日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Talanta
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:現場分析での「試料の取り方」の課題
紙などに細い流路を作り、液体試料をしみ込ませて反応させる小型の分析デバイスは、検査室の外でも手軽に分析できる道具として期待されています。一方で、結果を数値で正確に示す定量分析はまだ難しいとされています。デバイスに試料をどう取り込むかが、分析の性能に大きく影響するためです。
論文によると、これまでの試料の取り込み方には、決まった量を正確に量り取る必要があるものや、操作する人の扱い方で結果が左右されるものが多くありました。研究チームは、こうした方法では「操作の簡単さ」と「定量結果の信頼性」を両立させにくい点を課題として挙げています。そこで、デバイスを試料に浸すだけで定量分析を行うという考え方を提案しました。
デバイスの仕組み:試料を吸い上げる流路と、試薬を閉じ込めたゲル
研究チームが作製したのは、ハイドロゲルを組み込んだガラス繊維製の微小流路分析デバイスです。ハイドロゲルとは、水を多く含んだゼリー状の材料のことです。このデバイスでは、試料を取り込む役目をガラス繊維の流路が担います。反応と検出の役目は、試薬を内部に閉じ込めたハイドロゲルが担います。
この2つの部品は、液晶ディスプレイ方式の3Dプリンターで作った撥水性(水をはじく性質)のパターンを利用してつなぎ合わせています。著者らは、このパターンが持つ自己接着性を生かすことで、ハイドロゲルとガラス繊維の流路を一体化できたと報告しています。
主な結果:グルコースの測定と血清試料への応用
研究チームは、この浸すだけの定量分析が実際に機能するかを確かめるため、グルコース(ブドウ糖)の比色分析をモデルとして用いました。比色分析とは、反応による色の変化から物質の量を調べる方法です。今回は、グルコースオキシダーゼとペルオキシダーゼという2種類の酵素による反応を利用しました。論文の題名によれば、この分析ではスマートフォンを補助的に用いています。
論文によると、グルコースの検出下限は68マイクロモーラー(μM)と見積もられました。検出下限とは、測定のばらつきを踏まえて「含まれている」と判断できる最小の濃度の目安です。
さらに研究チームは、この方法をヒト血清の管理用試料と、複数人分を混ぜ合わせたヒト血清に含まれるグルコースの定量にも適用しました。著者らはこの結果について、実際の試料の分析にも応用できる可能性を示したものと位置づけています。
研究が示すこと
著者らは、この浸すだけの分析方法について、使いやすさと信頼できる定量性能を両立させた分析手法だと述べています。また、医療、環境監視、食品安全など幅広い分野で、現場での定量分析の発展に貢献するものとしています。
この研究は、試料の取り込み方を工夫することで、簡単な操作と定量性という相反しがちな2つの要素の両立を目指したものです。グルコース測定をモデルにして、その考え方を具体的に示しています。
著者:Hayate Kitazume(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)、高広 石川(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)、Konoka Nakamura(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)、Akira Seyama(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)、Yukiko Moriiwa(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)、Atsushi Shoji(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)、Akio Yanagida(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)、Kazuhiro Morioka(School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 1432-1 Horinouchi, Hachioji, Tokyo 192-0392, Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hayate Kitazume, 高広 石川, Konoka Nakamura, et al. Development of an immersion-type hydrogel-integrated microfluidic glass fiber-based analytical device and its application to smartphone-assisted glucose colorimetric assay. Talanta 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.talanta.2026.130742. 原著ライセンス:CC BY.