著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Genetics and Molecular Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
この論文が取り上げた課題
トマト、ナス、トウガラシ、ジャガイモといったナス科の作物は、世界の食料安全保障に欠かせない作物です。著者らは抄録で、こうした作物の品種改良(育種)について、従来の方法には時間と労力がかかり、利用できる遺伝的な多様性が限られるという制約があると述べています。
この論文は、その制約を乗り越える手段として、植物の組織や細胞を容器内で育てる「in vitro(試験管内)育種」と、DNAの目印を使って個体を選ぶ「マーカー利用育種」の進展を整理した総説です。以下は抄録に記載された内容に基づく紹介です。
試験管内で行う育種技術
論文が紹介する試験管内の技術の一つは「胚救出」です。種の異なる植物を交配すると、できた胚が育たずに途中で止まることがあります。胚救出では、その胚を取り出して培養し、植物体に育てます。著者らは、これが異なる種どうしの交雑を助けると説明しています。
葯(やく)や小胞子(花粉のもとになる細胞)を培養する技術は、遺伝的に純粋な系統(ホモ接合の植物)を早く作るために使われます。細胞壁を取り除いた細胞(プロトプラスト)どうしを融合させる技術は、通常は交配できない種の遺伝物質を組み合わせることを可能にします。試験管内で突然変異を誘発する技術は、新たな遺伝的変異を生み出します。
著者らは、これらの技術によって、作物の野生近縁種を、特に病気への抵抗性などの望ましい性質の供給源として活用できるとしています。具体例として抄録では、胚救出による栽培トマトと病害抵抗性遺伝子を持つ野生近縁種との雑種作出、葯培養によるナスでの倍加半数体系統(短期間で得られる純粋な系統)の迅速な開発、プロトプラスト融合による野生種から栽培ナスへの病害抵抗性の導入、試験管内での突然変異誘発によるトマトでの乾燥耐性の誘導が挙げられています。
DNAマーカーを使った選抜
マーカー利用育種では、特定の性質と連動して受け継がれるDNA上の目印(DNAマーカー)を使って、目的の性質を持つ個体を選びます。著者らは、この方法では栽培環境の影響を受けずに精密な選抜ができると説明しています。さらに、ゲノム研究の進展、特にDNA配列の1文字単位の違いである一塩基多型(SNP)の活用によって、マーカー選抜が強化されたと述べています。その対象として、病害虫などの生物的ストレスや乾燥などの非生物的ストレスへの抵抗性、収量性、栄養品質の改良が挙げられています。
抄録に示された例は、トマトでの病害抵抗性遺伝子の選抜や、ジャガイモの疫病に対する複数の抵抗性遺伝子を一つの品種に集積する取り組みです。また、栽培品種と交配を繰り返しながらマーカーで選抜する「マーカー利用戻し交配」は、栽培品種の遺伝的な特徴を保ったまま特定の遺伝子を効率よく導入できる方法として紹介されています。
ゲノム全体に分布する多数のマーカーを用いて、個体が育種にどれだけ役立つかを予測する「ゲノム選抜」も取り上げられています。著者らは、トマトの果実品質やジャガイモのイモの収量のように、多くの遺伝子が関わる複雑な性質を対象に、この方法が遺伝的改良の進み具合を高めるとしています。
総説が示す意味
著者らは、試験管内の技術とマーカー利用育種を組み合わせることで相乗的な効果が示されてきたとまとめています。そのうえで、こうした統合的な手法が、環境ストレスに強く栄養価の高いナス科作物の品種開発を加速させると結論づけています。
この総説は、野生近縁種の有用な性質を取り込む技術と、それを正確に見分けて選ぶ技術を組み合わせることが、ナス科野菜の品種改良を進めるうえでの重要な方向性であることを示しています。
原著論文の著者・所属:Malathi D、Pallavi T M、Virupakshi Khanapuri(Associate Professor and Head, Department of Plant Breeding and Genetics , MIT College of Agriculture and Technology , Musiri , Trichy , Tamil Nadu , India -621 211 ; Ph.D Research Scholar , Division of Vegetable Science , University of Agricultural Sciences , Dharwad)、Suresh S、Ronak Meena(Ph.D. Research Scholar , Department of Horticulture , North Eastern Hill University , Shillong , Meghalaya)、Vignesh Manoharan(Ph.D. Research Scholar , Department of Vegetable Science , Horticultural College and Research Institute , Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , Tamil Nadu , India,)、Vijaya Priya Panneerselvam(Teaching Assistant,)、Aishwarya Palanisamy(7/ , ICAR-CICR-KVK , Nagpur , Maharashtra; Teaching assistant,)、Deepa Lal(Subject Matter Specialist (Horticulture) , T-; Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , Tamil Nadu , India)、J. Dharani
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Malathi D, Pallavi T M, Virupakshi Khanapuri, Suresh S, Ronak Meena, Vignesh Manoharan, Vijaya Priya Panneerselvam, Aishwarya Palanisamy, Deepa Lal, J. Dharani BIOTECHNOLOGY-DRIVEN BREEDING OF SOLANACEOUS VEGETABLE CROPS: ADVANCES IN IN VITRO CULTURE AND MARKER-ASSISTED SELECTION. Genetics and Molecular Research 2026-08-15. DOI: 10.4238/ws93es46. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。