ザクロの種に含まれる油には、プニカ酸という珍しい脂肪酸をはじめ、体に良いとされる脂溶性の成分が豊富に含まれていることが知られています。健康志向の高まりとともに注目される食品油ですが、実は「どうやって油を搾り出すか」という抽出方法によって、できあがる油の質が大きく変わることをご存知でしょうか。今回、サイエンティフィック・リポーツ誌に掲載予定の研究では、この抽出方法の違いに焦点を当て、油の品質だけでなく、抽出プロセスが環境にどれだけ負荷をかけるかという「グリーン性」まで含めて総合的に評価が行われました。

5つの抽出法を比較

研究チームは、2種類のザクロの品種を対象に、5種類の抽出技術を適用しました。具体的には、低温圧搾(CP)、ソックスレー抽出(SOX)、超音波支援抽出(UAE)、マイクロ波支援抽出(MAE)、そして超臨界CO2抽出(SCO2)です。これらの手法によって、油の収穫効率や生理活性成分の取り出され方がどう変わるのかが調べられました。

研究でわかったこと

まず油の収量については、SOXとSCO2が最も高い値を示したとされています。ただし、この2つの手法は油の酸化しにくさ(酸化安定性)や環境負荷の面では対照的な結果になったと報告されています。これは、加熱による影響や溶媒の選び方の違いを反映しているとみられます。

特にSCO2抽出は、高い収量に加えて、環境負荷を示す指標(E-factorやPMIといった数値が低く、PMEが高いこと)も良好で、さらにできあがった油の酸化レベルが最も低く、酸化安定性も最も高かったと報告されています。一方、CP(低温圧搾)で得られた油はポリフェノール含有量が高い反面、油の収量自体は限られていたとのことです。またSOXは収量こそ高いものの、酸化が進みやすい傾向が見られたとされています。

脂肪酸組成全体としては大きな違いはなかったものの、抽出方法によってプニカ酸の相対的な量や、脂肪酸がトリアシルグリセロール(油の主成分となる分子)のどの位置に結合するかという構造には、明確な違いが生じたことが示されています。これは、抽出プロセスが特定の脂肪酸や構造を選択的に取り出しやすくすることを示唆しているとされます。同様に、ポリフェノールやカロテノイドといった成分の回収のされ方も抽出条件によって大きく左右され、成分ごとに異なる挙動を示したと報告されています。この結果は、総ポリフェノール量だけを指標にして油の生理活性的な質を判断することの限界を示すものだと述べられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究が示しているのは、抽出効率・製品としての質・環境への配慮という3つの要素の間には、あちらを立てればこちらが立たずという「トレードオフ」の関係がある、という点です。論文では、高い安定性や生理活性成分の保持を重視する用途にはSCO2が最もバランスの取れた選択肢である一方、収量そのものや環境負荷の最小化を優先する場合には、別の手法が選ばれる可能性もあると述べられています。

本研究は特定の抽出条件・品種のもとで得られた結果であり、一つの研究として位置づけられるものです。ここで示された傾向がすべてのザクロ品種や生産条件に当てはまるとは限らない点には留意が必要です。

まとめ

今回の研究では、ザクロ種子油の抽出方法が、油の酸化安定性や生理活性成分の中身、さらには製造プロセスの環境負荷にまで影響を及ぼすことが示されました。超臨界CO2抽出は収量・品質・グリーン性のバランスに優れた手法として位置づけられていますが、目的に応じて適した抽出法は異なるとされています。今後、産業的な油の製造や持続可能な加工方法を考えるうえで、こうした知見が抽出戦略の設計に役立つ可能性があると考えられます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:抽出法依存的なザクロ種子油の脂質構造・酸化安定性・生理活性成分の変化:プロセスのグリーン性と製品品質の統合評価(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)