著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:BMC Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
この報告が取り上げた問題
検査を重ねても原因が分からない発熱は「不明熱」と呼ばれ、診断が難しい状態として知られています。感染症、膠原病などの自己免疫疾患、血液のがんを含む腫瘍が代表的な原因の候補ですが、それらを調べ尽くしても答えが出ないことがあります。
一方、ビタミンDは骨やカルシウムの調節だけでなく、免疫の働きにも関わることが知られています。研究チームは、ビタミンDの不足が繰り返す発熱に関わる可能性は十分に注目されていないと考えました。この論文は、発熱を繰り返していた1人の女性で、ビタミンDを補ったあと発熱が治まった経過を報告した症例報告です。
徹底した検査で何が調べられたか
患者は52歳の女性で、最高39.4℃の高熱を約1か月繰り返していました。寒気、頭痛、だるさ、脱毛、せきなどを伴い、意図しない5kgの体重減少もありました。血液検査では白血球の減少と貧血が見られました。体格指数(BMI)は標準の範囲でした。
最初に入院した地域の病院では、結核の検査は活動性の結核を支持せず、抗菌薬による治療でも症状は改善しませんでした。結核の抗体が陽性だったことなどから結核性髄膜炎も疑われ、神経疾患の専門施設に移って詳しい検査が行われました。脳と脊髄を包む液(脳脊髄液)と血液に含まれる微生物の遺伝子をまとめて調べる検査では、背景にある微生物が少量見つかっただけで、神経に入り込む病原体の証拠はありませんでした。
さらに、自己免疫疾患、血液の病気や腫瘍、甲状腺の病気、脳の異常による発熱についても調べられましたが、著者らはいずれも原因を示す明確な証拠は得られなかったと報告しています。発熱は夜間に高くなる傾向があり、腰椎穿刺などの検査の負担のあとに出やすかったと記録されています。
ビタミンDの欠乏と、その後の経過
食欲不振と体重減少をきっかけに栄養状態を評価したところ、血液中のビタミンDの指標である25-ヒドロキシビタミンDが8.7 nmol/Lと、重い欠乏状態にあることが分かりました。患者は砂嵐が多く紫外線が届きにくい地域に住み、外出もほとんどしていなかったことから、著者らは日光を浴びる機会の不足が原因と考えています。なお、症状が出る約1年前の検査でもすでに不足していましたが、その時点では補充は行われていませんでした。
飲み薬でビタミンDの補充を始めると発熱は治まり、約1週間後の退院前には値が23.9 nmol/Lに、退院5か月後には61.4 nmol/Lまで上がりました。発熱は退院前にも、その後約1年半の経過観察の間にも再発しなかったと報告されています。
著者らは、ビタミンDの不足が炎症を強める働きと抑える働きのバランスを崩し、ストレスなどをきっかけに過剰な免疫反応が起きて発熱につながった可能性を仮説として挙げています。一方で、白血球の少ない状態は退院後も続いており、遺伝子検査やPET-CTは行われていないなど、未解明の点も残っています。
この症例が示すこと
著者らは、ビタミンDの補充と発熱の消失が時間的に重なったことは因果関係を証明するものではなく、原因不明の病気が自然に治まった可能性も否定できないと明記しています。1例の報告は仮説を生み出す段階の証拠であり、確かめるには対照群をおいた研究が必要だとしています。
そのうえで研究チームは、原因の分からない発熱を診る際に、感染症や腫瘍などの検査と並んで、ビタミンDを含む栄養状態の評価を補完的な手順として加えることを提案しています。日光を浴びにくい環境や生活習慣も、見落とされやすい手がかりになりうることをこの症例は示しています。
著者:Yiming Cai(Department of Geriatrics, The Third Affiliated Hospital, Sun Yat-Sen University, Guangzhou, 510000, China)、Yingna Chen(Department of Geriatrics, The Third Affiliated Hospital, Sun Yat-Sen University, Guangzhou, 510000, China)、Xiaodong Cai(Department of Neurology, The Sixth Affiliated Hospital, Sun Yat-Sen University, Guangzhou, 510000, China)、Ling Long(Department of Geriatrics, The Third Affiliated Hospital, Sun Yat-Sen University, Guangzhou, 510000, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yiming Cai, Yingna Chen, Xiaodong Cai, et al. A 52-year-old woman with recurrent fever of unknown origin: a case report. BMC Nutrition 2026-10-15. DOI: 10.1186/s40795-026-01519-6. 原著ライセンス:CC BY.