を飲んでいると答えました。一方で、淹れ方を尋ねると、90%を超える人が精製された砂糖を加えていました。砂糖を入れずに飲む人は6.7%にとどまりました。牛乳を加える人は28.0%、茶葉を煮立てて淹れる人は約35.4%でした。レモングラスやショウガ、ハチミツなどを加える飲み方も見られました。
茶を飲む主な理由として最も多く挙がったのは、食習慣や社会的・文化的な習慣(30.6%)でした。次いで、漠然と「健康によい」という理由(16.6%)、消化を助けるという理由(13.0%)が続きました。具体的な効能を挙げた人は少なく、睡眠の質との関連を挙げた人は7.3%、血糖の調節を挙げた人は1.0%、がんの予防を挙げた人は0.3%でした。
茶に含まれる具体的な成分の名前を挙げられたのは、300人中わずか9人でした。97.0%は、ポリフェノールやカテキン、L-テアニンといった成分を一つも挙げられませんでした。学歴の高い回答者が多いにもかかわらずこの結果だったことから、著者らは、学校教育で身につけた知識が茶に関する実際的な健康知識には結びついていないと指摘しています。記述的な比較では、大学卒の回答者が初等教育の回答者より茶の効能をよく知っているという傾向も見られませんでした。
淹れ方と情報発信の課題
著者らは考察で、これまでの研究報告を引きながら、次のように論じています。大量の砂糖は血糖への負担となりうること、牛乳のたんぱく質は茶のポリフェノールと結びついてその働きを弱める可能性があること、長時間の煮出しはカテキンの分解を進める可能性があること。そのうえで、こうした家庭での淹れ方が、高品質なブルンジ茶に期待される健康面の可能性を損なっているおそれがあるとしています。ただし、今回の調査が測ったのは人々の飲み方と知識であり、成分量や健康への影響を直接測定したものではありません。
この研究が示しているのは、自国の名産である茶が日常的に飲まれ、多くの人が「健康のため」と考えていても、その中身や淹れ方についての具体的な理解はほとんど広まっていないという実態です。著者らは、この知識と実践のずれを、健康情報の伝え方における大きな空白として位置づけています。
著者:Alice Ndayirukiye(CRSNE-Research Center in Natural Sciences and Environment, Faculty of Sciences, Université du Burundi, Bujumbura, Burundi)、Menus Nkurunziza(CRMP-Research Center in Mathematics and Physics, Faculty of Science, Université du Burundi, Bujumbura, Burundi)、Emmanuel Singoye(CREDSR-Research and study Center on Development in Societies in Reconstruction, Faculty of Arts and Social Sciences, Université du Burundi, Bujumbura, Burundi)、Jérémie Ngezahayo(CRSNE-Research Center in Natural Sciences and Environment, Faculty of Sciences, Université du Burundi, Bujumbura, Burundi)、Pierre C. Mpawenayo(CRSNE-Research Center in Natural Sciences and Environment, Faculty of Sciences, Université du Burundi, Bujumbura, Burundi)、Diomede Ndayitwayeko(Doctoral school, Department of Public Health, Faculty of Medicine, Université du Burundi, Bujumbura, Burundi)、Ferdinand Ndikuryayo(CURPAS-University Centre for Research and Applied Pedagogy in Science, Institute of Applied Pedagogy, Burundi)、Anaclet Nsabimana(School of Science-College of Science and Technology Kigali, Department of Chemistry, Kigali, University of Rwanda, Butare, Rwanda)、Godefroid Gahungu(CRSNE-Research Center in Natural Sciences and Environment, Faculty of Sciences, Université du Burundi, Bujumbura, Burundi)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alice Ndayirukiye, Menus Nkurunziza, Emmanuel Singoye, et al. Between Health Ally and Export Commodity: An Analysis of Consumers’ Perceptions of Tea and Its Health Benefits in Bujumbura City. European Scientific Journal ESJ 2026-09-09. DOI: 10.19044/esipreprint.9.2026.p106. 原著ライセンス:CC BY.