この研究は、デンマーク、トルコ、イタリア、ドイツ、スウェーデンの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Clinical Kidney Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜこのテーマが取り上げられたのか
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが長期にわたって低下した状態を指します。論文によれば、このCKDにともなう骨の弱り(CKD関連骨粗鬆症)は、CKDの患者さん全体のおよそ25%にみられます。腎機能の低下が進むほど起こりやすくなり、高齢の透析患者さんでは有病率が最大75%に達すると著者らは述べています。
それにもかかわらず、この状態は診断されないまま見過ごされがちだと著者らは指摘します。背景にあるのは「CKDの患者さんには使える治療法がほとんどない」という思い込みで、著者らはこれが診断と治療の両面で「どうしようもない」という諦め(ニヒリズム)につながってしまうと説明しています。実際には、CKDの患者さんで薬による治療が骨密度に及ぼす効果の大きさは、ほかのタイプの骨粗鬆症と同程度か、それ以上だと著者らは記しています。
そのうえで著者らが注目したのが、薬以外の手段です。薬による治療に加えて、生活面の働きかけ(非薬物的介入)によって骨の強さと骨折のリスクを改善しうること、しかもそうした働きかけは末期腎不全でいくつか個別の配慮が必要になるものの、CKDの患者さんにも制限なく当てはめられる場合が多いことを、著者らは重視しています。
著者らが行ったことと、挙げられた10の工夫
この論文で著者らが行ったのは、既存の研究文献を見直し(レビューし)、CKDの患者さんの骨折リスクを変えうる薬以外の働きかけを10項目として整理することです。新たに患者さんを集めて測定や投薬を行った研究ではありません。
挙げられた10項目は、カルシウムとビタミンDを適切に摂ること、十分な栄養とたんぱく質を摂ること、喫煙と飲酒を避けること、服用中の薬を見直すこと、運動を強化すること、家庭内の危険(転びやすい箇所など)を減らすこと、起立性低血圧(立ち上がったときに血圧が下がり、ふらつく状態)を防ぐこと、神経の障害(ニューロパチー)に対応すること、転倒リスクを見きわめること、そして骨折リエゾンサービス(骨折した患者さんを見つけて骨粗鬆症の評価と治療につなげる仕組み)を導入することです。著者らは、これらすべてがCKD関連骨粗鬆症の患者さんにとって意味のある行動だとしています。
この整理が示していること
著者らが薬以外の働きかけをすべてのCKD関連骨粗鬆症の患者さんに提供すべきだと主張する根拠として挙げているのは、CKDでは、もろくなった骨の骨折(脆弱性骨折)につながる「変えられるリスク要因」が、より多くみられるという点です。変えられる余地が大きいからこそ、働きかける意義があるという見方です。
一般の人々の場合と同じように、骨粗鬆症と診断されたときに最初に検討すべき選択肢は薬以外の働きかけである、と著者らは位置づけています。この論文の狙いは、その考え方をCKDの患者さんに合わせてどう調整すればよいかを示すことにあります。腎機能の低下があるために治療を諦める理由はない、というメッセージが、10の工夫という形で具体化されたと言えます。
著者:Ditte Hansen(Copenhagen University Hospital - Herlev Department of Nephrology, , Copenhagen ,)、Hanne Skou Jørgensen(Aalborg University Department of Clinical Medicine, , Aalborg ,)、Mehmet Kanbay(Division of Nephrology, Koc University School of Medicine Department of Internal Medicine, , Istanbul ,)、Maria Fusaro(National Research Council (CNR), Institute of Clinical Physiology (IFC) , 56124 Pisa ,)、Louise Salomo(Copenhagen University Hospital - Herlev Department of Nephrology, , Copenhagen ,)、Susanne V. Fleig(RWTH Aachen University Hospital Department of Nephrology and Clinical Immunology, , Aachen ,)、Stig Mølsted(Copenhagen University Hospital – North Zealand Department of Physiotherapy and Occupational Therapy, ,)、Jesper Ryg(Geriatric Research Unit, Department of Clinical Research, University of Southern Denmark , Odense ,)、Mathias Loberg Haarhaus(Division of Renal Medicine, Department of Clinical Science, Intervention and Technology, Karolinska Institutet , Karolinska Universitetssjukhuset, Stockholm ,)、Pieter Evenepoel(Department of Microbiology , Immunology and Transplantation, Nephrology and Renal Transplantation Research Group, Katholieke Universiteit Leuven, Leuven ,)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ditte Hansen, Hanne Skou Jørgensen, Mehmet Kanbay, et al. Ten tips to reduce fracture risk by non-pharmacologic interventions in CKD-associated osteoporosis. Clinical Kidney Journal 2026-09-01. DOI: 10.1093/ckj/sfag303. 原著ライセンス:CC BY.