この研究は、オランダの研究機関の研究論文です。

掲載誌:PLoS ONE

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

動脈硬化などの血管の病気が原因で、足首より上の位置で脚を切断する手術(下肢大切断)を受けた人は、術後に亡くなる割合が高く、傷の治りにくさや身体機能・生活の質の低下も起こりやすいとされています。研究チームは、こうした経過に影響しうる要因として「低栄養」に着目しました。低栄養とは、栄養の摂取や吸収が足りないために筋肉などの体の組成が変化し、心身の機能や病気からの回復が損なわれた状態を指します。

著者らによると、これまでの研究では、この患者層で低栄養がどのくらいの割合で見られるかの報告が1%から100%まで大きくばらついていました。調べ方がまちまちだったことや、手術前後の時期に偏っていて術後の経過を追った研究が少ないことが理由とされています。そこで研究チームは、術後の複数の時点で食事の摂取量と低栄養の割合を調べ、低栄養と関係する要因を明らかにすることを目指しました。

何をどのように調べたか

研究チームは、2023年にオランダ北部の6つの病院で募集した、血管の病気による下肢大切断を受けた成人81人を対象に、術後数日、約5週間、約6か月、約9か月の4回にわたって調査を行いました。参加者の平均年齢は約70歳で、73%が男性でした。

食事については、前日の24時間に食べたものを面接で詳しく聞き取り、エネルギーとたんぱく質の摂取量、さらにオランダの食事指針にどれだけ沿っているかを示す食事の質の指標を算出しました。栄養状態は、体重減少、食事量の変化、食欲不振や吐き気などの「食べることに影響する症状」、日常の活動状況、身体の診察などを組み合わせて評価する標準的な方法で判定しました。あわせて握力や腕の周囲長から推定した筋肉量なども測定し、暮らしている場所や身体活動の量などと低栄養との関係を分析しました。

主な結果

低栄養(中等度・疑いを含む)と判定された人の割合は、術後数日の時点で83%、約5週間で56%と非常に高く、その後は減っていったものの、約6か月で28%、約9か月で24%と、長期的にもおよそ4人に1人の水準にとどまりました。全体としては改善傾向でしたが、測定の間隔ごとに1割強の人では栄養状態が悪化していました。術後数日の時点では、40%の人が直近1か月で体重の5%以上を失っていました。

食事の面では、1日のエネルギー摂取量の中央値は時点によって体重1キログラムあたり21.4〜26.3キロカロリー、たんぱく質は0.9〜1.2グラムで、研究チームが基準とした国際的な指針の目安(術後早期はそれぞれ30キロカロリー・1.5グラム以上、その後は25キロカロリー・1.2グラム以上)に届かない人が多いことが示されました。食事の質の指標も一般のオランダ人よりやや低く、特に豆類、ナッツ、魚の項目で点数が低くなっていました。また、食欲がない、吐き気、すぐ満腹になる、味がおかしいといった症状を持つ人の割合は、術後数日の72%から約9か月の25%まで、どの時点でも一定数見られました。

低栄養と関係していた要因としては、介護施設などで暮らしていることと、身体活動の少なさが挙げられました。介護施設などで暮らしている人では、低栄養のなりやすさを表す指標であるオッズが約6.2倍と高くなっていました。なお、これらは関連を示したもので、原因と結果の関係を証明したものではありません。女性であることや持病の重さも低栄養と関係する傾向が見られましたが、統計的に意味のある差には至りませんでした。

この研究が示すこと

この研究は、血管の病気で脚を大切断した人では、手術直後に低栄養が非常に多く、時間がたっても少なからぬ人に続いていることを、同じ人たちを追跡して示しました。著者らはこの結果から、特定の要因の有無にかかわらず、すべての患者で栄養状態の評価と食事面の支援、定期的な見守りが必要であり、栄養状態を改善するための早めの対応が強く求められると結論づけています。

著者:Aniek M. Kolen(University of Groningen, University Medical Center Groningen)、Leonie Adriana Krops(University of Groningen, University Medical Center Groningen)、Harriët Jager-Wittenaar(Dietetics, Radboud University Medical Center)、Martijn Dijkstra(University Medical Center Groningen, University of Groningen)、B.Paul J.A. Keller(Martini Hospital)、Jacques Oskam(Isala Hospital)、Bastiaan P. Vierhout(Treant Hospital)、Jean-Paul P. M. de Vries(University Medical Center Groningen, University of Groningen)、Laurens van Walraven(Medical Center Leeuwarden)、Wim P. Krijnen(Hanze University of Applied Sciences)、Rienk Dekker(University of Groningen, University Medical Center Groningen)、Jan H. B. Geertzen(University of Groningen, University Medical Center Groningen)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aniek M. Kolen, Leonie Adriana Krops, Harriët Jager-Wittenaar, et al. Undernutrition is alarmingly prevalent in the dysvascular major lower limb amputation population: A prospective cohort study. PLoS ONE 2026-09-28. DOI: 10.1371/journal.pone.0342726. 原著ライセンス:CC BY.