この研究は、ポーランド、アメリカ、イギリス、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Biomedicines

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

「ケトジェニックダイエット(ケトン食)」といえば、糖質を極端に減らし脂質を多くとる食事法として、ダイエットやてんかん治療の文脈で耳にしたことがある方も多いかもしれません。実際、ケトジェニックダイエットは100年以上前からてんかん治療に用いられてきた歴史ある食事療法です。近年では、この食事法がてんかん以外のさまざまな病気にも良い影響を与える可能性があるとして注目されており、その一つが高血圧です。今回紹介するのは、医学誌「バイオメディシンズ」に掲載予定の、ケトジェニックダイエットと高血圧の関係を文献レビューの形で整理した論文です。

高血圧は21世紀における公衆衛生上の大きな課題の一つとされ、近年その割合は世界的に高い水準に達していると指摘されています。予防や治療のための方法として、薬だけでなく食事など生活習慣の見直しが重要な選択肢として挙げられており、その一つとしてケトジェニックダイエットが検討されているというのが、この研究の背景です。

研究でわかったこと

この論文は、新たに人を対象とした実験を行ったものではなく、既存の研究や文献をもとに、ケトジェニックダイエットが血圧にどのように影響しうるのか、そのメカニズムを整理したレビュー論文です。文献の分析から、血圧の調節に関わりうる経路として、次の5つが挙げられています。

  • 体重の減少
  • 内臓脂肪の減少
  • インスリン感受性の改善
  • 水分・電解質バランスの改善
  • 抗炎症作用

これまでに行われたメタ解析やランダム化比較試験では、ケトジェニックダイエットによる食事介入が血圧の低下と関連していることが、一貫して示されているといいます。ただし、その効果の大きさは、ケトジェニックダイエットの具体的な方法や、対象となった人々の特徴、比較対象とした食事内容などによって、かなり異なるとも述べられています。

また、実践にあたっての注意点も紹介されています。すでに降圧薬による治療を受けている患者では、ケトジェニックダイエットの導入前に薬の量を適切に減らす必要が生じる可能性があるとされました。さらに、血圧を下げる効果を最大限に得るためには、カリウムやマグネシウムを十分に摂取すること、質の良い食品を選ぶこと、そして適切な水分補給を行うことが重要だと強調されています。

この研究を読むうえでの注意点

この論文は、既存の研究を集めて整理した文献レビューであり、著者らが新たに患者を対象とした試験を行ったものではありません。そのため、紹介されている「効果がありそう」という報告は、あくまで過去の複数の研究結果をまとめた傾向であり、個々の研究間でも効果の大きさには幅があると述べられています。論文自体も、収縮期・拡張期血圧への影響を主要な評価項目とし、食事の質的な構成の役割も考慮したさらなる研究が必要だと結論づけています。ケトジェニックダイエットは誰にでも当てはまる方法ではないとも述べられており、一つの研究・レビューとして結論が確定したものではない点に留意が必要です。

まとめ

今回紹介した論文は、ケトジェニックダイエットが体重減少やインスリン感受性の改善、抗炎症作用などを通じて血圧に影響しうる可能性を、既存の文献に基づいて整理したものです。血圧の低下との関連は複数の研究で報告されているものの、効果の大きさには幅があり、薬物治療中の方は医師と相談しながら進める必要があるといった注意点も示されています。今後、より質の高い研究によって、その効果や仕組みがさらに明らかになることが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):高血圧の予防と治療におけるケトジェニックダイエット(バイオメディシンズ・2026年07月)

著者:Łukasz Rodzeń(Polish Society for Insulin Resistance Treatment (PTLI), 54-105 Wrocław, Poland)、Damian Dyńka(Institute of Health Sciences, Faculty of Medical and Health Sciences, University of Siedlce, 08-110 Siedlce, Poland)、Mateusz Rodzeń(Polish Society for Insulin Resistance Treatment (PTLI), 54-105 Wrocław, Poland)、Hanna Karakuła‐Juchnowicz(I Department of Psychiatry, Psychotherapy and Early Intervention, Medical University of Lublin, 20-059 Lublin, Poland)、Dorota Łojko(Department of Psychiatry, Poznan University of Medical Science, 60-572 Poznan, Poland)、Sebastian Kraszewski(Department of Biomedical Engineering, Faculty of Fundamental Problems of Technology, Wroclaw University of Science and Technology, 50-370 Wroclaw, Poland)、Żaneta Grzywacz(Department of Health Biosystems and Food Quality, Faculty of Physical Education and Physiotherapy, Opole University of Technology, 76 Prószkowska Street, 45-758 Opole, Poland)、Benjamin Bikman(Department of Cell Biology and Physiology, Brigham Young University, 3052 LSB, Provo, UT 84602, USA)、Jen Unwin(The Collaborative Health Community Foundation, Oxford OX2 9HZ, UK)、David Unwin(Faculty of Health Social Care and Medicine, Edge Hill University, Ormskirk L39 4QP, UK)、Sergio Fazio(Department of Internal Medicine, School of Medicine, Federico II University, Via Sergio Pansini 5, 80131 Naples, Italy)