著者の所属・活動拠点の国は、オーストリアです。
掲載誌:Toxics
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
個別評価だけでは見えない「組み合わせ」のリスク
食品添加物は、保存性を高めたり、甘みや色、食感を整えたりする目的で使われています。欧州連合(EU)では300種類以上が認可されており、私たちは日々の食事で複数の添加物を同時に口にしています。どの添加物をどれだけ摂るかは、食べる物の傾向や、特定の商品を買い続けるかどうかによっても変わります。
一方で、添加物の安全性は現在も物質ごとに個別に評価されています。研究チームは、現在入手できる毒性データ、食品中の含有量データ、食品摂取量データを使い、複数の添加物を合わせて摂った場合の累積的な健康リスクを調べました。あわせて、この評価手法が現実的な添加物の組み合わせを見つけ出すのに役立つかどうかも検討しています。
対象となる添加物と評価の進め方
研究チームはまず、EUで認可された添加物の情報を整理し、欧州食品安全機関(EFSA)の評価で推定摂取量がいずれかの年齢層で許容一日摂取量(ADI)の50%を超えるものを優先度の高い添加物としました。ADIとは、生涯にわたって毎日摂取しても健康への悪影響がないと考えられる量のことです。ここから、オーストリアの人々の食習慣に照らして関係の深い42種類(または添加物グループ)を選びました。
次に、肝臓、腎臓、消化管、発生(胎児や子の発育)、生殖、血液といった共通の標的器官ごとに添加物をグループ分けしました。同じ器官に影響を及ぼしうる添加物の摂取量を合算して評価するためです。食品中の実測データがそろっていたのは18種類で、内訳は着色料9種類、保存料5種類、甘味料3種類、うま味調味料1種類でした。
摂取量は、2日分の食事記録がそろったオーストリアの成人(18〜64歳)2169人の食事データと、オーストリアおよびEFSA経由で得た各国の分析データを組み合わせて推定しました。測定できる下限(定量限界)を下回った値は、ゼロとみなす場合、定量限界の半分とみなす場合、定量限界と同じとみなす場合の3通りで計算しています。
リスクの指標には「修正参照点指数(mRPI)」を用いました。物質ごとに、推定摂取量を毒性試験から得られた基準となる量(参照点)で割り、不確かさを考慮した係数を掛けた値を求めます。これを同じ器官グループの添加物について合計したものがmRPIで、1を超えると健康上の懸念の可能性があると判断されます。
腎臓と発生への影響で懸念が残る結果
肝臓、消化管、血液に関するグループでは、平均的な摂取量でも摂取量の多い人(上位5%の水準)でもmRPIは1を下回り、著者らはこれらの組み合わせによる健康リスクは考えにくいと報告しています。
一方、腎臓のグループでは当初のmRPIが1.8〜10.8、生殖では平均的な摂取量で1.6、多く摂る人で9.7、発生では13.6〜56と、いずれも1を上回りました。主にこれらの値を押し上げていたのは、甘味料のステビオール配糖体(ステビア)と、うま味調味料のグルタミン酸・グルタミン酸塩でした。
ただし、研究チームがデータを見直したところ、一部の試料に極端に高い濃度が含まれていました。ステビアでは、抽出液ではなく茶葉そのものを測ったと考えられる茶の試料4点がありました。グルタミン酸では、添加物としての使用ではなく食品にもともと含まれるアミノ酸を反映していると考えられる試料が多数ありました。これらを除いて再計算すると、生殖のmRPIは0.14〜0.73に下がり、1を下回りました。腎臓は0.3〜1.6、発生は0.9〜3.1となり、この2つでは見直し後も1を超える場合が残り、健康への潜在的な懸念は否定できないと報告されています。なお著者らは、定量限界未満のデータが多いことから、ゼロとみなす計算での平均値が最も現実に近いと考えられるとしています。
市場調査のデータベースを使った確認では、18種類すべてを含む製品はオーストリア市場に存在しませんでした。一方で、リン酸塩と亜硝酸塩、グルタミン酸塩とリン酸塩など、2〜3種類の添加物を同時に含む製品は多数見つかっています。
この研究が示すこと
この研究は、もともと食品中の汚染物質の混合評価のために開発されたmRPIが、食品添加物の組み合わせについても、注意を向けるべき添加物を洗い出し、優先順位を付けるための手法として使えることを示しました。
同時に、極端な測定値を見直すだけで結果が大きく変わったことは、評価の土台となるデータの質が重要であることを物語っています。著者らは、食品中の添加物の含有量や、どの添加物が一緒に摂られているかに関するデータを充実させる必要があると指摘しています。
原著論文の著者・所属:Veronika Karnel(Department Risk Assessment, Austrian Agency for Health and Food Safety, Spargelfeldstraße 191, 1220 Vienna, Austria)、Ulrike Mayerhofer(Department Risk Assessment, Austrian Agency for Health and Food Safety, Spargelfeldstraße 191, 1220 Vienna, Austria)、Antonia Griesbacher(Department Statistic, Austrian Agency for Health and Food Safety, Zinzendorfgasse 27/1, 8010 Graz, Austria)、Michael Tscherner(Department Data Management, Austrian Agency for Health and Food Safety, Spargelfeldstraße 191, 1220 Vienna, Austria)、Johann Steinwider(Department Risk Assessment, Austrian Agency for Health and Food Safety, Spargelfeldstraße 191, 1220 Vienna, Austria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Veronika Karnel, Ulrike Mayerhofer, Antonia Griesbacher, et al. Identification of a Potential Food Additive Mixture and Health Risk Assessment Using the Modified Reference Point Index (mRPI). Toxics 2026-10-20. DOI: 10.3390/toxics14100929. 原著ライセンス:CC BY.