著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:医師の目から見た「乳製品離れ」の要因
乳製品は、良質なたんぱく質やカルシウム、ビタミンなどを含む食品として食生活で重要な位置を占めてきました。一方で論文によると、多くの先進国では飲用牛乳の消費が減っており、健康や環境、動物福祉への関心の高まりや、植物性の代替飲料への関心の広がりが、乳製品を控える理由になり得ると指摘されています。
研究チームが注目したのは医師の視点です。医師は食事と健康の関係について専門知識を持ち、患者と直接接する中で、食事に関する疑問や不安を日々耳にしています。また、健康情報の発信者として信頼されやすい立場にもあります。そこで著者らは、乳製品の消費を妨げている要因、消費者の考え方に影響する情報源、そして消費を増やすために役立ちそうな情報発信や教育の取り組みについて、医師がどう評価しているかを明らかにすることを目的としました。
著者らは、これまで別々に調べられることの多かった「消費の障壁」「情報源の重要性」「教育・広報活動の有効性」の三つを、医師という専門家の立場からまとめて評価した点に、この研究の新しさがあると述べています。
調べたこと:ポーランドの医師201人への聞き取り調査
調査は2024年9月から2025年4月にかけてポーランド全土で行われ、患者と直接接している現役医師201人が回答しました。回答者は、地域ごとの人口に比例して人数を割り当てる方法で集められ、年齢や性別の構成も国内の医師全体に近づくよう調整されています。専門分野は23に及び、家庭医療、内科、小児科が多くを占めました。聞き取りは、調査員がコンピューターを使って対面で質問する形式で行われました。
医師たちは、乳製品の消費に悪影響を与えると考えられる八つの要因、消費者の意見や態度に影響する情報源、そして消費拡大につながりそうな取り組みについて、それぞれ5段階で評価しました。研究チームは評価の平均値などをもとに重要度の順位を付けたほか、「主成分分析」と呼ばれる手法を使って、互いに似た傾向を示す障壁をいくつかのまとまりに整理しました。
主な結果:習慣と知識の不足が最大の壁
回答した医師たちが最も重要な障壁と考えたのは、適切な食習慣が身についていないことと、乳製品が健康にもたらす利点についての知識が不足していることでした。これに続いて、食品の偽装・混ぜ物への懸念や、一部の消費者層(たとえば食物アレルギーのある人など)にとって健康上のリスクがあり得るという情報が挙げられました。
主成分分析の結果、医師たちの評価した障壁は三つのグループに整理されました。一つ目は教育や文化に関わる障壁、二つ目は倫理や環境に関わる障壁、三つ目は実用面や健康面に関わる障壁です。
情報源については、医師自身や、家族・友人からの勧めが、乳製品に関する重要な情報源だと評価されました。また医師たちは、テレビなどの従来型メディアよりも、デジタルの情報発信の方が消費者の態度や行動により大きな影響を持つと見ていました。
消費者の関心を高める取り組みとしては、専門家が支持するメッセージの発信、子どもと保護者に向けた啓発キャンペーン、乳製品の利点に関する科学機関の推奨の周知、品質認証ラベルについての消費者教育などが挙げられました。
研究が示すこと
この研究は、乳製品の消費が伸び悩む背景として、価格や代替品だけでなく、食習慣や知識の不足といった教育・文化的な要因が医師の目には大きく映っていることを示しました。あわせて、医師や身近な人の言葉、デジタルの情報発信が、消費者の受け止め方を左右し得る経路として評価されていることも明らかになりました。
ただし著者らが強調しているように、この結果は医師の専門的な意見や評価を示したものであり、消費者の行動や態度を直接測ったものではありません。研究チームは、得られた知見を消費者全体に一般化するのではなく、あくまで専門家の視点として受け止めるべきだとしています。
原著論文の著者・所属:Agnieszka Komor(Department of Management and Marketing, Faculty of Agrobioengineering, University of Life Sciences in Lublin, Akademicka 13, 20-950 Lublin, Poland)、Aneta Jarosz-Angowska(Department of Economics and Agribusiness, Faculty of Agrobioengineering, University of Life Sciences in Lublin, Akademicka 13, 20-950 Lublin, Poland)、Anna Goliszek(Department of Management and Marketing, Faculty of Agrobioengineering, University of Life Sciences in Lublin, Akademicka 13, 20-950 Lublin, Poland)、Anna Nowak(Department of Economics and Agribusiness, Faculty of Agrobioengineering, University of Life Sciences in Lublin, Akademicka 13, 20-950 Lublin, Poland)、Artur Krukowski(Department of Economics and Agribusiness, Faculty of Agrobioengineering, University of Life Sciences in Lublin, Akademicka 13, 20-950 Lublin, Poland)、Sebastian Białoskurski(Department of Management and Marketing, Faculty of Agrobioengineering, University of Life Sciences in Lublin, Akademicka 13, 20-950 Lublin, Poland)、Bartosz G. Sołowiej(Department of Dairy Technology and Functional Foods, Faculty of Food Sciences and Biotechnology, University of Life Sciences in Lublin, Akademicka 13, 20-950 Lublin, Poland)、Katarzyna E. Przybyłowicz(Department of Human Nutrition, Faculty of Food Sciences, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, Słoneczna 45f, 10-718 Olsztyn, Poland)、Katarzyna Staniewska(Department of Commodity Science and Food Analysis, Faculty of Food Science, University of Warmia and Mazury, Pl. Cieszyński 1, 10-726 Olsztyn, Poland)、Aneta Dąbrowska(Department of Dairy Science and Quality Management, Faculty of Food Science, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, Oczapowskiego 7/8, 10-719 Olsztyn, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Agnieszka Komor, Aneta Jarosz-Angowska, Anna Goliszek, et al. Barriers to Dairy Product Consumption: The Role of Information and Promotional Activities from the Perspective of Polish Physicians. Foods 2026-09-22. DOI: 10.3390/foods15193374. 原著ライセンス:CC BY.